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異世界、初夜

 「オレか?俺の名はセン。極楽センだ。よろしくな。」


「セン=ゴクラク?珍しい名前ね。まぁ、いいわ。よろしくね、セン。」

「ところでセン、貴方はなんでこんなところにいたのかしら?何か目的があったのかしら?」


「ん、目的?いや、気がついたらあそこに。目的も何も全く。」


「まぁ、いいわ。それじゃ、これから向かう先とかはあるのかしら?」


「いや、何の用もなければこれからの生活すりゃどうすればいいかもわからない根無し草だ。ははは、こりゃなんの自慢にもならんわな。」


「そう、なるほどね。それなら早速だけど提案させて貰うわ。私はこれからネオカブキに向かおうと思っているのだけど道中のボディーガードを依頼するわ。報酬はそうね、道中の食事と無事に到着出来たらお金はを払うわ。どうかしら?」


「いいぞ。」


「二つ返事で引き受けていいの?もうちょっとは考えなさいよ!」


「いや、オレこの世界のこと何もわからんし、やる事もないからな。それに別嬪なパツキンのちゃんねー守って美味しもん食えるなら掛け値無しで請け負うだろ、そりゃ。」


「なんなの冗談よ、それ。」

リンが吹き出し笑う。

「貴方、背中に龍の紋が入っているのに日々の暮らしの心配なんて。ほんとセンスなくて笑えないわよ。」


「思いっきり笑ってるじゃねぇか!!」

「それに龍の刺青なんて珍しいもんじゃねぇだろ?」


「アンタ、バカァ?龍紋持ちなんてそれだけで引くて数多じゃない!まさか、貴方無所属なんて言わないでしょうね?」


「所属?んー、まあ今は無所属っちゃ無所属だな。」

親っさんの顔が浮かんだがオレはあの人に売られたんだ。もう通す義理もなくなってしまった。今更になって喪失感と疑問が湧き上がる。


「ほほほほほ、ほんとなの?」

「龍紋持ちなんて世界に数人も居ないはずなのに切る(ギルド)なんて馬鹿じゃないの?それとも自分から出た?どちらにせよ、話題になっていもおかしく無いはずなのにそんな噂すら聞いた事ない。どういう事なのかしら。」

リンは驚いた後、ぶつぶつと呟く。


それから暫く静寂が辺りを包む。


リンが話しかけてくる。

「明日も早いわ。そろそろ休息を取りたいのだけど、お互い寝るってのは流石に無防備よね。交代で見張りをしながら寝ましょうか。」

「ちなみにエルフ族は朝に強いから、まずは先に休んでもいいかしら?」

「ん、俺も不寝番には慣れているがそれで構わん。」

「寝てるからって変な気起こさないでよね?少しでも不審な動きしたらすぐわかるんだからね。」

「あいあい、わかりやしたよ。」

「分かってるなら結構よ。それじゃお休みなさい。」

「あい、お休みさん。」

程なくして、彼女は静かに寝息を立て始めた。


1人の時間が訪れ不意に物思いに耽る。

死んだと思ったら異世界に来ていて、ドラゴンだのエルフだの神だのなんだの漫画やゲームの世界みたいな所に来ちまったらしい。かといって、自分でも驚くほど前の世界に未練はないらしい。死んだらお終い、常にそんな死生観を持たなくてはいけない世界で生きていたから自分の死も親っさんの裏切りも受け入れる事が出来ていた。唯一の心残りは親っさんにあんな選択肢をさせる事しか出来なかった不甲斐なさくらいだ。この世界にもあの神にもいろいろ謎は多いがその辺は追々考えるとして、拾った二度目の生だ。この世界では精一杯に生きてどん底から成り上がってみよう。そう決意する頃には彼女が覚醒する時間になっていた。


「あら、しっかり約束は守っていたようね。貴方も疲れたでしょ?そろそろ交代の時間だし、休んでもいいわよ。」


リンは少し急かすように睡眠を勧める。別に断る理由もない。


「そうか、そうだな。そうさせてもらうわ。お休みよ。」

「お休みなさい。」


それから一瞬で微睡の中へと落ちていった。裏稼業を始めて以来、初めての熟睡だった。


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