龍鱗
タモンは距離を詰める。魔力を纏った一撃。センは攻撃を躱すが皮膚が抉れる。まともに喰らえば身体が裂けていたかもしれない。
打ち合えばこちらが確実に不利。しかし、あれだけの魔力の消費量。いくらタモンといえど虎落を維持し続けるのは厳しいのでは?だがあの攻撃を防ぎ続けるのは部が悪い。いや、待てよ?タモンの技を自分の規格に落とし込めればどうにかなるかもしれない。
「どちらにせよだな。ぶっつけ本番だが成功させねぇと俺もコイツもこの街も全部終わっちまうからな。やってやるさ!」
センは自身に流れる魔力に意識を集中させた。攻撃の際に使っていた流れを放出せずに停滞させる。最初は荒々しい流れが落ち着く。
センは腕を中心に厚めに魔力を纏い、身体には膜を張るように薄く魔力を纏った。
「"龍鱗"ってとこだな。」
タモンは構わず攻撃を仕掛ける。センは正面から攻撃を受け止める。魔力を纏った状態での近接戦闘、肉弾戦である。先程までと違うのはセンの皮膚は抉れていない。
「攻撃は痛ぇけどなんとか耐えれる。こっちは防御にだけ集中して魔力切れまで耐え続ける。防御にだけ魔力を使う俺と攻守に魔力を垂れ流し続けるお前とどっちが先に根を上げるかチキンレースと洒落込もうや!」
それから殴り合いが数時間続いた。衝撃や粉塵は周囲に舞っているがタモンの攻撃は街へとは届いていなかった。センがタモンのヘイトを一身に受け続けていたからである。いや、理性を失ってもなおタモンは街への被害を最小限にしようという深層心理も働いていたのかもしれない。それ故に頂上決戦ともいえるこの闘いを一目見ようと遠巻きにギャラリーが出来ていた。ネオカブキに集まる人種は大小あれど混沌を求める性質のモノが多いのだ。




