Once Upon a time ②
それから数日、少年は毎日のように果物や肉を携え洞窟に通い続けた。
虎も少年には心を許し最初のように威嚇することもなくなっていた。
傷も概ね癒てきた。少年に感謝を伝え出ていこうと思っていた。しかし、いつも少年が来る時間になってもこない。
愛想尽きたのか?何かあったのだろうか?
どちらにせよ確認がしたいと周囲を見に行くことにした。
洞窟からしばらく離れた所に人里があった。人里は何者かに荒らされていた。里の中央部で血まみれの少年と虎型の魔物が戦っていた。
里はほぼ壊滅し里の住人も殆どが死んでいた。少年は1人なら容易に逃げることが出来ただろう。自分を除け者にして来た筈の里の民など見捨てればいいのにと虎は考えていた。だが少年には見捨てることができなかったのである。愛郷心でもなんでもない。ただ目の前の命を見捨てる事が出来なかったのである。
だが虎は理解していた。何故なら少年と相対している虎型の魔物は自分の同族なのである。
金虎:虎型の魔物。柔軟な筋肉による圧倒的な膂力を持つ。繁殖期を除き基本的には群れずに生活している。森林地帯ではカーストの上位に位置する。稀に白金色の個体が産まれるが種を脅かす存在とされ同族による狩りの対象になる。




