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海の王の残滓




紋励起(ウェイクアップ)…海の王の残滓(グロブスター)。」

ロナルドが呟く。

「悪いな。紋の発動より俺のが早かったみたいだな。そのまま眠れ。」

センの拳がロナルドの腹にクリーンヒット。

グニィと異質な音がする。

「何だこの触感は?」

例えるなら肉厚の脂身を殴ったかのような感触だ。まるで手応えがない。


その時、観客席から声が聞こえる。

「グロブスターだと!!!?聞いたことがあるぞ。世界各地の浜辺に時折り流れ着く謎の肉片。それは未だ討伐した者が1人もいないとされる海の覇者の身体の一部だとされている。海の覇者はあまりに強大すぎる故、ほんの一欠片でも食せばその力が体に宿るとされている。」


「解説ありがとさん。」

センは苦笑いする。

「そんな大層なモンがこっちの世界にはいるんだな。さてさてさぁて、どう攻略するかだな。こりゃ骨が折れるぞ。」

センが決意を固める。仮に肉質がゴムの様なものだとするとある程度の打撃は吸収されるだろう。まずはどの程度の火力でそれを突破出来るのか、突破出来るのであればその上限の見極める。

「とりま挨拶代わりや!」

渾身のストレートパンチを放つ。案の定、ロナルドの身体は波紋状に波打ちダメージが入っていない様に見える。

ならば次だ。連続攻撃で吸収のインターバルを確認する。

「やめておけ。俺の体に物理攻撃は効かない。物理しか脳のないお前に勝機はないぞ。」

ロナルドの重い口が開いた。

「1つ昔話をしてやろう。俺は貧しい漁村の出身でな。中でもとりわけ貧しい家庭に生まれたのが俺だ。ウチの親父は酒浸りで癇癪持ちに無職ときた。母はDVに怯えてるくせに共依存なのか逃げもせず家に金を入れるため朝から晩まで働く。だがなそういう奴に限って子供をたくさん作りやがる。俺はそんな家で産まれた長男だった。その日の食い扶持すら確保できない何処にでもいる貧乏な家で育って来た。」

「だがな、ある日ウチの村に肉片が打ち上がったんだ。なんであれ、これは肉だ。肉なら兄弟に食わせてやることが出来る。そう思って肉を切り分けて持って帰った。そうこうしている間に村の奴等が来て同じ様に切り分けていたよ。」

「その日の食卓にはどの家庭にも肉が並んだろうな。翌日、目を覚ましたら村丸ごと俺と生まれたばかりの妹以外全員おっちんでたよ。呪いだったんだろうな。」

「俺は肉を切り分けている最中に腹が減って食っちまった。呪いの紋は大抵最初のやつに憑く。俺が呪いに魅入られ他は全員定員オーバーで呪い殺された。妹はまだ産まれたばかりで肉が食えなかったからな。」

「俺があんな肉持ち帰らなければ弟達は死ななかったのかもなぁ。」

「それから程なくして妹も病に伏せてしまった。肉自体は食ってなくてもなにかしらに当てられて影響を受けちまったみたいだからな。俺はその治療費を稼ぐ為にここにいる。」

「どうした急に?自分語りなんて。」

「つまり後には退けないってことだ。」

「同情はするぜ。だがコッチも護りてぇもんがあるんだ。互いに譲れねぇって訳だ。」


肉壁が攻撃を阻み思う様にダメージを与えられないのにこっちのスタミナばかり削られる。対して向こうはまだ攻撃らしい攻撃をしてきていない。現状は膠着状態が続いているが奴の動き次第では天秤が傾く。


「そろそろこちらからも動いてもいいか?」

ロナルドがセンに掌底を向ける。

海伝波グロブスター・ストランディング。」

掌底から衝撃波が放たれる。

センは放たれた衝撃をモロに受けた。

それは軽い脳震盪を引き起こし内臓が口からまろび出るかと思うくらいの衝撃だった。

更にその衝撃は一度ならず二度三度と繰り返し波状攻撃として押し寄せてくる。

だが、センの類稀れなる戦闘センスで一度目で適応し衝撃の進行方向に敢えて自分も跳ぶことで威力を和らげた。だが威力を弱めてもなお内臓、特に脳への揺れは軽減しきてれていなかった。

ロナルドの攻撃は止まらず追い討ちをかける。

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