表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

初めまして。

とっても遅筆ですが、ちょっとずつ更新していけたらと思っています。

よろしくお願いします。

どうかあなたの進む道が辛く厳しいものではありませんように…

たどり着く未来が光り輝くものでありますように…


◆◇◆


暗闇の中、突然意識が自分の中に戻ってくる。

身体中が燃えるように熱い…頭がズキズキする…


何かがそっと顔に触れた。


冷やりとした感触が、熱くなった頬に心地いい。

誰かの…手…?

誰だ?俺はまだ眠いんだ…


振り払いたいのに、腕が鉛のように重くて力が入らない。

正体だけでも確かめようと、無理やり瞼を開けてみる。

まぶしい光が、瞳を突き刺した。思わず目をすがめると、光の中に小さな人影…?が見えた。


「…生きてるんだね。」

「……」


何を言ってるんだろう。当たり前じゃないか…そう思ったけど、声を出そうとした口からは乾いた空気が漏れていくだけだった。口の中はなんだかジャリジャリしている。口を開けた時に唇でも切れたのか、鉄の味が流れ込んできた。


…ああ…気持ち悪い…


「話さなくてもいいよ。もう一度、目を閉じて…。何も心配しなくていいから。」


そう言って瞼の上に乗せられた手のひらの冷たさに、俺はなぜか懐かしさを感じていた。


───あぁ帰ってきたんだ。


再び薄れていく意識の中で、そう思った…なんて、今考えるとおかしな話だけど。


◆◇◆


人が倒れていた。


そう珍しい事でもないから、特に驚きはしなかったけど、やっぱりいい気分じゃなかった。


そりゃあそうだ。

生きてればいいけど、大抵はそうじゃない。

酷い時にはもう、人の形をしていない事もある位だ。


その時も、近づいていくにつれて『あぁ、ダメだな』って思った。

倒れていたその人は、人の形はしていたけど砂漠にいるには似つかわしくない…っていうか、自殺行為としか思えないような服装だったから。

もしかしたら、砂賊にでもあってみぐるみ剥がされた人なのかもしれない。


傍にしゃがんで、そっと頬に触れてみる。

まだ熱い。

腕をとって脈を調べようとしたその時、かすかに腕が動いたような気がした。


もしかして。


顔を覗き込むと、うっすらと目を開けてこっちを見ていた。


「…生きてるんだね」


声をかけると、何か言いたそうにゆっくりと口を開こうとするのが見えた。乾き切った唇が割れて、赤い血が一筋、口の中に流れ込んでいった。


「話さなくていいよ。もう一度、目を閉じて…。何も心配しなくていいから。」


そう言って、傷だらけの顔に手をかざし、そのまま瞼にそっとのせた。

手のひらから熱が伝わってくる。

その人は安心したのか、短く息を吐き出すとそのまま眠ってしまったようだった。


助けなきゃ。

あたしはその人の腕をつかむと、うちへと()()()


◆◇◆


どこか遠くの方で何かが崩れ落ちる音がした。

きっともうすぐ、ここも崩壊が始まるだろう。


…結局、僕はなにもできなかった…


僕の中の何かが失われたかのような空虚感…何も考えられない。

さっきよりも大きく、崩壊の音が鳴り響く。

細かい振動と共に、天井からパラパラと破片が落ちてきた。


あれから僕の腕の中で目を閉じたままの、君の金色の髪がサラリと一筋滑り落ちていくのが目の端に映った。

ふと…君の最後の言葉が甦る。


───そうだ。行かなければ。


急に力が体の中に戻ってきた。

君をゆっくりと床に横たえて、まだほのかに温かい頬にそっと短いキスをした。


「ごめん…君は連れて行けない。だから…」


懐から小さな折りたたみ式のナイフを取り出して、君の髪を一房切り取ると、僕はそれを布に包みナイフと一緒に懐にしまいこんだ。


「せめてこれだけは…一緒に行こう。これからはずっと一緒だ」


君がふわりと笑ってくれた気がした。

僕はなんとか立ち上がると、そのまま歩き始めた。

少しずつ近づいてくる崩壊の音を背中に聞きながら。


君の思いを届けるために…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ