3話-1「少年、空を飛ぶ」
さて、私は今島にいます。
銀色の湖に囲まれた大きくも小さくもない島。
島の真ん中には緑に囲まれた金色の城が。無限に続く青い空が。
美しい眺めの中で私は生きています。
右には薄めの青髪の女性、左には白髪の女の子。言うなればハーレムです。
そして前には巨人。
巨人……?
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「島へ行こう」
魔術の訓練が休みの日、ヌトスさんがなぜか俺達二人を呼んでそういった。
「島……ですか?」
「ああ。シルバーレイクの醍醐味といえば島だろう」
「そうなんですか?」
「お前、そんなことも知らないのか? 地理を勉強していたと聞いたが?」
「専門外です」
「そうか」
「アイナ。知っているか?」
「はい。湖の真ん中にあるレイクランドですよね」
「そうだ」
レイクランド。湖の島ってことか。
そのままだな。
「それで、なぜそこに行こうと?」
「特に理由はない。強いて言うなら暇つぶしだ」
暇つぶしって……まあ別にやることもないから良いけど。
「でも、私、自主訓練の予定があるんですけど……」
マジカ。休みの日にも勉強してんのか。
でも流石にヌトスさんと二人きりはな……
「アイナ、たまには休憩も大事だよ」
「そうだ。これも授業の一環だと思ってくれると良い」
アイナは顎を触り、考え出し……。
「それなら、良いけど……」
なんだかんだ満更でもなさそうだ。
まあ行きたくなくはないだろうしな。
「それで、どうやって行くんですか?」
「飛ぶ」
「「え?」」
ヌトスさんは俺達の疑問を無視してブツブツとなにかを呟いた。
その瞬間、俺達の体は宙に浮いた。
「おぉえっ」
これは風だ。
特有の風魔術で俺等のことを浮かせているんだ。
臓器が浮くような感覚。気持ち悪い。隣のアイナは大丈夫そうだ。
なんでぇ
とても気持ちは悪いが景色はきれいだ。
あの銀色の湖の全貌が見える。
その瞬間、風はまた強くなり、
俺の臓器と体はまっすぐ前に飛んでいった。
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「到着だ」
「やっ……と……」
俺は到着の喜びと痛みで苦しみを覚え、倒れた。
どうやらここまでのようだ。
ありがとう。お母さん。お父さん。
すると倒れた俺のところにアイナが来てくれた。
優しい子だな。
「大丈夫!?」
「ア、アイナ。俺が、死んだら……息子たちに、よろしく、たの……む……」
「早く立て。こんな事で死にはせん」
ノリが悪い人だな。
アイナは必至に心配してくれたのに。
てかなんでこの二人は大丈夫なんだよ。
「少し歩くが、大丈夫か?」
「ど、どこに行くんですか?」
「あれだ」
見上げると、巨大な城があった。
全体が金色に塗装されていて、銀色の湖と相まって更に美しさを目立たせている。
「こんなとこ入って良いんですか?」
「ああ、こう見えても私は人脈があるからな」
そうなんだ。
まあ軍隊長だったとか言ってたしな。
そうして歩き始めると、この島の全貌が見えてきた。
さっきは気持ち悪すぎて見ている暇はなかったからな。
周りには俺と同じくらいの背丈の葉が並んでいる。
俺の身長は約1メートル。
そう考えると大きすぎるわけでもない。
かといって都会育ちの俺はこんなクソでか植物見たことがないので興奮してしまう。やっぱり異世界すげえ。
更にさっきは動物の影も見つけた。
魔物だったりすんのかな。
気をつけよう……
~~~
草だらけの道を数分歩き、やっとあの城にたどり着いた。
「着きましたね」
「ああ。少しここの者に話をしてくる。ここで待っていろ」
アポ無しかよ。
アイナの方を見ると、彼女もまた呆れていた。だよね。計画性のない男ってちょっと冷めるよね。分かる。
……暇だから話して待っていよう。
「そういえばアイナってどこでここのこと知ったの?」
「え? お母さんに教えてもらったんだよ?」
そういうことか。
本には乗って無くても現地人なら知ってるよな。
「他にここのこと知ってる?」
「そういえば、ここには魔物がいるらしいよ」
「えええっ。大丈夫なのかな」
「大丈夫でしょ。どうせ初級の魔物だし、ヤクシャなら簡単に倒せるよ!」
「そ、そうかな……」
期待してくれるのは嬉しいけど魔物は怖いな……
水色のスライムとかなら簡単に倒せる気はするんだが……
「魔物ってどんなのが居るんだっけ」
「えーと、魔物も初級から上級に分かれてて、初級はザコ、上級はだいぶかな。ちなみに神段の魔物も居るけど……まあそんなのに会わないだろうし大丈夫だよ」
「水色のスライムとか、いる?」
「うん。でも水色は初級の魔物だから大丈夫だよ。おっきなスライムとかは強いけどね」
本当にアイナは頭が良くてわかりやすい。色々教えてくれて好感が上がっていく。
それにしても魔物か……。
考えているとヌトスさんが帰ってきた。
「許可はもらえた。いくぞ」
どうやらアポは取れたようだ。