表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のこと'も'どうぞお気遣いなく、これまで通りにお過ごしください。  作者: くびのほきょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/19

Jacqueline(age15) 10

ジャクリーンは長年の教育を思わせる綺麗な所作で回廊の端へ寄り、正面から歩いてきたアメリアへ道を譲り、自分より上位の人へ対する態度として正しく目線を下げた。アメリアは第一王子エルドレッドの婚約者の公爵令嬢で、今のジャクリーンはただの伯爵令嬢。ジャクリーンの行動におかしいところはない。


9ヶ月程前まではジャクリーンの方がアメリアよりも上の立場だったのに、などとは思わない。貴族として生まれた責務から逃げようとしている自分には、今の立場を悔しがる資格などないと知っている。

それに、以前のジャクリーンが周囲の令嬢から侮られないように尽力していたのは、王妃になる令嬢としての振る舞いとしてハモンド公爵がそう望んでいたからであって、ジャクリーン自身は高位貴族の地位などどうでも良いと思っていた。たとえ帝国へ逃げる予定がなかったとしても、ジャクリーンはアメリアより下の立場になった事に対して悔しいとは思わないはずだ。


子爵令嬢から王妃にまで上り詰めようとするほどに野心が強いアメリア。ジャクリーンにはそんなアメリアの動機や気持ちなど分からない。それでも、平然と嘘をつき、他人を支配して操り、家族を違法魔法薬の実験動物にするようなアメリアが、あのエルドレッドのことを好きという理由でジャクリーンの地位を奪ったのではない事だけは分かる。


いや、これではエルドレッドに魅力が無いことが理由のように聞こえてしまう。違う。9歳で親を殺した女に、恋をしたり人を愛する心があってたまるか。


ジャクリーンは内心でアメリアへ毒吐き、恐怖の感情が出ないように奮い立たせる。そして、コーネリアスとの会話を思い起こす。


レノン伯爵家へ潜入してきたコーネリアスから手伝いを頼まれたあの日、ジャクリーンはミアとジャクリーンが2人揃って帝国へ逃げるために、つまり、ケンブル侯爵家と王妃とアメリアへ反撃するために自分がするべき事を尋ねた。


『エルドレッドは、近日中にアメリア・ジョンストンと婚約する。そのアメリア・ジョンストンはジョンストン公爵家へ養子入りする前、実の両親を殺していたことがわかった。長年の婚約者候補を根拠のない社交界の評判という不当な理由で捨て、自ら望んで婚約した婚約者。その婚約者が過去に人殺し、しかも、9歳で尊属殺人を犯していたことが周知されたら、エルドレッドは二度と立太子などできなくなる。……まずは毒婦を魔法学園の入学式で断罪する。その後、毒婦から聞き出した体でケンブル侯爵家の悪事を追求してケンブル侯爵家を撃ち落とし、王妃とエルドレッドとクリストファーを無力化させる』


気付けばジャクリーンは背中や腕など身体中に鳥肌が立ち、まるで冷水を被ったように震えていた。


ジャクリーンとアメリアが初めて会ったお茶会、9歳のアメリアがカルミアの花の陰で一心不乱に本を読み上げていたあの時、すでにアメリアは両親を殺していたというのだ。アメリアはわざとジャクリーンへ本を読む姿を見せたのかもしれない。健気で一生懸命というジャクリーンからアメリアへの第一印象は、全てアメリアの計算の上だったと考える方が自然だ。


ジャクリーンは“裏切り”や“野心”といったカルミアの不穏な花言葉を思い出し、余計にゾッとする。


『何よりも警戒すべきは毒婦。あれは、他人の表情や声色だけでなく、目線や眉、指先、頭の天辺からつま先まで全身の動きから深層心理や思考を読み、そこから先回りして対策し、しかも行動を誘導することにも長けている。現に、王子妃教育で厳しく感情操作を叩き込まれていたジャクリーン嬢でも毒婦に操られ、自発的に行動していると思っていた程の洗脳状態にまでなっていただろう?ケンブル侯爵家は思考を支配して操るような薬を持っているようだが、毒婦はその薬を使うことなく観察と会話だけでそんな芸当が出来るんだ。……これからは毒婦に思考を読まれないようにして欲しい。それだけで充分毒婦への復讐になる。ジャクリーン嬢と会話していて気付いた癖や、私が知っている限りの感情によって起こる仕草を教える。毒婦と接する時に表情はもちろん、目線や身体の動きまで意識して制御してくれ』


レノン伯爵家へラナを、ジョンストン公爵家へ配下を侵入させ、顔だけでなく体格や声まで変わる見たことも聞いたこともない魔道具を持ち、高価な録音魔道具を惜しげも無く使い、誰にも見つからないように第三王子を隠し続けるなど、短い間の会話だけでも、コーネリアスが豊富な人材・資産・権力を持っていて、それらを効果的に使う優秀さまであることが分かる。


そんなコーネリアスに“毒婦”と特別な蔑称で呼ばれているアメリア。ジャクリーンはそれだけでアメリアは侮ってはいけない相手なのだと痛感する。


『ジャクリーン嬢、毒婦の事を警戒しろとは言ったけれど、過剰に恐怖する必要はない。大丈夫。あれも一応君と同じ人間だ。これまでに短慮な行動や失敗を何回もしているし、そのおかげで毒婦がミルズ子爵夫妻を殺害した証拠を手に入れている』


コーネリアスに励まされ、ジャクリーンはアメリアへの恐怖心で震えている身体を自分の腕で抱きしめながら、無言で頷いた。


『目下の目標はケンブル侯爵家が隠し持つ違法魔法薬とトリスタン君の髪の毛を手に入れること。ジャクリーン嬢はトリスタン君を誘惑して恋人になってくれ。そしてトリスタン君の髪と違法魔法薬を手に入れて欲しい。違法魔法薬は、ジョンストン公爵家の従者として潜入している部下が毒婦から手に入れる方法も取るからジャクリーン嬢がトリスタン君から奪えなくても大丈夫。……きっと、トリスタン君の恋人になるなんて屈辱だと思う。でも、それらを手に入れるまでミア嬢の治療ができない事を理解して欲しい』


ミアの治療のためにできることがある。アメリアへ恐怖している場合ではないと無理やり怯える気持ちを抑え込み、ジャクリーンは震える身体に力を入れて背筋を伸ばした。


『魔法薬を手に入れたら私が解析し治療薬なり中和薬なりを作る。それなりに知識は持っているつもりだし、詳しくは話せないけれど、魔法薬が効かない体質を利用すれば複製も割と早くできるはず。複製が完了したら、次は、彼らを有利にさせている違法魔法薬をこちらも使う』


『トリスタンとアメリアを魔法薬で操るということですか?』


『理想はそうしたいが、毒婦はトリスタン君やケンブル侯爵からの投与を警戒している状態だろう。もしも我々の投薬に勘付かれてしまうと、こちらの手の内がバレる危険がある。違法魔法薬を盛るのはトリスタン君だけにしておいた方が無難だ。……ミア嬢のためにトリスタン君の髪の毛を手に入れるが、その時に彼が毒婦に投薬されているかも検査できる。その結果次第で作戦は変えないといけないが、毒婦がトリスタン君へ薬を盛っている可能性は低いと見ている。ケンブル侯爵は女癖が悪い割に、と言うか女性好きだからこそなのかな、女性のことを軽視している。特にも小柄で幼い見た目のジャクリーン嬢のことは危険視などしないだろう。まぁさすがに毒婦のことは特別に警戒しているようだけどね。……トリスタン君は若さゆえのうぬぼれがあり、最近の盛運で慢心しているケンブル侯爵にも油断がある。ジャクリーン嬢がトリスタン君へ魔法薬を盛ることは難しくないはずだ』


自分の思い通りにするためだけに母親を亡くしたばかりの12歳のミアへ違法な魔法薬を投与し、それから6年も投薬を続けているトリスタン。そのせいでミアは記憶障害まで起こしている。そんなトリスタンならば、違法薬を使うことへの罪悪感や戸惑いなどない。躊躇なく盛れそうだと安心する。


『ジャクリーン嬢がミア嬢を慕っていることは毒婦にはバレているだろう。きっと、ジャクリーン嬢と親しくするためにその気持ちを利用していたんだね。今後は、逆に、それを利用するんだ。トリスタン君の恋人になるジャクリーン嬢はミア嬢からトリスタン君を寝取ることになる。周囲にはジャクリーン嬢が悪女に見えるだろうが、ジャクリーン嬢が大好きなミア嬢を助けるためにクズなトリスタン君と婚約破棄をさせようとしていると毒婦が考えるように誘導しよう。……親友を失ったジャクリーン嬢にとってミア嬢が唯一の心の支えになってることも、ジャクリーン嬢がトリスタン君をクズだと思っていることも毒婦は知っている。だって、トリスタン君をジャクリーン嬢へ嗾けていたのは毒婦だからね。ジャクリーン嬢の行動に不自然さを感じなければ、ジャクリーン嬢の後ろに私がいてトリスタン君が操られていると毒婦が勘付く可能性は低くなる。……ふふっ、当初はジャクリーン嬢は自分より高位貴族に嫁ぐミア嬢に嫉妬してトリスタン君を寝取る筋書きを考えていたんだけど、それよりもずっと成功しそうだ』


元の計画の場合、エルドレッドに婚約者候補から降ろされただけでなく、異母姉の婚約者を寝取ったジャクリーンをコーネリアスは娶るつもりだったらしい。今のジャクリーンでも充分ありえない話なのに、今以上の悪評をつけようとしていたコーネリアスに驚いてしまう。


『ジャクリーン嬢がミア嬢と共に帝国へ逃げれるように作戦を変えないといけないね。……ジャクリーン嬢はトリスタン君を誘惑する前にブラッド君と噂になってもらおうかな。さっきまで私が変身していた赤毛の青年はブラッド・イングリスと言って、ミア嬢の母方の従兄弟なんだ。世間的にはジャクリーン嬢はミア嬢に嫉妬してトリスタン君を寝取り、本命のブラッド君と帝国へ駆け落ちをしたことにしよう。毒婦には、ブラッド君はミア嬢を助け出すためにジャクリーン嬢に近づき、ブラッド君とジャクリーン嬢が恋に落ち、ミア嬢を連れて帝国に逃げたという筋書きにできる』


臨機応変に作戦を変えるコーネリアスの有能さに改めて畏れ入る。コーネリアスであればアメリアに勝てる気がしてくるから不思議だ。


『大丈夫、あの毒婦はこの粗筋を信じるよ。あの毒婦には人を愛する心など無い。でも、時の権力者が恋愛のせいで失墜したりと、愛によって起きた歴史上の愚かな事件を知っている。愛を知らないが故に、不合理な出来事の原因が“愛”ならば、多少の矛盾があっても受け入れてしまうだろう』


両親から放置されていたジャクリーンは愛を知る機会が少なかった。それでも、ジャクリーンに温かい感情を教えてくれたリーアやミアのことを愛することができた。

殺されたミルズ子爵夫妻がアメリアへどのように接していたかは知らないが、少なくともジョンストン公爵家では公爵、前公爵夫人、義兄パトリックに受け入れられていた。実子のメリッサよりも可愛がられていたというのに、彼らに愛を返すどころか、実験動物のように扱い違法魔法薬を盛っていたアメリア。

そんなアメリアからしたら、ミアへの家族愛故に次期侯爵のトリスタンとミアを破局させようとするジャクリーンの行動など無駄で無益で不条理だと思うだろう。でも、理解できないからこそ信じてくれるかもしれない。


ジャクリーンはコーネリアスとの会話の回想から、今、従者や護衛を引き連れて目の前を歩くアメリアへ意識を戻す。


今のアメリアは、ジャクリーンは愛するミアとトリスタンの婚約を破棄させるためにトリスタンへ近づいたと思っているはず。

ジョンストン公爵家に潜入させているコーネリアスの部下によると、アメリアはブラッドがミアの従兄弟ということを既に把握しているらしい。でも、ジャクリーンとミアとブラッドの後ろにコーネリアスがいることも、トリスタンが違法魔法薬によってコーネリアスの操り人形になっていることにも気づいていないと聞いている。


アメリアは回廊の隅に避けて目線を下げていたジャクリーンの前で立ち止まり話しかけてきた。


「ふふふ。それ、“親友に婚約者を寝取られた伯爵令嬢の本命は、婚約者の異母弟です”と同じね。ということは無事トリスタンとミアさんを婚約破棄させれたのかしら?」


扇子でジャクリーンのドレスの染みを指しながら笑っているアメリア。


「っ」


ここは驚いていた方が自然。


アメリアへ悟られないように感情を全く出さないようにすると、何か隠しているのでは、と勘ぐられてしまう。ジャクリーンはアメリアへ、コーネリアスとの関与を悟られないように、コーネリアスの手助けをしていなかった場合に取る自然な感情と行動をあえてしないといけない。


ジャクリーンは長年の習慣の通り軽く微笑んだ表情しつつも、瞳が隠れないように顔を上げて真っ直ぐとアメリアの赤い瞳を見つめる。実際にジャクリーンは、このドレスの赤い染みだけで「親友に婚約者を寝取られた伯爵令嬢の本命は、婚約者の異母弟です」をなぞって婚約破棄をしたことに気づいたアメリアへ驚いているからだ。コーネリアス曰く、驚くと瞳孔が開くものらしい。


「チェスターとベリンダは私の実の両親よ。だから、参考にしたんだと思ったのに、気づいていなかったのね。なんの偶然かしら……」


台本を用意してくれたコーネリアスからはそこまで聞いていなかった。そういえば、ハモンド公爵はアメリアのことを“チェスターとアバズレの真実の愛の結晶”と言っていたではないか。トリスタンの破滅の台本に、アメリアに殺されたミルズ子爵夫妻の昔話を持ってきて、なおかつそのことをジャクリーンへ教えないコーネリアスの感覚に、アメリアに感じるのと同じ気味の悪さを抱く。


「それがメルの本性?」


ジャクリーンは、エルドレッドと婚約してから初めて話すアメリアの、開き直った態度を指摘した。ジャクリーンを鼻で笑っているような言葉遣いと振る舞いでは、ヒューバートと破局することになった可哀想な親友として接することなど到底できない。


「あなたが不自然に噂になったあの商人ってミアさんの従兄弟なのでしょ?ここ最近のブラッドさんはなぜか数日分位の女性物の衣類を購入していて、しかも、明日から辻馬車を予約しているらしいわ」


ブラッドの行動まで調べ把握しているアメリアが怖い。


コーネリアスの指示で帝国へ逃げる準備はブラッドが全部行っていたのだが、正解だったようだ。少しでもコーネリアスの手を借りていたらアメリアに勘付かれていただろう。安心するが、それが表に出ないように、普段恐怖を感じた時にするようにジャクリーンは瞬きを増やして喉元に手をあてた。

ここは安心感を出さないように注意し、恐怖を隠さない方が良い。そして、ジャクリーンはブラッドを愛しているのだとアメリアへ思わせれば尚良い。


「あぁ安心して。あなたがミアさんやブラッドさんと帝国へ逃げようと、私は別にどうでも良いの。邪魔する予定はないわ。……ただ、ひとつ提案があって声をかけたのよ」


きっとアメリアは、言葉一つ一つを問いかけるたびにジャクリーンの反応を観察しているのだ。ジャクリーンを見つめるアメリアの表情がだんだんと抜け落ちていく。感情のない美しい顔は、まるで精巧に作られた人形のようで不気味だ。普段のアメリアは常に表情を作っているのだとわかる。


ジャクリーンは恐怖と不安の仕草で迎え撃つ。悲劇の親友は実は野心家だったと気付き、しかもジャクリーンがミアとトリスタンを婚約破棄させて、ブラッドとミアと3人で帝国へ逃げようとしている事に気付いているアメリアへ対する感情。


「ミアさんは病を患っているわ。幼少期の記憶が無いのも、記憶障害があるのも病のせい。トリスタンが飲ませていた治療薬が無いと病は進行してしまうでしょうね」


アメリアの狙いがわかり、激しい怒りがジャクリーンの全身を駆け巡るが、表面上にでないように、体に力を入れないように気合を入れる。ジャクリーンは拳を握り締めたいのを我慢して、目を左右に泳がせ少しだけ体をそり返した。


怒ってはいけない。怒ってはいけない。ここは、「何を言っているのだ」と軽い不快と、信用できないと疑い、少しの不安な気持ちが正解だ。


ジャクリーンは不敬な態度で返事をした。


「そんなこと、信じられないわ」


「そうね。でも、今ここで信じなくても、時が経てば分かる。ミアさんの手の震えが止まらなかったり、幻覚を見たり、過食か拒食、過眠か不眠、急な発汗や痙攣が起きるようになった時、普通のお医者さんでは治療どころか原因を特定することすら難しいの。……その時は私を頼ってちょうだい。私なら治療することができるわ」


アメリアはミアを助けたいと思っているのではもちろんなく、まるで実験動物のようにミアを観察したいのだ。魔法薬が効きづらい上で魔法薬漬けになっているミアは、こっそりと家族で治験をするほどに知的探究心が高いアメリアにとって情報の宝庫だろうとコーネリアスも危惧していた。

コーネリアスがミアの治療をしていることを知らないアメリアは、トリスタンからの投薬が切れたミアに起こる副作用を病と偽り、ジャクリーンがアメリアを頼るように仕向けたいのだろう。


「もしも、そうなった時はあらゆる手を尽くしてミアを治療してみせるから問題ないわ」


「ふふっ、あなたは平民になるのだから治療には限界があるのよ。駆け落ちするほど愛しているミアさんのためなら私に頭を下げるくらい簡単でしょう?私はいつでも歓迎するから覚えておいてね」


最後にジャクリーンへ禍々しい笑顔を見せたアメリアは、従者たちを引き連れてダンスパーティーの会場へ向かい歩いて行った。


ジャクリーンは“駆け落ちするほど愛しているミアさん”という予想外の言葉に動揺してしまったのだが、アメリアはジャクリーンの返事を待たずに去って行ったためにジャクリーンの動揺には気づいていないだろう。

アメリアにはジャクリーンはミアを愛していると思っていたようだ。もちろんジャクリーンはミアの事を愛している。でもそれは家族愛なのだが、愛を知らないアメリアには恋愛と家族愛の区別など付かないのだ。


ジャクリーンは早歩きでレノン伯爵家の馬車へ向かう。アメリアに思考を読まれることなく、ジャクリーンとコーネリアスのつながりを悟られることはなかった。馬車へ乗り込んだジャクリーンは、アメリアとの最後の攻防に勝利したのだと、両手を頬に当ててにやけてくる顔を揉む。


心地よく揺れる馬車の中、離れていく魔法学園の校舎を見る。


3ヶ月後、アメリアがこの魔法学園へ入学する時、国王陛下や国賓がいる前でコーネリアスから断罪されるであろうアメリアを想像する。きっとあの王妃やエルドレッドも取り乱して驚く事だろう。その時、ジャクリーンは帝国の魔法学園の入学式に参加しているのだと、ジャクリーンはとうとう声に出して笑いだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ふぁ~~~。緊張したよぉ~。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ