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3話



まず国王陛下。陛下がアルバートに命じたことは人としては最低の部類に入るが、過去の聖女の所業を考えれば「聖女を誘惑して変な気を起こさせないようにしよう」と考えるのは分からなくもない。私も理解は出来る、決して納得はしないけど。そんな陛下の所業に拒否反応を示したのは王妃様。


「陛下、あなたのなさったことはヴェルダー卿と聖女様、そしてクレアのことも侮辱する行為です。…国のために仕方がなかったかもしれませんが…私は受け入れられません」


手に持った扇で口元を隠しながら王妃様は不愉快そうに吐き捨て、言われた陛下は顔を真っ青にしている。


そして王太子殿下。殿下は王女殿下に対し、顔を顰めて説教を始めた。


「お前が幼い頃からアルに対して好意を抱いているのも、国内の貴族に降嫁するという選択肢がないのも知っていた。だからアイツが勇者に選ばれた時に、妹の願いが叶うのではと陰ながら応援はしてた。してたが…お前も被害者なのは理解してるが聖女様へのさっきの発言、人としてどうかと思うぞ?混乱してるとはいえ、あれは絶対駄目だ。まるで我儘な子供のようだったぞ」


「…何よ、お兄様も私のこと責めるの?私は悪くないわ!本来なら褒章としてアルが私との結婚を願い出る予定だったのに!私のこと覚えてないって何?やっと、やっと幸せになれるはずだったのに!」


「それに関しては魔術師を呼んで調べさせるから、取り敢えず落ち着け」


「…でも、魔王の呪いってアルの中で『一番愛する者を奪う』、つまり記憶を無くすってことでしょ。アルが私のことを覚えてないのってそういうことよね…アルに限って心変わりの心配はしてなかったけど、忘れてるってことは私のこと一番愛してたってことじゃない!」


と、ここで私に勝ち残った笑みを向ける王女殿下。それに気づいたレオンがいち早く私と王女殿下と間に立ちはだかってくれた。


「お前は少し黙ってろ、聖女様に対しどれだけ失礼を働けば気が済む」


王太子殿下が呆れ混じりに言い、それでも尚言い募る王女様を宥めにかかる。


そして私を背に庇うレオンは渦中に居るはずなのに、ある意味一番落ち着いてるアルバートを何も言わずにじーっと、いや睨みつけてる。なのにアルバートは困惑するでもなく、冷静な態度を崩さない。エドはそんな2人を見て「こわー」と呑気に笑っているし、私は恐ろしさすら感じていた。


何この状況。空気がギスギスしていて、居心地が悪い。それでも盾のように王女殿下から庇ってくれているレオンが居なければ、もっと酷いことになっていただろう。未だに状況を呑み込めていない私だが、この少しの安心感が支えになっていたのは確かだった。





やがて解呪に特化していると言う、白鬚を蓄えた優しげな風貌のお爺さんがやってきた。聞けば軽く100年は生きてるらしい。魔術師は普通の人より少しだけ寿命が長く、実年齢より若く見せてる人や逆にそのままの姿を保つ人もいるとレオンから聞いた。


レオンはどの魔術も高レベルのものを使いこなせるから魔王討伐のメンバーに選ばれたけど、お爺さん魔術師は他の魔術は一般魔術師と同じくらいにしか使いこなせない代わりに、どんな強力な呪いも解くことが出来る。魔術師は基本的に一つの魔術を極める傾向があり、バランス良く使うレオンのような魔術師は貴重らしい。


「魔術師なんて自分のやりたいことしかやらない生き物だからな、偏屈で扱い辛い」


俺も含めて、とレオンは笑っていた。出会ってすぐの頃の話を思い出す。


レオンがお爺さん魔術師について「腕は確かだが、色々面倒臭いジジイ」と教えてくれる。そうは見えないけれど。


お爺さんはゆったりとした足取りでアルバートに近づき、ペタペタ無遠慮に触ったりじーっと観察していく。やがて終わったのかお爺さんがふう、と息を吐いた。


そしてお爺さんが陛下に目配せした瞬間、陛下の顔色が真っ青になり、この場に居た全員が息を呑んだ。嫌な予感しかしなかった。



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