夢の続きをくれたのは、キミだけだったよ
タイトルはノラ様の「確かに恋だった」よりお借りしました。
ある晴れた夏の日のこと。
青空にはもくもくとした入道雲が浮かんでいた。
チリン、チリン。
風に乗って、風鈴の涼やかな音が耳に届く。
短い髪を指でクルクルと指に巻きつけつつ、縁側で足をぶらぶらとさせていた私は、日差しに手を透かした。
左手の薬指の指輪が、強い光に照らされてキラキラと輝く。
小さい頃からの私の夢は、「素敵なお嫁さん」になることだった。
けれど色気より食い気で、何となくガサツで、料理や掃除もとにかく苦手な私は、昔から男性から全くモテなかった。
男友達と同じ扱いになっちゃうというか。
負けず嫌いで、しょっちゅう口喧嘩もしてたのも良くなかったんじゃないかなぁ。
だから彼氏いない歴=年齢、っていうレベルで。
それでも諦められなくて、合コンやら婚活パーティにも行ったけれど、結果は惨敗。
もうお嫁さんになることを諦めようかな、と思っていた28歳の夏。
くされ縁の幼なじみが「しょうがないから、お前をお嫁にもらってやるよ」、なーんて言ってきてさ。
「はぁ!? 何様のつもりなんだよ!」
なんて怒っていたのも、今となってはいい思い出。
「まーたそんな所で足をぶらぶらさせてんのか、お前」
幼なじみが呆れ顔を浮かべつつ、コンビニ袋を片手に帰ってきた。汗をかいていて、タオルでガシガシと首筋を拭いている。
「ほら、アイス。早く食え」
座っている私の膝に向かってぽいっ、と私の好きなアイスをよこしてきた。
つめたっ!!
「ありがとー」
袋を破いて一口。
冷たくて、甘い。
口は悪いけど、こんな暑い中を文句も言わずに買いに行ってくれるくらい、優しいキミ。
異性として好きなことを全く気付けていなかった私の気持ちをゆっくり育てて、待ってくれた優しいキミ。
友達と口喧嘩をする度に、間に入って仲裁してくれてたキミ。
私の隣にいつものように座って、おんなじようにアイスを食べ始めてるキミを見ながら。
「好きだよ」
ってやっと私が素直に言ったものだから、キミは動揺して食べかけのアイスをぼとっと落としちゃって。
それを見て私は思わず笑っちゃった。
ねぇ、私に夢の続きをくれたのは、キミだけだったよ。