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第八話

 休むことなくオアシスを目指して歩き続けた挙げ句、予期しなかった戦いで限界をとうに超えた疲労が蓄積したのであろう。彼女が手を口元にあて欠伸をした。つられて僕も欠伸をする。


「そろそろ寝ない? 夜も遅いし、明日に備えて」


「そうだね」


 ゆっくりと体を動かし、寝床を作る。昼間日に当たって温まった砂だったが早くも温もりが逃げていた。こうしている間も温度はどんどん下がっていく。昼間流した汗で体が冷え、寒気が走った。


「プラクティア!」


 段々と意識が霞み薄れていく中、突如、彼女が大声を上げた。それに驚いて彼女の方を向くとそこにはテントが立っていた。チャックをジジ……とあけて、中へ案内される。外で見たよりも大分広い空間がそこにはあった。内装は濃い青色を基調としていて、一晩過ごすのに最低限必要であろうベッド2つと葉っぱの形をしたランプシェイド、小さな机、壁掛け時計、棚、小部屋があり、小部屋には簡易式便所が備え付けられていた。


「これは、君が全部やったの?」


 そう聞くと、ええとはにかみながら言われた。少し風邪気味だから夢と現実が混じっているのかもしれない。そう考えて試しに頬を抓ってみた……痛い。どうやらこれは現実らしい。初めて魔法というものを見た。正直に言うと今まではそんな非科学的存在を否定していた。しかし、存在を知った今、肯定するしかない。思えば昼間のコヤンナンも魔法で倒したのかもしれない。目を忙しく白黒させる僕の様子を見て彼女は、終始笑っていた。

 ベッドに寝転んで目をつぶりウトウトしていると肩を叩かれたため、薄く目を開ける。見ると彼女がなにかを差し出していた。短く礼を言って受け取る。それは無色透明の液体だった。おそらく水だろうと思い、どこから供給してきたのかを聞くと、自生しているサボテンを切り取り怪我をしやすい棘の部分をさけて絞ったと言われた。恐る恐る飲み込んだ初のサボテン汁は少し苦かったが飲めないわけではなかったためそのまま飲んだ。昼間の暑さでカラカラに乾ききった喉が再び潤いを取り戻した。いつぶりだろう、水分を取ったのは。部屋に備え付けられている時計を見るがアルファベットのような文字が三角の形に並べられていてよくわからなかった。今、何時か聞こうとすると、とっくに彼女は眠りについていた。毛布をかけることさえ忘れ、寝息を立てて穏やかな表情をしている彼女を見て毛布をかけながら心のなかでそっと謝り、感謝を伝えた。彼女が起きているときに言えていなかった言葉たちが一斉に奥底から相手を求め湧き上がってきたからだ。少しでも伝わるといいなと思いながら頭を撫でる。これは……ギリギリのラインではあるがセクハラにはあたらないだろう。


「よし、僕も寝るか」


 そう言って大きく伸びをし、小さくお休みと言って目を閉じた。明日を楽しみにして。

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