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第七話

 空には数多の星が我こそはと輝きを見せつけるように凶暴であり、それでいて優しい光を放っていた。彼女は星に負けないほど美しい瞳をキラキラと輝かせながら、呟いた。


「星がたくさん見えるわね……。ねぇ、知ってる? あの小さな星の一つ一つに違う世界があるらしいわ」


「そうなの?」


「ええ」


 初耳だ。もしそれが本当のことだとしたら、僕は星から星へと移動したということになる。睡眠中に身体だけが飛ばされたのか、精神のみが飛ばされ、ここに虚像が漂着しているのかは定かでないがとりあえず言えることはここに意識があるということだ。きっと何か理由があって飛ばされたのだろう。となれば、するべきことをするだけ。できることをしよう。そう、決意を固めていたら、タイミング悪くお腹が鳴った。恥ずかしい……思わず顔を赤らめる。横にいる彼女をちらっと見ると何やらリュックの中に手を入れて探しているようだった。


「あ、あった! はい、これ。お腹が減ってるでしょ?」


 そう言って渡されたのは袋に入った木の実。キャリブというらしい。ありがとうと言って受け取る。一粒つまみ口の中に放り込む。コリコリとした食感で味は栗と胡桃を合わせて2で割ったという感じだ。まろやかでとても美味しかったため夢中で口に入れる。ふと彼女の食べる分が気になり横を向くと目があった。驚いたもののなんとか平常心を取り戻し、じっと見つめ返す。


「どうしたの? もしかして美味しくなかった?」


「いや、とても美味しいよ! そうじゃなくて、その……君の分が足りているか気になって、つい……」


「全然気にしないで! 私はお腹が空いてないからどんどん食べていいわよ。まだいっぱいあるから」


 ほら、とリュックの中を見せてきた彼女の言葉を否定するわけにもいかず仕方なくわかった、と頷いたものの、やはり心配なので半分に分けることにした。明日からの冒険に不調をきたすとよろしくないのと助けてもらった上にこれ以上迷惑をかけるわけには行かないという気持ちからせめてもの償いとして。はい、と言って木の実を渡すと驚かれた。


「食べていいのに……」


「明日から結構な距離歩くと思うし体調を崩したら良くないと思うよ。それに、このくらいの空腹、僕は慣れているから大丈夫! ほら、受け取って!」


 強引に渡す。実際、空腹に慣れていると言ったのは嘘だったが、そうでもしないと彼女はきっと受け取らないだろうと思ったからだ。ありがとう、と顔を綻ばせて言った彼女は、月明かりに照らされているせいかいつもより綺麗に見えた。

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