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第三十五話

 圧迫された空間内での癒しは暴力的な音と声によって破られた。ガチャガチャと牢の扉が開けられ、出てこいと命令された。命令したのは王冠の人物、もといコスギケイだ。猥雑な笑みを浮かべながら舐め回すように僕らを見ていた。


「哀れだな……一国の王妃がこんな姿になって。まぁ、自業自得だがな」


「そ、そんなこと……!」


「……ったく、気が早い坊ちゃんだぜ! お前ら、早く連れて行け!」


「ははっ! 仰せのままに!」


 コスギケイにつかみかかろうと伸ばした手は意図も容易く黒服の一人に取り押さえられ、強引に牢の外へと引き摺り出された。抵抗しようとジタバタしていると足が扉にぶつかり低い呻き声が漏れる。彼女はこちらを心配そうに見ていた。カミャードはやはり安全圏であるリュックの中に戻ったようで今はじっとしている。と、突然コスギケイはリュックを掴み、触った。


「なんだ、このリュック? 生暖かい感じがして気持ち悪いな!」


「やめろ! それには触るな!」


「おい! これを調べろ!」


「ははっ!」


「待って!」


 彼女と僕の止める声も虚しく、あっさりとリュックは開かれてしまった。そこには生まれたての子ウサギのように震えているカミャードがいた。黒服は乱暴な手つきでカミャードを掴みコスギケイにわざとらしく取ってつけたかのような美しい振る舞いで渡した。思わず頭にカッと血が昇り黒服に羽交締めされながら、その子を離せ! と怒鳴った。それを無効化し彼はカミャードの首根っこを掴みながら高笑いした。


「こいつは面白い……。こいつを私の部屋に置いてこい」


「はっ!」


「キュー! キューッ!」


 カミャードは必死に抵抗していたが大の男に首を掴まれているため、それは叶わず黒服と共に闇の中へ消えていった。


「……して」


「ん? 何言ってんだ、このアマ? こいつが元王妃だったなんて信じられねぇなぁ!」


「どうしてそんなことをするの!」


 彼女は涙を流しながら声を張り上げて、どうして! と連呼した。それを見て、男は鼻で笑い言った。


「当たり前だろ? 頭のいい元王妃様ならわかると思ったが……飛んだ勘違いか。まぁいい案内してやるよ!」


「どこへ……ウグッ!」


 いつの間にかつけられていた鎖付きの首輪を引っ張られ首が締まり、呼吸が一瞬止まった。横にいる彼女も同じように首が締まったらしくケホケホと咳き込んでいる。


「まぁ見てのお楽しみさ!」


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