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第三十一話

「お、王妃? それってどういう……」


 突然のことに思わず聞き返すと、王冠の人物は口を歪に曲げてわざとらしく、あぁそうとも! と怒鳴るように言い張った。そして、僕らを運んだのであろう大きな人型生物に向かって手を振った。


「こいつは国を捨てたんだ!」


「はい?」


 無言で、相手を睨みつけていた彼女が僕へ頭を下げ言った。


「騙していてごめんなさい!」


「騙すって?」


 王冠の人物はハァ、とため息をつき彼女に向かって名演技だなぁと目を細めて笑い、僕の方を向いて大声でとんでもないことを言い始めた。


「こいつはなぁ! 裏切り者だよ、坊ちゃん」


「な、何を言ってるんだ? 何かの間違いだろ? 裏切り者なわけない!」


「こんなに嘘をついているのに?」


「ち、違うの! 嘘をつきたくてついたんじゃないわ!」


 泣き叫ぶように彼女は言った。僕は彼女を守るように立ち、背負っていた長剣を握りしめ相手へその切っ先を向けて言った。


「僕は、彼女を信じる!」


「残念だなぁ……信じてもらえないなんて」


 そう言うとおおげさにワンワンと声を上げて泣き始めた。すると黒い衣装を身に纏った護衛が数名駆け寄ってきた。醜悪なそれに吐き気がする。そして、彼女を傷つけたことに怒りが沸々と湧き目の前が赤く染まった。彼女の悲鳴が遠くの方で聞こえる。気がつけば黒服の一人を刺していた。ゴボッと溺れるような音を出して、彼は血を吐き動かなくなった。途端に震えが走り、長剣を地面に落としてしまった。残りの黒服は瞬きする間もなく、僕の両脇に立ち腕を掴んで拘束してきた。配下が殺されたにも関わらず、王冠の人物はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを貼り付けて僕を見ていた。


「やるなぁ、坊ちゃん」


 そう言うと立ち上がり、気に入ったとばかり僕の方へ近づいた。


「危ない!」


「へ? うぁ!」


「キュッ!」


 後ろを振り向くと、黒服の一人がまさに僕の首を刎ねようと刃を振り上げているところだった。すんでの所でそれをかわし周囲に警戒しながら、彼女の方へ向かった。彼女は待っていたとばかりに腕を広げ僕を抱きしめた。心臓が痛くなるほど鼓動が速くなった。


「大丈夫?」


「大丈夫!」


「強がらなくていいから! ここから早く逃げましょう」


 駆け出そうと足を踏み出した時、急に体が痺れて思うように動かせなくなった。かろうじて首の自由だけは許されていたため振り向くと、王冠の人物が気持ちの悪い笑みを浮かべながら先程同様こちらへゆっくりと近づいていた。一つ違うのは目が怪しい青に染まっていること。そして、僕らから一歩分離れた距離まで来ると、大声を上げて言った。


「罪人を捕まえろ!」


「ハハッ!」

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