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第十九話

 あとに残された僕らは、どちらも口を開かず無言を貫いていたが、しばらくした後、彼女の声で静寂は破られた。


「その……ごめんなさい。私が体調管理を怠ったからきっと、天罰が下ったのよ」


「いや、そんなことないよ! 今回のことは仕方ないことだろうし、僕は全然気にしてないよ?」


「そう……」


 そう言うと、口を噤み、泣いて赤くなった顔を隠すように下を向いてしまった。


「おじさんのことだけど……」


 重苦しくのしかかった沈黙に耐えきれず、すぐに話しかけてしまった。内心、焦りながら反応を伺うと顔を上げてこちらをじっと向いていた。それで? と彼女が聞いたため再び口を開く。


「知り合いなの?」


「ええ。調査の度に服が使い物にならなくなるからよく通ってるのよ。マーティンもそんな感じよ」


「へぇ……。おじさんとマーティンさんって兄弟関係?」


「ええ、そうだけど……どうしたの?」


「いや、なんとなく気になって……」


 なんだか気恥ずかしくなって、思わずそっぽを向いた。自分にとっては初めての人だが、3人とも元々知り合い関係にあったと聞いて、申し訳ない気持ちになってくる。ちょうどその時、奥からドタドタと駆け込んでくる音がした。同時に伏せろ! という怒号が飛んできた。顔を伏せると家がミシミシという音をさせ激しく揺れ始めた。先程まで流れていた穏やかな空気が突如としてかき乱された。近くに置かれていたコップは、転がりながら水を撒き散らし、点々と床に染みを作った。奥の食器だろうか。閉じ込められていた物たちが一斉に飛び出し、あちらこちらで割れる音が響き渡った。ようやく揺れが収まり、顔をあげると世界は一変していた。


「あててて……こりゃまた派手にやっちゃったな」


 廊下の途中で伏せていたおじさんが起き上がりはじめに、こう呟いた。続いて、彼女が起き上がり何が起こったのかを確認しようと周りを見渡していた。


「これをした犯人がわかるんですか?」


「あぁ」


 決まっている、といったふうに頷いたおじさんは、静かな怒りを含んだ口調で話し始めた。

これが始まったのは結構前から。おじさんのご両親が存命されていた頃から続いているもので犯人は、異世界人。伝説の都市プラグティアを滅ぼした史上最恐の軍団と記憶されている。特徴としては茶褐色の目を持ち魔法が使えないことが挙げられる……すなわち僕のような者が集まっている軍団なのだそう。それを聞きながら、鳥肌が走った。疑われたら殺されるかもしれないと命の危機を感じたからだ。刹那、彼女がおじさんを制すように手を挙げる。


「たしかに異世界軍はそうだけれどショウは怖がらせないであげて!」


「ん? なんでショウが怖がらにゃならんのじゃ?」


「ショウは、その……」


「黙っていてごめんなさい! 実は僕、異世界から来たんです……」


 彼女が言いにくそうにしていたため、たまらず白状すると目をびっくりするほど見開かれた。そして、そうか、そうじゃったか……とうつむき気味に言われた。


「気を悪くされたなら、今すぐ出ていきますので彼女は、休ませてください!」


「ちょっと、ショウ!」


「お願いします!」


 横にいる彼女の言葉に重ねるような感じで頼み込み、頭を下げるとおじさんにやめちょくれと言われた。目だけ上げると、首を振られた。


「ショウが悪いんじゃないけ、謝る必要はないっちゃ。はよ、顔上げりぃね」


 恐る恐る顔を上げると、おじさんは眉を下げて、すまんかったのぉと謝った。彼女も、ごめんなさい、こんなことになるんだったらもっと早く言っておけばよかったわと謝ったため、とんでもないと首を横に振る。決して二人のせいなんかではなくあくまで自分が悪いのだ。その夜、二人が寝たあともう少し上手く動ければよかったと反省した。

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