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第十七話

 少し間をおいたあと、おじさんは言った。


「まぁええ。嬢ちゃんがショウに言うまだぁ、わしからは何も言えんけぇ」


「はぁ……」


 返事なのか、それとも溜息なのかよくわからないものを吐き、眠っている彼女の顔を見る。彼女が何を隠しているかは知らない。先程、姫君と呼ばれていたことからなんとなく、わかった気がするが完全にはわからない。しかし、いつか時が来たら説明してくれるだろう。


「そういえば、ムートゥンさんってご兄弟はいらっしゃるんですか?」


 先程から気になっていたことを聞いてみた。性格は違えども容姿はほぼ見分けがつかないほど似ているのだ。他人のそら似にしてはあまりに似すぎている。おじさんはうなずき、肯定の意を示した。


「やっぱり!」


「じゃが、性格は正反対じゃ。……もしや、ここに来る前、武器屋に寄ったんか?」


「はい。店主のマーティンさんにムートゥンさんがあまりにも似ていたので、つい」


 そう言い、頭を掻くとたちまちおじさんは顔をしかめ、質問をしてきた。


「怖いことされんかったか? 怒鳴られたり、殴られたり……」


「全然大丈夫でしたよ! 少し怖かったけど暴力は振るわれませんでした」


「そうか、それならいいんやけど……。待てよ、出された飲み物を飲んだん?」


「はい、なんか白い粉を入れられたけれど……」


 それを聞いたおじさんは、驚き僕の肩を掴むようにしていきなり、説教し始めた。


「このバカ! 白い粉を飲んだんか! そんなことしたらいけんじゃろ! もし、体調とか悪くなったらどうするん? 一歩間違えりゃ死ぬ可能性だってあるんじゃけ! もうちぃと自分で気い付けりぃや!」


 この長いものを一息で畳み掛けるように言い終わったあと、おじさんは肩で息をしていた。一方の僕は、掴まれた肩を揺らされて若干吐気がした。説教が終わって大分良くなったが……。やっとのことで息を整えたおじさんはだいたい……と再び小言を言い始めたが、一瞬でその言葉は止まった。


「んー……」


 二人同時に、眠っているであろう彼女を見る。少し、いや大分うるさかったためか小さく声を発しながら伸びをして彼女が目を覚ました。


「ここは……どこ?」


「おお、目覚めたか! ここは服屋、わしゃムートゥンじゃ!」


 目の焦点を合わせるため瞬きをしながら小さな声で言葉を発する彼女。自分が倒れたことをまだ認識できていないのだろう。それに対し、おじさんは少し興奮しながら自己紹介をしていた。後でしてもいいのではないかと思ったが、怒りを買うのが怖い小心者であるため黙っておいた。


「どうしてここに……いるの?」


「君が倒れて、すぐ近くにある建物がこれだったから急いで運んだんだ」


 まるで自慢話をしているかのように胸を張って、説明すると彼女は小さな笑いを漏らし、ありがとうと言った。そしておじさんの方を向き、苦笑しながら言った。


「ムートゥンってば、その挨拶何回目?」


「はは! こりゃ失敬、それにしても別嬪さんやなぁ」


「はいはい」

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