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第十話

「よし! 出来上がったわ!」


 そう言って料理を更に盛り付け始めた彼女。その姿はさながらシェフのようで、砂漠でなければ三ツ星レストランに来たのかと勘違いするところだ。じゅるりと垂れる涎を袖で拭い、テントの前に座って手を合わせようとしたが、思いとどまり、彼女にテント内での食事を提案した。魔物が襲撃する危険性はまだある。もしかしたら近くに隠れているかもしれないため、そうした。

 テント内に備え付けられた机は二人分の料理が置かれただけで余白がなくなるくらい小さかった。向かい合うように座り、手を合わせたあと食べた。口元に料理を運ぶ僕のことを彼女はじっと穴のあくほど見ていて、とても恥ずかしかったが空腹には抗えず口の中にそれを入れた。なるほど、いい感じに焼けていて噛むたびに濃厚な味がしみ出し、時折焦げた部分から香ばしい芳醇な香りが、鼻へ抜け、それが食材の味を引き出すアクセントとなっており、味わえば味わうほど楽しめる料理だ。

 んー! と声を出し親指を立てグッドサインを送ると彼女は嬉しそうな顔をしてやっと食事し始めた。


「ところでさ」


「うん」


「これってなんの肉? を使ってるの?」


「あぁ、それはね……」


 もったいぶった様子でワンテンポ休止し、口に出したのはドラゴンの四文字。思わず、ええ! と大声を上げてしまい、はっと周りを見渡す。

 そんな僕の様子を見てふふふと上品に笑ったあと、説明してくれた。

ドラゴンはこの世界でよく食べられている定番食材で、一時は養殖なんかもされていたらしいがあまりに長生きするため、人間の寿命が先に尽きてしまい、現在養殖をしているところは指で数えるほどしかないこと。そして売られている肉は大抵が野生種であり、捕獲隊が王に仕える兵隊から組まれていること、などなど。

 ちなみに砂漠に生息しているものはほぼいないため、前もってリュックに入れていたドラゴンの干し肉をサボテンの水で戻して、焼いたらしい。


「普段料理をしないから、不安だったけれど美味しいなら良かった!」


「そうなの?」


「ええ。調査で家をよく開けているからまともな料理を作ったことがないのよ」


 それにしても、美味しい。今度、機会があれば教えてもらおう。

 最後の一欠片を口にして、ご馳走さまと手を合わせる。彼女は、まだ食事中であるため、皿洗いをしにいこうと席を立った瞬間、皿は跡形もなく消えてしまった。ちらっと彼女の方を向くと、さも普通のことのように落ち着き払っていた。魔法で作ったものだから期限があるのだろう。そう思い、歯磨きをしに僕は小部屋へ向かった。

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