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第3話 「不可」

 『不可』・・会計の評価。


 ヤバい・・ヤバイ・・・どうしよう?もう諦める?再度挑戦・・いや無理だろう。


 部屋に戻ると同室(今は9~11才用の二人部屋)のちょい先輩がいた。早速、手に持った評価書を見せる。

 「どうしたらいい?」

 「あちゃ~、これは初めて見たよ。・・・そうだね、今聞かれても良い返事が出来ないなあ。もっと上の先輩に聞いたらいいんじゃないかな。」


 ダイ様から言い渡れた仕事。一日机に座り、帳簿とにらめっこ。二時間で音を上げた、数字を見ると眠くなる。それでも三日我慢した、でも・・

 「あなたは、これ(現金出納帳)を書くのに誰よりも『書くのが2倍遅く』『文字や数字を3倍多く間違い』『4倍写す伝票(掛け伝票を記入)が間違って』手持現金と帳簿が違っています。」

 その結果、「あなたに、この仕事は無理と判断します。」


 寮を捜す・・運が良かった、部屋(12才以上用の一人部屋)にいた先輩に相談する。そう、ロングソードをレイピアに変えた先輩に。

 「あなたは、何がやりたいの?・・そうか、では 実際の会計の仕事はいらないのね。だったらね・・」


 次の日、会計の責任者に直談判する。これから何をやりたいのか、何ができるのか、これから何をするのか。結果、帳簿の見方を徹底して教えてもらえる事になった。・・期限付きで・・

 財務諸表、試算表、在庫管理表、出納帳、業務委託契約書、次期業績試算表・・なんとか、ついていけた。


 帳簿を見て、報告書を提出する事になった。


 近年の財務諸表から比較表を作ってみる。どうということはない表だが、これで帳簿を理解していると分かってもらえるだろう。


 結果、『良』。表から理解しているとは思われますが、理解度が分からない。考察があれば、良かった。


 葡萄の出荷報告書を見てて・・何故、年よってばらつきがあるのだろうと思った。作業日誌を持ってきて眺める。

 『ああ、この年は雨が多いね・・そうか天候か、でも天候を変える魔法ってあるけど 雨の度に山全部って無理だよね。

 でも、水が原因かな?山だから流れ落ちるよね?

 気温?・・この年は雨が多いので気温が下がっている、僅かだけど・・・。』


 報告書を出した。葡萄の管理者が呼んだらしく、『優』のハンコが付いていた。

 「そこ(会計)が終わったら、ぜひ山で働いて欲しい。」

 報告書の下に書いてあった。


 次に、配達をしてて不思議に思った事。

 その時は、ジャガイモの収穫をしていた。大勢が掘って道端まで運ぶ、近くなら荷車・遠くなら荷馬車が運ぶ。でも、道は曲がり細い所もあるので、いい調子で回収できる時と中々戻らない時もある。


 それは、開墾時代にさかのぼる。石が多かったり、大岩が出てきたり、木が太かったりすると途端に作業ペースが下がる。この時代は、とにかく人手が少ないので収穫など人手が必要になると応援に行く。それに合わせて畑の周囲を決めていく。畔を造り作業路とするのだ。そのため、畑の形は一様ではなくて道も様々になっていた。


 この頃(9才)になると、魔素から紙代わりの魔素板を造る事が出来るようになっていた。

 白地図を作り、管理棟・寮・ぶどう酒醸造所ワイナリー・集荷所・工房など大きな建物を書き込む。町から来る大きな道路を書き込み、畑の中にある住宅や作業小屋、それをつなぐ道を書き込む。

 魔素板に書くと、折れ曲がった道と点在する小さな村が何処にあるかが分かる。


 次に、集荷所から等間隔の同心円を書き、集荷所から村々を通る道と道に交差する円の場所に作業小屋や『仮設集荷所』を書き込んでいく。

 収穫時には、道端の収穫物を『仮設集荷所』に運び入れる。収穫の作業とは別に、配送専用の荷馬車を編成して集荷所に運び入れる。

 仮設集荷所は、開墾時に使っている大型テントが使えるので無駄にならない。

 道を新たに造るので、畑の区画整理も出来る。

 二重に運搬するので一見無駄に見えるが、収穫は運搬から作業量を決める必要が無くなる。集まった人員で有効に収穫出来るようになるはず。


 ジャガイモの収穫報告書に添付してみた。


 帰って来た報告書に『秀』のハンコがあった。


 別紙に、会計としての評価は、『不可』だが他職での業務なら可能だろう。但し、正確な仕事が出来るか不明なので、本人の今後の課題としそれまでは『可』とする。

 なお、ファームの管理者より、当方に就職するように説得して欲しいと依頼が来ているので考慮していただきたい。 


 これを、同室の先輩に見せると、

 「いや~、一つの部門で『秀』『優』『良』『可』『不可』全部の評価をくれるなんて、アイは(ある意味)すごいね!」


 途中でダイ様に呼ばれる事は無い、終了の評価と一緒に次の指示書が来るからだ。しかし今回は、明日の朝ダイ様の執務室に行くように言われただけ。



 「やあ、久しぶりだね。会計では苦労すると思っていたけれど、意外なやり方で評価を貰ったのだね。そこで、確認なのだが。

 数字や文字の転記ミスは、これからの業務に致命的な欠陥なのだが。どうやるのか知りたい、この工房から来た報告書も関係あるのかな?」

 指輪を作ってもらった、もっともリング台と言われる宝石の無い指輪だが。

 「この指輪です。」

 甲を前に出し指輪が見えるようにする。もとより宝石はついていない、代わりに体内と大気から魔素を集め収束、凝固させていた。その周りに魔素が纏わり付いているので、感知出来るなら怪しい指輪に見えるだろう。

 「その固まりきれていない石?は、魔石かな。」

 「はい、人口の魔石を作っています。」

 「それを・・?」

 「魔物の魔石は、不純物が入ったり魔素の配列が均一ではないのです。そこで、綺麗な魔石を造りそこに情報を念写させます。後で取り出せば、その場で慌てて作業する事が無いと思いました。」

 「なるほど、ところでどこまで修得できたのかな?」

 「魔素からプレートを造り、文字を書くことまでは出来ています。今は、プレート状でなく球体に凝固出来ないかやっています。念写は、現在訓練中です。」


 「そうか、では次の仕事だ。今日、ある行商人がやってくる。かつてフォーレンのスラムの住人で、今はその近くで店を構えている。彼についていって、行商人や店といった商売を学ぶのだ。一緒に戦闘の基礎を教えてくれるだろう。その後の事は、彼の指示に従いたまえ。」

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