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第2話

   

 その信州の家にはクーラーがないのも、東京の家との違いだった。子供の私は「田舎だから文明が遅れている」なんて失礼な考えも頭に浮かべたが、昭和や大正の昔でもあるまいし、電化製品くらいは田舎にも普及していたはず。ただ単に、夏は涼しい土地柄であり、必要なかっただけではないだろうか。

 縁側の障子戸を開けておけば、心地よい風が入ってくる。ただし、風と一緒に虫も入ってくるのが玉に瑕だ。

 カブトムシやバッタならば嬉しい来客だが、そうした昆虫は、さすがに外へ遊びに行かなければ捕まえられなかった。勝手に家に入ってくる虫は、ほとんどが蚊。人間の血を吸う、嫌われ者だった。

 もちろん、家の中には対策も用意してある。例えば、蚊取り線香だ。

 あの独特の匂いを発する、緑色の渦巻き状の物体。漫画やアニメでは何度も見ていたけれど、実物を目にする機会は、信州の家で過ごす夏だけだった。東京の家では、電子蚊取り器を使っていたからだ。

 蚊取り線香だけでなく、蚊帳も初体験だった。私と母が寝る小部屋をすっぽり覆うくらいの、かなり大きな蚊帳だ。

 初めて見た時は、それが虫除けのための『蚊帳』とは認識できず「わあ! 王族か貴族みたい!」と叫んでしまったものだ。それこそ漫画やアニメで見たような、天蓋付きベッド――レースのカーテンが上から垂れているやつ――を連想したらしい。

   

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