6話 最後の使用方法
「へぇ~。ゴブリン討伐の常設依頼で森に来てたんだ?」
常設依頼とは、特に依頼の受付が必要のない依頼でゴブリンの討伐や薬草の採取等がこれにあたる。一応は街の外に出るので新人は受付することが推奨されている。
「そう。最初はゴブリン5匹だから少しきついけどイケると思ったんだけど…途中からゴブリンが増えてきて…ね」
ジョニーは気まずそうに人差し指で頬を掻く。
「まぁ、そりゃ~短時間で一気に倒さないと戦闘音を聞きつけて集まってくるよ」
僕もそう言いながら苦笑する。
「マジシャンがいてたから最初にマジシャンに狙いを定めて〈ファイアアロー〉を放ったんだけど…撃つ瞬間に気付いたマジシャンが横にいたゴブリンを盾にして逃げたのよ!」
ミッシルが杖を上下に振りして憤慨しながら言う。ちなみに、〈ファイアアロー〉とは初級の火属性の攻撃魔法で、矢状になった火の魔法のことだ。
「見てないから分からないけど、詠唱が聞こえて気付かれたのかも?不意打ちをするなら出来るだけ殺気を抑えて詠唱するか、背後を取って一気に斬りかかるのがいいよね」
「あ、…普段ゴブリンマジシャンなんかはみかけないから、詠唱する時に気合が入りすぎたのかも」
「不意打ちの初撃は魔法がいいと思ってたけど…魔法じゃない方がよかったか?」
「それは時と場合によるのだろうけど、殺気を抑える訓練とかした方がいいんじゃない?」
「殺気を抑えるのとかどうすればいいの?」
「晩飯用にとかでホーンラビットを気付かれずに狩るとか?奴等は素早いし意外と気配に敏感だから良い練習になるかも?それと、森で火系統の魔法は止めといた方がいいよ」
そう言うとミッシルは「…そうね」とバツが悪そうにそっぽを向く。
そんなこんなで話しながら帰っていると、思ったよりも早く街までたどり着いた。
門の前でボケっと荷馬車を見ていると、馬と荷車が別れているこという当然のことに不意に気付く。
僕は気付いたことを早くカタチにしたいので、『明日の光』のみんなとは門のところで別れることにして家路を急いだ。
家に帰ってきたアレスは少しポーションを作ってからレニーと晩御飯を摂り、その後先日と同じように地面に絵を描いて、新しい乗り物を考える。
それは前回と同じで【由】のカタチで前輪の部分を独立させて方向転換が出来るようにしたものだ。
どうやって取り付けるかはまだ目途がたってないが、これで曲がることが出来ると考えた。
その後、前輪の左右に軸を付け、上部に伸ばして持ち手を付けることを素案として改めて思案する。
「車輪を挟むように軸を付けて…【由】の上の部分に穴をあけて通すと…通す穴が必要になる?
長方形なら前輪部分が回らなくなるから…途中から1つにまとめて…穴か軸を丸くする必要がある?
とりあえず加工が面倒だから今はどちらか片方だけでいいとして…」
ある程度の案がまとまったのでアレスは一旦乗り物を作ってみることに決めた。
「ベースは中古の廃棄予定の馬車か荷車でも拾ってくるか…」
そう考えると取り合えず前輪だけでも作ってしまおうかと思ったが結局材料がないので明日以降の作業にしようと考え、師匠の部屋に廃棄する馬車か荷車がどこかにないか尋ねにいくことにした。
「師匠、壊れたり使わなくなった、廃棄する馬車や荷車ってどこにいけば手に入れることができます?」
「ん?荷車が必要なのか?壊れた荷車とかも使える部品は取り外して使うし、完全に壊れた部分は薪とかにするから、ないとは思うがトニーに聞いてみたらどうじゃ?」
「あっ、トニーさんか。明日にでも聞いてみます」
よくよく考えてみたら、馬車も荷車もほぼほぼが木か革で出来てるので使えるものは使い回すし、使えないものは#別__最後__#の使用法があるのだと気付く。