5話 冒険者
次の日も相も変わらずアレスは森の中でただひたすらに薬草を探していると、少し離れた場所で戦闘音らしき音を拾った。
アレスが気配を殺して近付くと、3人組の新人らしき冒険者が5匹のゴブリンと戦闘を行っていた。
「(冒険者は)前衛のアタッカーとタンクに後衛の魔術師で、ゴブリンはと…普通のゴブリン4匹に魔術師が1匹で周りに3匹のゴブリンが転がってるのか…」
(3人ともだいぶへばってきてるな。一応聞いとくか)
「おいっ!手助けはいるか!?」
するとリーダーと思われるアタッカーの赤毛の少年が「頼む!」と言い、紫髪の魔術師の女の子が「お願い!」と頼んできた。
返事を聞くや否やアレスは横の木陰から飛び出し、一気に後衛のゴブリンマジシャンの背後に回って剣で右切上に斬りかかり、そのまま目に付く一番近いゴブリンの首に向かって左薙で斬り払う。
その間にアタッカーの男の子が1匹、魔術師の女の子も1匹仕留めていた。残りの1匹は一瞬で状況が変わったことに理解が追い付かなかったのか、戦闘中に棒立ち状態になった隙に背後から蹴りを入れると、アタッカーの男の子の剣に串刺しにされて絶命した。
ちなみにタンカーのくすんだ金髪の少年は攻撃を耐えるのに必死で返事どころではなかったとのこと。
一応、師匠から森でたまに見かける冒険者のパーティーでの戦闘を見学し、自分ならどう動くか考えるようにと言われていたので、今回みたいに少々キツそうな場合に(不意打ちができるので)戦闘に介入することはままある。
アレスは剣の血糊を振り払いながら「大丈夫だった?」と声をかけると、赤毛の男の子が「おう!助かったぜ」と言い、魔術師の女の子には「なんとか。ありがとうございました」と丁寧にお礼を言われる。そして、やっぱり金髪の男の子は消耗が激しかったのか地べたに座りながら息を整えている。
「まぁ、うまいこと不意打ちが決まったし、大怪我とかしてなくてよかったよ」
「俺はジョニーで魔術師のこいつがミッシルで、あそこでへばってるゴツイのがローレンスだ」
「…ローレンスだ。…助かった」
ローレンスは寡黙なのか疲れたからなのか判断はつきにくいが、座りながら簡潔に感謝を述べる。
「私はミッシル。助かったわ。…キミは一人?こんなところでなにしてたの?パーティー組まないの?」
「僕はアレン。ここには薬草取りに来てるだけだよ?一応錬金術師(見習い)なんだけどね」
「えっ?冒険者じゃないの?」
「うん。最近…ってかここ半年ほどだけど…薬草の在庫が少ないのかあまりウチの作業場に回ってこないから僕が採りに来てるんだよ」
一応は辺りに魔物がいないか警戒しながら休憩していたが、そのままここにいても危ないだろうからということで、ゴブリンの討伐証明部位(右耳)を剥ぎ取り、このまま街まで帰ることとなった。
アレスたちは街に戻りながらジョニー達パーティーのことを聞く。パーティー名は『明日の光』らしい。意味は特にないとのこと。
冒険者というのはどこの国家にも属さない組織でS、A、B、C、D、E、F、G、H、Ⅰの10段階があり、基本12歳からGランクとして冒険者ギルドに登録できるのだが、身寄りのない孤児やスラムに住む子供たちの救済措置として8歳以上からHランクとして登録が出来るらしい。その代わり街中の簡単な依頼しか出来ないとのこと。
まぁ、簡単にいうなら個人事業主の狩人や便利屋、傭兵と思えばいいだろう。
Iランクというのは、依頼失敗の多い人や言動に問題がある人間が一時的にⅠランクに降格され、街中の溝掃除や邸宅の庭掃除等のあまり他人がやりたがらない仕事しか出来なくなり、なかなか元のランクに戻れないこと。
そして、思った通り『明日の光』のメンバーは登録したての全員Gランクらしい。