3話 下手の考え休むに似たり
「……学院……か…」と、アレスは自室のベッドで横になりながら来年以降のことを考え始める。
(この2年で貯めた金額が大銀貨3枚。まぁ…1年あれば大銀貨2枚ならなんとかなると思うから初年度の分はどうにかなると思うけど2年目からの分がなぁ…。
学院に通いながら冒険者をするかポーション作りで稼ぐか…。
学院にも戦闘訓練はあるし、魔物狩りの授業もあるのだろうけど…最初の1年目に大銀貨4枚稼げなきゃ退学になるだろうし…)
アレスはどう金策を講じるかを考えていたが思考が学院に通うことを前提としていることにはたと気づく。
(あれ?孤児の自分が学院に通うことを前提として考えてるけど今の境遇でも格別の境遇だよね?
今のまま錬金術を学んでも十分暮らせていけるし恵まれてるよね。
ずっと鍛錬してたから冒険者としてもやっていけ…る?)
ここでアレスは他の孤児とは違い自分の未来に選択肢があることに気付く。
(…っ!今、僕が出ていけば僕のやっていた見習いを他の子にまわせる?
別に僕が出て行っても師匠が次も見習いを取るとは限らないし、僕がいなくなったら師匠の苦労が増える?
ここまで育ててもらって恩返しもせず?)
(あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ~~~っ!)アレスはうつ伏せになり思考を巡らせる。
その翌日、その日は生憎の天気だったためポーション作りを行っていたのだが、前日の師匠の言葉の意図を考え、ポーション作りを失敗しまくって、集中出来なかった。
仕方がないのでその日は作業を止めて、師匠の家に(勝手に)作っている湯あみ桶造りをすることに決め、すべての思考を一旦放棄することに決めた。
木材は(木)桶を作ってるところからそこそこの大きさの木をもらってきて組み合わせてみるも隙間をどうするかで悩む。釘を打っても隙間が出来るので段違いの要領で木を(ほぞつぎ風に)加工し、最終的には接合部分にそこそこの大きさの角材を使用し、強引に隙間ができないように釘打ちする。
木の加工は他のことを考えずに作業が出来るが、少しずつしか出来ないので気が付けばここまで作るのに半年もの時間を要していた。
(あとは、どうやって水を温めるかなんだけど…こればかりは火を使うから師匠に相談するしかないか…)
「師匠ぉ~。湯あみ用にでっかい桶作ったのですがどうやって水を温めればいいと思います~?」
「なんじゃい?最近なんかしてるな思ってたら湯あみ用の桶を作っておったのかのぉ?いくら水を張っても直接火にかければすぐにボロボロになるしのぉ。横にかまどを作って煙突を桶の中に通すかいな?」
「え゛?そのままかまどの上に置いたらダメなのですか?」
「水を張ってる内側はともかく外側は炭になるから歪んでボロボロになるのぉ」
「はぁ…。またなにか考えてみます………」
こうして湯あみ桶作成計画は#暗礁__あんしょう__#に乗り上げたのであった。
翌日、湯あみ桶をどうするかを考えつつ森に向かって走る。
「桶の中に煙突を通すってどうしたらいいのだろ?
結局桶に穴をあける?
煙突自体は椅子として使えるから段差は気にしなくてもいいけど…そこから隙間なく煙突を組める?
素材は…レンガ?」
今日も今日とて結局は思考の渦にハマってしまって目の前まで迫っていた馬車にぶつかりそうになる。
(馬車?なにか考えてたような……。
お?これは…帰りに馬車屋さんに寄って帰るか)
そのままその日もいつも通り薬草を採取し、ホーンラビットとポイズンスネークも獲れ、ホクホク顔で街まで戻ってきて、そのまま作業場に向かわずに車大工屋に向かう。