1話 錬金術師とは?
「ぬが~~~~~~ッ!
なんで毎日毎日俺が薬草採取に森に来てるんだよ!!
薬草採取なんか冒険者の仕事じゃね~のかよッ!!!」
ユーピクスの街から1時間ほどの森の中で一人、アレスは髪を振り乱しながらそんなことを叫ぶ。
アレスは6歳の時に運よく孤児院から錬金術師のレニーのところに弟子入りさせてもらっていた。
下積みとして3年間は魔力制御に勉強、鍛錬に時々雑用をさせられ、9歳のころからポーション作りを教えてもらっていた。
1つのモノがそれなりの品質のモノができるまでは他のポーションの作り方を教えてもらえず、11歳の今、やっとポーション・キュアポーション(下級)・マジックポーション(下級)までの作業を任されるようになった。
そして、ここ半年ほどポーション造りに使う薬草や茸の材料がギルドで品薄になってきているので自分で素材確保に森に来ているのだが、ここ最近冒険者の真似事ばかりをしているので気が立っているのだ。
5年ほど前、アレスは錬金術師の師匠にまずはと、魔力制御のやり方を教わり、剣術の鍛錬と走り込みと勉強を命じられた。
基本的にみんな日々の糧を得るのに精一杯で勉強が出来るだけで恵まれているのだ。
この世の中、識字率がそれほど高くなく、辺境に行けば行くほど識字率は低くなる。
親や周りの人も読み書き出来ないので当然その子供も読み書きが出来ない。
文字の読み書きが出来ないと伝聞以上の知識も身に付かない。
知識がないから日々の糧を得るので精一杯の生活から脱却する方法が分からない。と、悪循環に陥る。
その悪循環からの抜けれるのは次男や三男とかの家業を継がなかった人が冒険者となり成功する以外ほぼない。
その冒険者も持ってきた素材を商会に買い叩かれたり、魔物や盗賊などに襲われて亡くなってしまう人が多いのだ。
錬金術を行うにあたって、魔力を込めながら作業をすると教わったので魔力制御の必要性は分かるが、剣術の鍛錬と走り込みもと言われたときは意味が分からなかった。
聞くところによると、今の状況みたいに素材がない場合は街から出て自分で採りに行くことがあるので、最低限の自衛と逃走ができる体力作りが必要と言われ真面目に取り組んだのだ。
動きながらの魔力制御が思った以上に難しく、最初は日中に剣術の鍛錬と走り込み、そして夜に魔力制御と勉強という日々を繰り返した。
そんな日を1年以上続ければ走りながらも魔力制御が出来るようになり、魔力制御の訓練をしつつ徐々に雑用等もそこそここなせるようになった。
レニーとしては魔力制御はそこそこに、剣術と走り込みの鍛錬も最低限の自衛のためにやらせていたに過ぎないが、アレスが思ったよりも真面目に訓練するものだから「ある程度の鍛錬は出来てるし、近場の森にはそこまで強い魔物もいないから走り込みのついでに森まで採取に行かせてみてもいいかな?」程度の軽いノリで命じてみたが、アレス本人は「いつかこの状況になったら使い勝手のいい専属冒険者のようにしよう考えていたのでは?」と思っていた。
「まぁ、別に給金は給金でくれるからいいのだけど、自分の作業がなぁ…」
お世話になっている家から森まで約1時間。そこから薬草とか茸を探して、作業場まで帰るとなると1日のほとんどが潰れ、自分の作業が出来なくなる。
魔力操作と走り込みは森の往復で出来るているし、今では剣の鍛錬は森の魔物を相手に実践訓練になっているし、別にいいやと考えることを放棄した。