覚醒
痛い、苦しい、辛い。この感覚が無限に繰り返されている。
ゴブリンロードの攻撃を受け、森の奥の方まで飛ばされた俺は現在大量のゴブリンにたかられている。
いまのレベルならゴブリンとの戦闘で負傷を負うことはまずないが、多勢に無勢とはこのことのようだ。腕や足に大量の傷を負い、HPが三分の二も減少している。いずれゼロになるのも時間の問題か。
とにかくこの状況をなんとかしなければと必死に剣を振っているが、ゴブリンの数は一向に減らない。幸い、近接戦闘術スキルが補助してくれるためなんとか残りHPを保っている。
四方八方から飛びついてくるゴブリンを切り落としたり、うまく躱しているうちに経験値がたまり――
――レベルが十になった。
その瞬間、俺の足元から煌びやかに輝く光が渦を巻くように上昇し、俺の頭の先を過ぎた時点で儚く消えていった。これまでに無かった反応だ。
しかし、あまりに美しい光に見とれていた俺は背後からのゴブリンに気付かなかった。気配を察した頃にはもう遅く、ゴブリンは持ち前の刀を振り下ろしていた。
いくらレベルが上がったとはいえ、たった一上がっただけで背後から振り下ろされた刀に反応できるほど瞬発力は変わらない。
俺はそのまま無様に切り落とされ……ることは無く、自分でも信じられないほどの反応速度で剣を振りゴブリンの刀を打ち払った。
奇襲に失敗したゴブリンが驚愕の表情を浮かべる中、俺は剣を左の腰に添えて居合の構えをし、最大の闘気を込めて地面を蹴った。
その刹那、剣が白く輝く光に包まれゴブリンを一刀両断した。
光は着地と同時に消えてしまったが、今の斬撃に恐れをなしたのか大量に集まっていたゴブリンが我先にと逃げ出していった。
俺は状況の理解に時間がかかったが、何が起こったのか確かめるべくステータスカードを見ると、圧倒的に数値が上がっていた。まさかレベルが十になると普段よりもステータス上昇値が多いのだろうか。しかし、異変はそれだけではなくスキル表示欄に目線を移すとレベルが上がっただけなのに二つの新しいスキルが追加されていた。
一つは『敵感知』。文字どうり周囲からの敵意を感知するスキルだ。もう一つは……
「『ライト・オヴ・セイバー』?」
恐らく、先程ゴブリンを真っ二つにした技だろう。しかし、説明欄には何も書かれていない。
もしかしてユニークスキルか、と浮かれている場合ではないことに今更ながら気が付いた。
「あ、あの女の子こと完璧に忘れてた」
不覚である。
約十分前くらいに自分が吹き飛ばされた道を戻りながら思考を巡らせる。
あの巨体のゴブリンロードにどう立ち向かおうか。おそらく少女が今も戦っているだろう、その隙をついてあの技をお見舞いするか。
そんなことを考えているうちに凄まじい衝撃と金属音が聞こえてきた。回転する足の速度を更に早め、全速力で森を駆け抜ける。
すると、目の前に剣を離して倒れこむ少女とそれにめがけて巨大な刀を振り下ろそうとする緑色の巨体が現れた。
俺はとっさに、むしろ冷静に剣を構え叫んだ。
「『ライト・オヴ・セイバー』!!」
輝く光は巨体に吸い込まれ頭と胴体を真っ二つに切り裂いた。