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未来への憧れ

 時刻は午前零時を回ったころ。照明もロクに点けず、真っ暗な部屋の中で一人コントローラーを握り液晶画面を凝視する。

 今日の――正確には前日の昼、久々に外出をして手に入れた新作のオンラインRPGをプレイしていたのだが、六時間ぶっ通しでのプレイは流石に身体が持たなかったのか、どうしようもなく睡魔が襲ってくる。寝落ちする前にやめようと、キャラクターをモンスターのいない安全地帯まで移動させるとメニューを開きログアウトボタンを選択した。

 そのままベッドの潜り、目を閉じる。案外寝付かないなと思っていると、だんだん意識が遠くなっていった――。

 ――目が覚めると、そこは鬱陶しいくらいに白くて眩しい部屋だった。ここはどこだと混乱するうちに、白い服を着た一人の人間がいつの間にか現れた。

「栗林 彗さんだね?」

 突如話しかけてきたその男……見た目から正確な性別は分からないが、多分男性だろう。その男が続けて――

「僕は神様だ。今から君を、ゲームの世界に送ってあげようと思う。」

 ――そんなことを言ってきた。


 少し大きめの金の玉座に、先程自分は神だと名乗った男が座り紅茶らしきものを一口飲み、一服する。

「そんでねぇ、話進めるけど……」

「勝手に進めないでください」

 まだ理解が追いつかないため、話を続けようとする自称神を秒で止めると、今まで湧き出た疑問を吹きかけるように聞いた。ここはどこか、なぜゲームの世界に行かなきゃ行けないのか、そもそもゲームの世界とはなんなのか。

「まあ落ち着いて、一つずつ説明するね。まずここは『天ノ領域(あまのりょういき)』。まあ簡易的に作ったものだけどね、本物は神や天使が沢山いる場所なんだ。君は今日自分の部屋で眠ったあとここに連れてこられたのさ」

 神様はもう一度紅茶をすする。

「次になぜ連れてこられたのか。実は神々の間で、君のいた世界で若くして亡くなった人をゲームの世界に転生させてあげようというプロジェクトが始まっていてね、君はそのテストに呼ばれたわけ。君、ゲーム好きでしょ」

「じゃあ俺はそのテストのためにわざわざあっちの世界を捨てなきゃいけないのか?」

「その心配はない。向こうで死んだらもう一度ここに戻してあげる。その時に戻りたければ戻すよ」

 余裕な表情で人差し指を立てながら流れるように話す神に、俺は更に不安感を覚えた。この男を信用していいのだろうか、目が覚めたら夢でしたなんてことになったらどうしようかと。

 しかし、玉座に座った自称ナントカは俺の不安なんかお構いなしに話を続ける。

「最後に、ゲームの世界についてだけど…ゲームのジャンルはRPG、いわゆる剣と魔法の世界だ。つまり街の外にはモンスターがいて、そいつらを倒すと金と経験値が手に入る。金は働いても手に入るけど、経験値はモンスターを倒さないと手に入らない。経験値をためればレベルが上がり、ステータスが上がる。特定の行動を起こすことでスキルだって手に入る。ここら辺は全部他のRPGと同じだよ。」

 男はいつの間にか空になっていたカップを右隣にある小さな机に置くと、顔の前で手を組んで先ほどより一層低い声で言った。

「でも、一度死んだとき……つまりHPがなくなれば、そこでゲームオーバー。二度と復活出来ない。この世界はただただゲームなのではなく、ゲームのような世界線なんだ。登場する人物やモンスターはすべてコンピューターなどではなく、本物の生物だよ」

 緊張が張りつめた空気のなか、男は腕を玉座にだらしなく置いて今度は明るい口調で声を出した。

「んま、魔王を倒したらなんか報酬も考えとくから……気張ってね」

 いまこの緊張感を台無しにしたあのおっさん、殴っていいかな。

 でも……そんな世界も悪くなさそうじゃないか――

「さあ、どうする?いく?」

 ――俺はもっと自由に生きたい。

「お願いします!!」

 そう言った瞬間、俺の視界はブラックアウトした。

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