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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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その気配の正体は



「どうなってるの?」



 そう、周囲を見回すノアリ。先ほどまで一緒にいた、キャーシュの姿がない。


 キャーシュだけはない、遠巻きに学園を見ていた、人々の姿もだ。ここにいるのは、ノアリとヤネッサの、二人だけ。



「これ……結界だ」



 空を見上げ、ヤネッサがぽつりと呟いた。


 先ほど彼女は、魔力の気配がすると言っていた。つまり、今この場には、魔力の結界が張られている……ということか。


 以前、魔族がこの国を、魔力封じの結界で覆ったように。



「じゃあ……ヤネッサ、魔力は!?」


「……うん、大丈夫だよ。魔力は使える」



 己の手を握りしめ、魔力が失われていないことを確認するヤネッサ。その事実に、ノアリはほっと一息。


 しかし、なぜこんな……



「なんで、私たち以外誰もいないの?」


「……多分、人払いの結界」



 ノアリの疑問に答えるのは、やはりヤネッサだ。


 魔力、結界……この要素から、エルフ族である彼女には思うところがあるようだ。



「人払い……?」


「うん。誰かが、この学園を中心に、結界を張ってる。その中では、関係ない人間は弾き出されてる。

 結界の外と中とでは、見ている空間に若干のズレがあるはず」


「……じゃあ、キャーシュや他の人が消えたのは、いなくなったんじゃなくて、空間がズレて見えなくなってるだけ?」


「そう。しかも、ただ空間をズラしてるだけじゃなくて、外からは学園の中にも入れないように、なってる。相当な魔力の持ち主」


「でも、だったらなんで私たちは、結界の中にいるの?」



 何者かが、結界を張った。関係ない者は弾き出されるというが、それならばなぜ、ノアリとヤネッサはこの場に残れているのか。


 その疑問に、ヤネッサは……



「……結界を張った誰かが、私とノアリの関わりのある人物……ってことかな」



 顎に手を当て、そう答えた。


 ノアリとヤネッサは関わりがあり、関わりのないキャーシュは弾き出された。


 それに、ヤネッサ曰くこの結界を張ったのは、相当な魔力の持ち主だという。



「それって……」


「おぉーい!」



 そこへ、明るい声が届く。ここにはノアリとヤネッサしかいない……と、思っていたが。


 声のした方向へ、振り向くと……



「あ、アンジェ様!?」


「おー」



 そこには、手を振りながら走ってくる、アンジェリーナ・レイの姿があった。


 まさかの人物の登場に、ノアリは目を丸くする。



「はぁ、はぁ……よ、よかった。知ってる方に会えて」



 ノアリの目の前にまでやって来たアンジェリーナは、息を弾ませ、立ち止まる。


 膝に手を当てて、息を整えていた。



「アンジェ様、どうして……」


「はぁ、ふぅ……や、ヤークワード様のことが、心配で、けれど、どうすればいいのかわからなくて。学園に来れば、誰かいるかと、思いまして」



 どうやら、アンジェリーナもヤークワードのことを、心配してくれていたようだ。


 そして、学園に近づき……結界に、巻き込まれた。突然周囲の人間がいなくなったのだ、それは焦っただろう。



「あ、一緒に女子会した人! アンジェリーナさんだっけ」


「お、お久しぶりです。あ、アンジェでいいですよ」



 彼女とは、ヤネッサも面識がある。その頃は、シュベルトもまだ生きていた。平和なときだった。


 懐かしきにおいがする。



「アンジェ様も、結界に巻き込まれた?」



 再会に喜ぶ2人を横目に、ノアリは小さく呟く。


 結界による人払い、結界を張った主と関わりのある者以外は弾き出される。そのおかげで、学園近くまで来ていたアンジェリーナと再会できたが……


 もしかしたら、他にも結界に巻き込まれている者も、いるかもしれない。


 とにかく……



「アンジェも、ヤークを助けるのに協力してくれる?」


「えぇ、それはもちろん! ……シュベルト様の、お友達ですもの」



 ヤネッサの言葉に、アンジェリーナはつらそうな表情を抑え、力強くうなずく。


 予期せぬ仲間だが、心強い。



「なら、行こう!」



 見据えるは、騎士学園。そこに、この結界を張った者もいる。敵か味方か……


 そうでなくても、あの中は敵の巣窟と言ってもいい。いくら、謎の爆発で騒ぎになっているだろうとはいえ、油断はできない。


 それに、結界から周囲の人々が弾き出されたということは、人々の騒ぎに乗じて侵入するという手段も、なくなったのだから。



「……ん?」



 ノアリ、ヤネッサ、そこにアンジェリーナを加えた3人は、息を殺しながら学園へと向かう。この結界の中では、ヤネッサに魔法による誤魔化しを頼んだところで、意味のないことだ。


 かといって、堂々走るわけにもいかず。姿勢を低くしていたのだが……



「あそこ、誰か……」


「子供?」



 彼女らが走る先、学園の正門……そこに、人影があった。それも、小柄な……


 おそらくは、子供だ。


 なんで……



「なんで、こんなところに子供が?」



 同じ疑問を、アンジェリーナも浮かべる。


 この結界は? これからヤークワードを助けに行くのに。不自然に不自然な状況。なんで子供がこんな危険なところに? 時間がない。


 ……それらの疑問がごちゃまぜになり、一番重要な疑問を失念ていた。



「ねぇキミ、ここは危ないから……」



 その子供に、声をかける。……と同時に。


 ノアリは……後悔した。その子供に声をかけたことを。頭の片隅にあった疑問を、そのままにしていたことを。


 ……この場にいる子供が、ただの子供であるはずがないということを。



「……ホッ、なんとも間抜けな、顔つきよの」


「……っ」



 ノアリは、知っている。姿こそまったくの別人であるが……間違えるはずもない、この禍々しいほどの気配を。


 この子供は……いや、彼は……



「……シン・セイメイ?」



 かつて、死闘を繰り広げた……エルフ族の王だ。

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