表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/308

確かな手ごたえ



 俺とクルドは並び合い、魔族に向けて全神経を集中する勢いで、構える。相手は、ひとり……こっちは、2人。人数の差では勝っていても、相手は未だ底知れない魔族だ。


 油断は、できない。



「ヤーク、フォローは我がする。好きに動け」


「じゃあ、遠慮なく……!」



 クルドは、俺のフォローに回ってくれているという。体格差の問題で、俺が好きに動いてクルドがそのフォローに回ったほうが、互いに動きやすいからだろう。


 その言葉に甘えて、俺はその場から駆け出す。思い切り地面を踏んで、勢いを乗せた速度で魔族に向かっていく。


 クルドが後ろを守ってくれる。これほど、心強いことはない!



「はぁ!」


「ふはは!」



 ガギィンッ……と、互いの武器がぶつかり合う。原因はわからないが、先ほどから俺自身の力は、上昇している。これが、魔力だと思われるものなのか……わからないが。


 可能性として、ひとつ……浮かんでいるものがある。魔族の漆黒の剣には、魔力が帯びていた。魔族の攻撃には、魔力が帯びていた。


 それを受けたのが原因で、なぜか俺の体に魔力が、力を与えた……と。



「ぅ、らぁ!」



 ただまあ、そんなことはどうでもいい。魔族を倒せるだけの力があるのなら、それを存分に振るうだけだ!



「そこ!」


「っ、ごぁ!」



 魔族は俺の攻撃を捌くのに精一杯だったのか、死角から現れたクルドに殴られる。俺の正面にいた魔族が横っ飛びに吹っ飛んでいく。


 よし、やっぱり2人なら、戦いを優位に進めることができる!



「ヤーク!」


「わかってる!」



 俺は、吹っ飛んでいった魔族を追いかけるように、駆け出す。そして、追いつき並走……その体へ、剣を振り落とす。


 それに気づいた魔族が、魔力を纏った腕で迎え撃つが……



 ガンッ……!



 鈍い音が響き、俺の剣と魔族の魔力とが拮抗した後……魔力の刃が、折れるのがわかった。


 その勢いのままに、俺は魔族の体を斬り裂く。魔族の体は硬く、簡単に斬り裂けるものではない。


 それでも……



「ぐぅ……!」



 確かな手応えを感じ、魔族が苦痛に声を漏らした。


 そのまま魔族は、地面に転がるように着地して……俺から、距離を取る。しかし、その上空に、クルドの巨体が舞う。


 上空から振り落とされた拳は、それを両手で受け止める魔族を、もろともに地面へと叩きつけた。



「ふー……いける、か……?」



 これまでやられっぱなしだったのが嘘のように、魔族を追い詰めることができている。俺が魔族の注意を引き、クルドが強烈な一撃を与える。


 相手は魔族一体。俺の影もクルドの影も、すでに対処した。


 油断は禁物だが、このまま焦らずに対応すれば……



「ぐ……はは。予想以上、ですね」



 クルドの一撃で押しつぶされても、魔族は立ち上がる。だが……その体には、確実にダメージが蓄積している。


 鎧のようなその体は、所々がひび割れ、ボロボロだ。先ほどまでのような、恐ろしい覇気もない。



「……」



 剣を構え、じっと魔族を見据える。クルドの拳はやはり効いているのか、フラフラの状態だ。


 俺とクルドは、目で合図をして、同時に魔族へと襲い掛かる。



「ぬぅおおおお!」


「!」



 繰り出されたクルドの拳は、全霊を乗せた一撃。片手で受け止められるものではない。


 ダンッ……と耳をつくような音が響く。魔族は、両手でクルドの拳を受け止めている。


 その胴体は、予想通りがら空き! ここに斬り込んで下さいと、言わんばかりだ!



「うぉおおおおお!」



 声を張り上げ、気力を高めていく。これが不意打ちなら、声を上げて存在を明かすのは下の下だが……どうせ俺が仕掛けることはバレているのだ、関係ない。


 体の内から湧き上がる力を、全部剣に乗せろ……!


 我竜の太刀……!



「"竜魔(りゅうま)"!!!」



 ザンッ……!



 振りかぶった刃を、力の限りに振り下ろす。刃は魔族の、硬い体を斬り裂き……致命的なダメージを与えたのだと、確かな手ごたえを感じた。


 その証拠に、魔族の体は……ゆっくりと、倒れていく。



「はぁ、はぁ……」



 今の一太刀で、体の中の力が、全部持っていかれたかのような……脱力感がある。それでも、気を緩めるわけにはいかない。


 その首を、落として確実に息の根を止める……! こいつはこの国だけじゃない、アンジーとヤネッサの故郷まで……ジャネビアさんや、エーネたちまで……



「ぅ……」


「!」



 うめき声……それは魔族のものだ。咄嗟に俺は剣の切っ先を、魔族へと突き付ける。


 そのまま、魔族の顔は俺へと向き……



「は、はは……これは、素晴らしい……一撃、でしたよ」


「……それはどうも」



 正直、魔族なんかに褒められてもまったく嬉しくはないが。



「お前は……いったい、なにがしたかったんだ! 宣戦布告とかいって、国中を混乱に陥れたかと思えば、時間切れだって消えて……また、現れて。それに、ルオールの森林を燃やして、エルフ族を、殺した!」



 結局のところ、魔族はなにがしたかったのか。いろいろ予想はしたが、それが本当かどうかは、魔族にしかわからない。


 それに、戦争だなんだと考えはしたが……それならば、エルフの森を焼く必要なんて、ない。


 その行為は、エルフ族に余程の恨みを持っているのか。だが、ヤネッサを逃がし、こうして憎しみを一身に受ける羽目になった。



「……私の、目的は……初めから、ただ……ひと、つ……ですよ」


「……? 世界征服、ってやつじゃないのか。自分で言ってたろ。それが、今の状況とどう関係が……」



 支離滅裂に見える魔族の行動は、すべてひとつの目的のため、だっていうのか?


 それが、なにに繋がっているというんだ。



「……それより、いいの、ですか?」


「なにがだ」


「ふはは……わかり、ませんか? ここで、これだけ騒いでいるのに……誰も、他の人間が、駆けつけない、この、現状を」


「! まさかお前……」



 いくら国中の人間が避難しているとはいっても、あれだけ派手に暴れれば、誰かしら様子を見に来てもいいはずだ。


 なのに、誰も……人は、見当たらない。


 それはつまり……今、動けない状態にあるということ?



「みんなが……!?」



 あの時と同じか!? 俺の注意を引き付けておいて、別の場所で……!

ちなみに"りゅうま"という技は以前にも一度出しています

が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ