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再びの襲来



 リーダ様の登場により、場の空気は一変した。現在の立場はどうあれ、やはり王族というわかりやすい立場の人間の存在は、人々の目を集める。


 それからはとりあえず、場の雰囲気も落ち着いた。騒ぎ立てていたおっさんはバツが悪そうに、いくらかの取り巻きとどこかに消えていった。



「やれやれ……さて、皆さん。まずはご飯にしませんか」



 朝食もまだだった者たちは、朝食を取ることとする。いくら学園内の食堂で、食料はまだあるとはいっても……今は非常時だ。切り詰めて、食べていかなければならない。


 そういった、食事を分ける係は昨日、ガラド含めた話し合いで決めたらしい。数人の女性が、均等に配分する。



「それにしても皆さん、よくぞご無事で」



 朝食を取りながら、リーダ様が俺たちを見回しつつ言う。ここに来るまでの間、ガラドから大まかな話は聞いていたはずだが……実際に顔を見て、無事を確信したのだろう。


 それにしても……こうして、王族とご飯を一緒に食べている、なんて不思議な気分だ。シュベルトと、前までは一緒だったのにな。



「そういうリーダ様こそ、無事でよかったですよ」



 ガラドの話によれば、発見できたのはリーダ様だけらしい。他の兄弟たちは、まだ見つけられていないという。


 確か、リーダ様の下にも何人か弟や妹がいるんだっけ。未だ、王位継承を争って水面下で動きがあるとか……


 俺にとっては、どうでもいい話だ。



「ひとりで、心細かったですけどね。僕を捕まえた魔族は、どこか行っちゃいましたし……ガラドさんに助けてもらわなければ、どうなっていたことか」


「その、ガラドさんはどこに?」


「他のみんなの、ケアをしてくるって言ってましたよ」


「大変なことだな、彼も」



 敵は、魔族だけではない。さっきのおっさんみたいに、限界が来ればここにいる人たちからも、不満を訴える声は出るだろう。


 こんなとき、ミーロが無事だったらもっと、みんな落ち着かせることができるだろうに。"癒しの巫女"と呼ばれる存在だ、その力は計り知れない。


 今も眠っている人たちは、食事とかは必要ないんだろうか。そのあたり気になるところだが……確認しようもない。


 とりあえずは、様子を見ておくしかない。



「あなたとははじめましてですよね。僕は、リーダ・フラ・ゲルドと言います。一応、この国の次期国王という形になってます」


「我は、クルド……竜族だ。国が大変だというのは、すでに聞いている。今回はそこを、魔族に付け入られることになったようだな」



 国王が亡くなり、第一王子が殺され国中が騒ぎになっていた……そこを、魔族に狙われた。


 もしも、国中がこうまで混乱の渦中になければ、もう少し良い対処が出来ていたかもしれない。まあ、あの魔族がいきなり国内に現れた時点で、どうなっていたかはわからないが。



「……そういえば、捕まえたセイメイはどうしたんです?」



 俺たちがなんとか追い詰め、結果的に拘束に成功したセイメイ。その身柄は、リーダ様がどこかへと連れて行った。


 厳重な管理のため、俺たちにもどこに連れて行ったかは教えてもらえなかったが。



「彼のことならば心配いりません。ちゃんと、捕まえていますから」


「……そうですか」


「それよりも、考えるのは魔族のことですよ」



 ……ま、今この状況に、セイメイのことは関係ないしな。


 一度引いた魔族も、いつ攻めてくるのかわからないわけだし。



「それにしても、話しに聞いたことしかなかったですが、本当に竜族なんてものが存在するとは。会えて光栄ですよ」


「そうたいしたものでもないぞ、我は」


「いえ、それに、こうして我々に力を貸してくれている。それだけで、なんと心強いことか」



 朝食を終え、しばしの談笑。こんな状況だが、あまり張り詰めてばかりもいられない。


 ……それから、わずか数時間後のことだ。



「む……」


「クルド?」



 クルドと、外を見回っていた時だ。周囲を警戒しつつ、歩いていたのだが……突然、クルドの足が止まる。


 そして、額に手を当てて……つぶやいた。



「来た……」


「え?」


「魔族の、気配だ」



 それは、俺が想像していたよりも、ずっと早い襲撃。昨日の今日だ、まさかこんなに早く、魔族が行動を移すとは。


 それにしても、俺にはなにも感じない。やはり、魔族の気配がわかるクルドがいてくれて、よかった。



「クルド、魔族はどこに……」


「後ろだ」


「……え?」


「すぐ後ろに、いる」



 言われて、ゆっくりと振り返る。そこには……顔も含んだ全身を、白銀の鎧に包み込んだ、ひとりの男が立っていた。


 たった数時間前に、見別れたばかりの姿だ。忘れるわけもない。



「魔族……!」


「これは、数時間ぶりですねぇ。またこうして出会えたこと、嬉しく思いますよ」



 こっちは、まったく嬉しくない。もう会いたくなかった……とも、言えないのが悲しいが。


 眠ってしまった、国中の人たち。その眠りを覚ます方法を、聞かなければならない。


 そのためにも、こいつを拘束して無理やりにでも……



「ぬぅん!」


「って、クルド!?」



 警戒を、怠らずに先手を取る……そう考えていたところへ、先に動いたのはクルドだった。まさかの出来事に、俺は反応が遅れる。


 クルドは、肥大化させた右腕を振るう。その拳の先にいるのは、もちろん魔族だ。



 ドォッ……ン……!



 空気を震わせるような、一撃。それをまともに受ければ、ただでは済まない。


 ノアリには手加減した一撃をおみまいしたと言っていたが、確かにあれは手加減だったとわかるほどの、一撃。


 それを……



「……やれやれ、血の気の多い方が、いるようですね」


「っ」



 魔族は、手のひらで安々と受け止めていた。

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