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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第5章 貴族と平民のお見合い

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魔力の痕跡



「魔力の、痕跡?」



 ノアリのにおいを嗅いだヤネッサの言葉。それは、今確認するように言った通り……ノアリから、魔力の痕跡を感じる、というものだ。


 エルフ族とは、魔法を使える種族。魔力を感知する力も持っているし、それ自体になんら不思議はない。


 不思議なのは……



「でもヤネッサ、私はなにも感じないわ……」



 ヤネッサと同じくエルフ族であるアンジーが、なにも感じないということ。同じエルフ族なら、アンジーもなにかしら感じてもいいはずだ。


 それに、もうひとつ……



「魔力って……私、覚えがないわよ?」



 当のノアリ本人に、魔力を放つなにかと接触した覚えがないということ。


 エルフ族に会ったことはもちろん、魔石も……いや……



「あ、学園に魔石があるけど、それじゃないか?」



 ふと、思い出す。学園には、灯りを灯すなどの役割を果たす魔石があるのだ。


 それに、考えてみれば学園にはエルフ族の教師だって何人かいるのだ。その、魔力の痕跡なのではないか。



「だったら、ノアリだけじゃなくヤークからも感じるはず」


「それもそうか……いや、別に俺とノアリは四六時中一緒ってわけじゃないし、同じ人、物と接触してない可能性だってあるだろ」


「あれ、2人って恋人同士じゃないの?」


「こっ……」



 ヤネッサの言葉を聞いて、ノアリが急激に赤くなる。恋人って言葉に反応したのだろうか……初でかわいらしいな。まあ放っておこう。


 それよりも、だ。例えば女子寮にしかない魔石、それに女性のエルフ教員。ノアリしか接触していないものだってある。それを思えば、俺から魔力の痕跡がしなくても不思議じゃない。


 ……というか、恋人って……あぁ、そういえば『呪病』事件のあらましをアンジーがヤネッサに説明した時、ノアリを俺の愛しの彼女って説明したらしかった。そのせいだなまったく。



「恋人じゃないし、万一そうでも四六時中一緒にはいないっての」


「……」


「いたっ、また膝裏……!」



 またも、ノアリから何度も膝裏を蹴られる。抗議してもやめてくれない。


 アンジーも止めてくれないし、なんだってんだいったい。



「それ、まさに女子寮にしかないものかもしれない」


「だ、だろ? だったら……」


「でも、それだけならこんなに邪悪なにおいはしない」



 俺の提示した可能性に頷きつつも、ヤネッサはさらに告げる。ただ魔力の痕跡を感じるだけではない、邪悪なものだと。


 邪悪な、魔力の痕跡……それは確かに、穏やかではない。



「邪悪って、具体的には?」


「うーんなんていうか……すごく、くさい。どぶみたいな」


「え、私そんなにくさいの!?」


「お前じゃねえおとなしくしてろ」



 邪悪イコールくさいの関連性はともかくとして……ヤネッサの言うことが正しければ、学園内、もしくはその周辺……少なくともノアリの接触したどこかに、邪悪なエルフもしくは魔石があることになる。


 妙な気配があれば、俺でも気付けると思うんだが……それに、ノアリと四六時中一緒ではないとは言ったが、組も一緒なら食事もほとんど一緒だ。


 彼女と行動を別にするときと言えば、それこそ寮での生活、それに選択授業くらいのものだ。選択授業とは文字通り、ある科目ごとにどれを選択し授業を受けるか決めることができ、選択した科目により授業内容が違うので、授業を受ける場所も別になる。


 俺とノアリは選択授業は別々だ。だがその内容については、今考えることでもないだろう。別々になると言っても、担当教師はエルフ族ではないし、内容も魔石は使わないものだ。



「こほん。じゃあ女子寮が怪しいってこと?」


「そうなるかもな」



 一応、今一番怪しいのは女子寮だ。俺は立ち入れないし、どんな構造になっているかもわからない。男子寮に入ったことのあるノアリ曰く、女子寮とあんまり変わらないらしいが。


 ならば今度、女子寮に怪しいものがないかノアリに注意してもらった方がいいかもしれない。



「じゃあ、ノアリには怪しいものや人がいないか、それとなく確認してもらおう。まあ今まで実害はなかったんだし、焦らなくても……」


「…………」


「どうしたヤネッサ、黙って」



 ふと、ヤネッサが険しい顔をしていることに気付いた。珍しいな、いつも能天気に笑っているイメージだったが、こんな顔も出来るんだな。


 そんなことを考えていたが……ヤネッサが次に放った言葉は、妙な重みを持っていた。



「ううん、なんというか……あんまり、放置するのは良くない気がする」


「……良くない?」



 そう話すヤネッサは、今までに見たことがない表情をしていた。



「良くないって、どういう……?」


「うーん、魔法には、悪いものもあるんだよ。例えば洗脳とか、人の心を操るようなもの。ノアリちゃんから感じたのは、そういうにおいというか……」



 ヤネッサの説明は要領を得ないが、それでも良くないことが起こっている、というのは理解できた。人の心を操る……そういう類いの、よろしくない魔石が、学園内、いや女子寮にある可能性がある。


 ……そういえばヤネッサには特殊な能力がある、と言っていた。過去、そこでなにが起きたのか映像として見ることができ、においも感じとることができる……といったものだったか。いつでも使えるものではないらしいが。


 『竜王』を探すために、そのよくわからない能力を持つヤネッサに着いてきてもらった。結局その能力が発揮されることはなかったが、帰り道にすぐに俺の家を探し当てたり、今回だって俺を探しに家からここまで来たとのこと。鼻がいいのは、確かなようだ。


 しかし、鼻がいいからってそれがいいものか悪いものかわかるものなのか……だからこそ、特殊な能力なのかも、しれないが。それに、『におい』という点が、アンジーが魔力の痕跡を感じ取れなかった違いかもしれない。



「人の心ね……例えば、どんなのなんだ?」


「人の心を操るなんて高等な魔法、例えエルフ族でも使える者は限られてきます。私も使えませんし……私の知る限りだと、おじいさまくらいでしょうか」



 人の心を操る……それは、とんでもない能力だ。それはアンジー含め、使える者はほとんどいないらしい。


 おじいさまとは、アンジーの祖父であるジャネビアさんだ。彼はルオールの森林に住むエルフ族の村長であり、『竜王』の手掛かりをくれた人物。だが、ここで彼が絡んでくるとは思えない。現に……



「ジャネビア様なら、ずっと森にいたよー」



 こう証言するヤネッサがいる。嘘はつかないだろう。本人の性格もあるし、お姉ちゃんと慕うアンジーの前では特に。


 それにしても、そんな高等な魔法があるのか……アンジーの知る限りってことは、エーネも使えないということになる。勇者パーティーに選ばれる逸材でも使えない魔法、か。


 もっとも、アンジーはずいぶん昔に森を出たから、その間に使える者が増えていてもおかしくはないが……それを言い出せば、きりがない。

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