バイオレンスアンサー・夫 ⑤
ある夜、仲睦まじいかは別として、一つの夫婦が娘が寝静まった頃合いに、ある会話をしていた。その内容はこうだった。
「いやー、とうとう発表されたねー。新元号」
「そうねー」
夫と妻はテーブルに向かい合って座り、
新元号について語り始める。
「割と面白味が無かったね」
「いや、あったでしょ!? ……じゃなくて!! 結構、捻りが利いてたでしょ!?」
早速バイオレンスアンサーを炸裂させる夫に、妻は条件反射的に突っ込んでしまう。
そんな妻を愛しく感じながら、夫は話を続ける。
「それにしてもさ、子供の頃は生きている内に二回も元号が変わるとは夢にも想わなかったよね?」
「そうねぇ……何か、旧ユーゴスラビアの人達の気持ちが解……」
……と、妻が急に両手で顔を被い、黙りこんでしまう。
心配した夫が妻に声をかける。
「……どうしたの?」
妻は一言。
「歳が……ばれる……」
「……誰に?」
ごめんなさい、
あぁ、ごめんなさい、
ごめんなさい。