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1-6.神より与えられし能力、ゲーム強制プレイ


「これが俺の能力だ。対象に強制的にゲームをプレイさせる。ゲームを完全に遊びきり、クリアするまで解放されることはない」


 改めて種明かしをするジン。

 これこそが、彼が神から譲り受けた能力だ。


「なん、だと……ッ」

「もしクリアできずに途中でリタイアした場合。対象の能力を……リセットさせる!」

「能力をリ、リセット!?」


 その内容に驚嘆する悪魔。


「と言うとまさか、我の力を奪おうというのか!!」

「その通りだ。あんたが今プレイしているそれで例えるならばな、上がったレベルを1に戻して、ステータスも初期化させる。

 そこら辺の野ウサギすら倒せないほどクソ弱くしてやるのさ。

 そうなれば、あんたはもう無力だ。この街の自警団でも簡単に倒せるだろう」


「汝は!!」


 悪魔レヴィアタンは、そのままジンの身体に掴みかかろうとした。

 だが、それもできない。コントローラーから手が離れないのだ。


「よ、よくも我をこんな目に……我を、騙したな!」

「『騙した』?それは違う。今はまだ()()()さ。この我ながら度し難いクソゲーに嫌気がさしたのなら、今からでもやめて帰ればいい。まだ間に合う。

 その代わりに、後でもう一度ヒトを襲おうとしてみろ、その時は俺がその場にいなかったとしても、あんたの前には再びこれが姿を現すことになる。

 人を脅かそうとする限り、あんたは絶対にこのクソゲーをプレイしなければならない!」

「ひ、ひぇ……」


 その光景を想像し、悪魔は思わずうわずった声をあげる。

 クソゲーを遊ばされたことによるショックが相当なものだったのだろう。


「さぁ、種明かしもしたところでもう一度選択してもらおう。

 あんたはこのゲームを『プレイするか』、『せずに帰るか』!

 ……慎重に選べよ、今度はちゃんとした()()()だからな。

 一度プレイを始めたら返却は受け付けない。最後までクリアするか、リタイアして能力をリセットされるかの二つに一つだ!」


 ジンの言葉が悪魔を追い詰める。

 剣も交えない。魔術も使わない。血の一滴も流れてはいない。

 だというのに今この場には、紛れもない修羅場が繰り広げられていた。


「先の見えない楽しみを奪うようであまり言いたくはないんだが、もうひとつアドバイスだ。まだこのクソゲーは全体の十分の一も進んじゃいない。

 これからはあの【きめら】なんて遠く及ばないほどの強敵があんたを待っているぞ?」


 親切心か、あるいは『さっさと帰れ』と言っているのか。

 そんなジンの言葉に悪魔はしばらく黙り込み、やがて口を開いた。


「このゲーム、クリアは出来るんだろうな?」

「それは出来る。俺にだって製作者としての誇りがある。絶対にクリア不可なんてものは作らないと誓おう」

「ならば、やってやる!必ずやこれをクリアしてやる!その後のことは覚悟しておけよ矮小なヒトごときが!」


 レヴィアタンは気を取り直し、プレイを再開した。

 悪魔である自分が、たかが遊びなどに音を上げるわけにはいかない。


「なんということはない。レベルだ!

 レベルが上がればステータスも上がる。そうすればあの【きめら】も倒せるようになる。まずは弱い【ごぶりん】を狩ってレベル上げだ。

 そして【きめら】を倒せるようになったら今度はそやつでレベル上げ。

 それを繰り返して可能な限り強くなれば、今後多少強い敵が現れても問題ではないはず!ははは!これは妙案だ!」


 かくして勇者【れう゛い】は城下町の外で、時々現れる強敵【きめら】に怯えながらひたすら【ごぶりん】を倒し続けた。

 しかし。


「な、何故だ!?レベルが3以降まったく上がらん!これではまだ【きめら】には勝てん、せいぜい【にげる】の成功率がちょっとマシになった程度ではないか!」


 もう何体も【ごぶりん】を倒しているはずなのだが、一向にレベルが上がる気配もない。

 これは、何かおかしい。


「それなんだが、レベルが一定値になると弱いモンスターからは経験値が得られずにレベル上げが出来なくなるんだよ。

 弱い相手と戦っても何の経験にもならないってのは現実でもよくあるだろ?」

「いやそうかもしれないけど!?そんな変なところでリアリティを出すなよ!

 モンスターが蔓延る野っ原(のっぱら)で死んだ勇者を何事もなかったかのようにお城で復活させといて今更何いってんだ阿呆ォ!」

「いやぁ~ごもっともだね申し訳ない!」


 小馬鹿にしたようなテヘペロ顔ですっとぼけるジンなのだった。



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