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クソゲーは異世界を救う!~俺製クソゲー強制プレイ。クリアできなきゃ能力リセット!~  作者: tatakiuri
第五話 エルフvs.オークvs.クソゲー ~ソーシャルゲーム編~
38/45

5-4.苦行



        ※※※


 それから7日後。イベント期間の半分が過ぎた。


 オーク達はいつまでもエルフの集落の前でたむろしているわけにもいかず、すでに制圧した他の集落に一時後退していた。

 エルフ達が蓄えていた食糧を横領する形で消費して細々と飢えをしのぎつつ、ひたすらにイベントを攻略している。

 その表情は、一様に死んでいた。

 暗い陰の落ちた眼で、じっとスマホの画面を見続けている。

 指は一定の動作を画面上で延々と続ける。


 【盾の守護者 アイギス】は強い。確かに強い。

 彼女がいればどんなクエストも攻略できるだろう。

 現に彼女を手に入れたオークのほとんどは、【HARDCORE】のクエストも安定してクリアできている。

 ―――だが遅い。あまりにも遅いのだ。

 無敵による強力な防御の代償として、【アイギス】にはほとんど攻撃力はなく、HP削りにははっきり行って役に立たない。

 その時点で一度の戦闘が長期戦になるのは必至のことだった。

 その上、【フェンリル】は3ターン間隔の奥義以外にも通常攻撃を行ってくる。

 いくらスキルと奥義で二度無敵が張れると言っても、通常攻撃までは対応できない。

 そのため徐々に削られていくHPを回復するためのキャラも必要になるが、そのようなヒーラーも得てして攻撃は不得手なものだ。

 防御と回復役を用意するあまりに益々火力不足が助長され、クエストを攻略する効率は落ちてくる。

 一回撃破するのにおよそ30ターン。それまでただ脳みそが壊死したように攻撃、奥義が来たら無敵を繰り返す。

 最早完全な作業と化していた。

 こんなものはゲームでは、遊びではない。


 しかし、それならまだマシな方だ。

 なおさら恐ろしいことに、まだオーク達の中には運悪く【アイギス】を入手できず、リセマラを完了できていない者までいたのだ。

 彼らは一回十分程度のチュートリアルをもう何百回と繰り返している。

 まったく同じ内容の説明を幾度となく聞き続けているのだ。

 彼らには最早今現在において感情というものは存在していない。

 遊びでないならまだいい。

 事ここに至れば最早暗黒だ。具象化された闇である。

 ソーシャルゲームに蔓延する悪しき習慣の一側面が、容赦なくその闇を顕在化させていた。


 誰かが心の中で呟いていた。


「(もういい、力なんて失っていい。誰か教えてくれるだけでいい。

 俺達が、なんでこんな苦行をしなくちゃいけないのか。

 こんなこと、本当はやらなくていいんじゃないのか?誰か教えてくれ……)」


 そんな中だった。

 オークのたまり場となった集落に足を踏み入れる者達がいた。

 エルフ―――へニュだ。

 彼女がジンと(冷やかしについてきた)レヴィアタンと共にオーク達の下を訪れたのだ。


「何をしにきやがった……」


 ついにゲーム以外のあらゆる生命活動を行う気力すら削がれたのか、いつぞやの罵詈雑言もなりを潜め、何の覇気もない声で訪ねるオーク。

 その眼前でへニュは、手にしていたスマホの画面をクルリと見せつけてきた。

 そこに見えるものは、【討伐完了!】の文字と、


【「覚えてやがれ!またてめぇらを喰らい尽くしに来るからな!」】


 という吹き出しと一緒に描かれている涙目をした青い狼の姿だった。


 これが意味することなど、一つしか無い。

 オーク達が戦慄する。

 あれからエルフ達はへニュの提唱する『逆境ワンパン編成』により順調に【フェンリル】のHPを削り、無事完全撃破を達成したのだ。


「うそ……」

「だろ……」


 オーク達のの悲痛な言葉をかき消すように、へニュは宣言する。


「ワタシ達の勝利です!」


 それに、ジンが続く。


「約束通り、あんたらの能力は今しがたリセットされた。これでもう、あんたらオークはエルフには勝てない」


 最後の宣告が虚しく響く。

 敗北を知ったオーク達の胸中に沸き起こるのは、怒りだった。

 自分達オークが、ひ弱なエルフにすら勝てないと言われたことへの怒り。

 そしてそれ以上に、これまで自分達を苦しめてきたソシャゲーという闇の体現への怒りと、それを懸命にプレイしてきたこれまでの努力の全てが茶番に堕したことへの怒りだ。


「ふざけんなてめェ!!」

「どうせみんなハッタリだ!殴れば死ぬんだろうがよォ!」


 暴徒と化したオーク達が一斉に襲いかかってくる。

 その勢いはまるで雪崩だ。三桁もの数の鬼が自分を殺すために向かってくるという光景は見るものにとっては恐怖そのものだろう。

 だが、ジンと、そしてへニュの表情は涼しいものだった。

 一体のオークがへニュの顔を殴りつける。それに続いて、数人のオークが彼女を取り囲み、一斉に彼女に殴打の雨を浴びせた。

 だが。


「すーん」


 彼女には何のダメージもない。

 殴られた身体が僅かに揺れるようなことすらない。


「クソォォーーー!!」

「ホントに力が奪われてやがる!!」


 ぽかぽかぽかぽかと彼女を殴り続けるオーク達。


「まさか本当にあのオークがこんなことになるなんて……。

 まったく痛くも痒くもない」


 ぽかぽかぽかぽか。


「痛くも痒くもないけど……」


 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか。


「うっとうしいよもう!!」


 痛みとは別の部分で耐えきれなくなり、群がるオーク達を薙ぎ払うへニュ。

 彼女よりも倍近く身体が大きい鬼達が、一斉にバタバタと倒れていく。


「グワーッ!」



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