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クソゲーは異世界を救う!~俺製クソゲー強制プレイ。クリアできなきゃ能力リセット!~  作者: tatakiuri
第五話 エルフvs.オークvs.クソゲー ~ソーシャルゲーム編~
37/45

5-3.逆境ワンパン編成



        ※※※



 一方エルフの集落では、寝不足で半ば放心状態のへニュが最後の力を振り絞り、仲間達に説明をしていた。

 今回のイベントの最適解とも言える必勝の攻略法だ。


「まず、必要なキャラは四人。

 一人目はこの強化バフキャラの【戦場の劇作家 ワーグナー】。

 こいつはスキルでパーティ全体の攻撃力を上げられる上に、自分が撃破されるとさらに強力なバフをかけることができる」

「まずは【フェンリル】のHPを削られるよう攻撃力を高めるというわけだな?」

「しかし、この【ワーグナー】自身のステータスは低い。他に攻撃役が必要ね」


 弱いキャラがどれだけバフをかけたところで大した戦力にはならない。


「その通り。で、次のメンバーが【逆襲の剣 シグ】。こいつのスキルは自分のHPが低くなるほど攻撃力を上昇させる【逆境】効果を持つ。

 しかも奥義も現在のHPに応じて威力に補正がかかる。1まで減らせれば補正値が最大になって、全キャラ中最大の火力を出すことができる」

「なるほど、この【シグ】にワーグナーでバフをかけて、【奥義】を発動させ一気に削り切るという戦法だな!」

「いや、しかしそもそもどうやって【奥義】を使わせるの?

 通常攻撃でゲージは貯められるけど、それじゃとても3ターン目の【ラグナロク・バイト】には間に合わない。削る前に全滅するだけよ」


 火力要員がいたところで、その火力を発揮できなければやはり意味はない。


「そこで3人目、【無自覚の扇動者 ディートリヒ】。味方の奥義ゲージをチャージすることに特化したスキル構成をしてる。

 三種類のスキルを全て使えば味方を一人即座に奥義使用可能にできる」

「おぉ!段々と戦法が分かってきたぞ!」

「いや、駄目よ。これじゃまだ足りない。バフをかけて即座に奥義を使用したとしても、【シグ】のHPを充分減らさなきゃ火力が出ない。

 けど、【フェンリル】が都合よく彼だけ攻撃してくれるとも限らないし、かといって向こうの奥義を喰らえば耐えきれない。

 【逆境】を使うためにHPが0になって撃破されたんじゃ元の木阿弥だわ」

「……ということは後一人、【シグ】に【ラグナロク・バイト】を耐えさせる上に、HPを上手く1まで調節できるキャラが要る。それで完成だ」


 バフをかけ、奥義を即座に使用し、高い火力を発揮する。

 あとはもうひとり、その状態へと安全に持っていくことができるキャラが必要だ。


「そう!それがこの【押し付けがましい臆病者 リリ】だよ。味方一人を、撃破されてもHP1で復活させる【根性】状態にする。

 復活前の奥義ゲージとバフはそのまま据え置き」

「…………」

「……す、すごい。おあつらえ向きの完璧な編成じゃないか」

「名付けて『逆境ワンパン編成』!これで実際に難易度【HARDCORE】を突破できるか試してみよう」


 先程説明したパーティを実際に用意し、クエストを開始する。


【BATTLE START!】

【「オレに喰い殺されてェのは、どこのどいつだ……!」】


「まずは3ターン目まで進めて、味方のスキルを一斉に【シグ】に使ってから、【フェンリル】の奥義を受ける」


【必殺技発動:ラグナロク・バイト】

【「オレは大地を震わせ、神をも咀嚼する狼!世界の終わりは今始まった!

  ―――ラグナロク……バイトォ!!」】


 敵の奥義により味方が全滅するが、【根性】状態になった【シグ】が踏みとどまる。


「そして4ターン目、【シグ】の奥義を発動すれば……」


【奥義発動:ソード・オブ・ヴェンジェンス】

【「俺みたいな雑魚も倒しきれんようじゃ、お前さんに生きてる価値は

  ……無ェ!!」】


【8,240,000 DAMAGE!】


【「まだ……喰いたり……ねぇ、ぞ」】バシュゥゥゥ…


【QUEST CLEAR!】

【「ったく、人使いが粗いったらないぜ」】


「「「おおおおおおおおお!!」」」


 エルフ達が歓声をあげる。

 とてつもないダメージを叩き出し、無事【フェンリル】を撃破することに成功した。

 レイドイベント全体で削るべき体力のほんの一部でしかないが、大きな価値のある勝利だ。


「これでこのクエストは安定する。

 まぁ【魔狼フェンリル】はこのゲームでも比較的初期のイベントだってジンさんから聞いたし、その後のイベントじゃこの『逆境ワンパン編成』は対策メタを張られて通用しなくなったみたい。

 けど、このイベントをクリアするだけならこれが一番手っ取り早いはず。

 4ターンでクリアできるしね」

「いける……これならいけるぞ!」

「まずはその四人をゲットするところから始めないとね」

「うん。【ワーグナー】と【リリ】は☆2だからガチャを何回か回してれば勝手に出てくる。

 【シグ】は☆3だから少し出にくいし、【ディートリヒ】は☆4だから中々来てくれないかな。最高レアの☆5ほどではないけど」


 すでにエルフ達にもリセマラの概念は普及していた。


「ということは、まずは【ディートリヒ】が出るまでリセマラか……」

「いや、そうでもないんだよね」

「え?どういうこと?」

「このゲーム、他のプレイヤーをフレンドとして登録できてね。そのフレンドが設定したキャラを一緒にクエストに出撃させられるの」

「……ということは、【ディートリヒ】に関してはフレンドから借りるだけで事足りる。リセマラも必要ないぞ!」

「まぁ、実際は一回使ったフレンドはしばらく再出撃できなくなるから、使い回せるように何人かは持っておいた方がいい。

 必要分揃うまではみんなでリセマラすることになるけどね。けど☆5が出るよりかは確率は高いし、すぐに終わるよ」

「後は、必要な分の育成だけ石を割ってさっさと済ませて、【フェンリル】を全員でタコ殴りにする!」

「よぉしみんなやるぞォ!オーク共よりも早くこのイベントをクリアする!」

「「「「おおー!」」」」


 エルフ達の士気が一気に高まる。

 明確な指針が決まると、モチベーションも上がるものだ。

 一致団結してゲームに取り組む。

 これもまた不特定多数が参加するソシャゲならではの面白さである。と、この場にジンがいればご高説を垂れていたことだろう。


「それじゃあワタシは疲れたからお家で寝る。何かあったら起こしてくれたらいいからね」


 そう言ってその場を去るへニュの後ろ姿が、仲間達にはとても頼もしく見えた。

 さながら歴戦の勇士の如き雰囲気を漂わせていたが、実際のところは一晩中に寝ずに遊んでいただけなのである。

 が、その経験が今は、何百本何千本と矢を射ろうとも得られない貴重な優位性を示していた。

 ゲームであろうと、他者を導くことはできるのだ。



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