5-2.課金!リセマラ!これぞソシャゲ(白目)
ジンの口元が思わず引きつる。
それを余所に、オーク達の興奮は最高潮だ。
「おぉぉぉぉ!すげぇぞ、【虹色石900個】ぉぉ!?これなら十回ガチャが3回以上回せる!」
「いや、でもどうやって買えばいいんだよこれ……」
その疑問の声を待っていたとばかりに、オーク達の方へと声をかけるジン。
「お困りのようだな」
「てめぇヒューマン!!」
「(口汚い罵り)」
「(放送禁止用語)」
「まぁまぁそんな怒らないで、今から虹色石購入の方法についてご説明します」
「だったらさっさと言え!」
そのまま殴り掛かりそうなほどの気迫で催促するオーク。
が、実際に殴りかかることは出来ないのだが。
「虹色石を購入するためには、買う量に対応するリアルマネーを『課金』をする必要がある。ゲームに金を支払うのさ」
「か、『課金』っ?金払え!?たかだかこんな遊び如きに?ふざけんじゃねえよ下らねぇ!」
さっそく反発するオーク達。
というか、まさか課金という発想をすぐさま理解できるというのが驚きだが……。
「おいおいおいおいそれはご無体な発言だろう。
ゲームだって木の股から突然生まれてくるわけじゃない。多くの人間が長い時間と多大な労力、そして金をかけて生み出すものなんだ。
その開発費を精算するためには、実際に遊ぶユーザーが金を払うってのは道理だろうが。
ソシャゲっていうのはインストールするだけならなまじ無料で済む分、その辺の感覚が麻痺してしまうからいけない。
タダで娯楽を提供してもらうなんてのは傲慢だぜ?面白いと思ったんならちょっとぐらいお布施してあげなくちゃ」
「うるせぇ説教垂れてんじゃねえ!!『面白くない』から金払いたくねぇんだ!」
「そもそも俺ら金なんて持ってねぇから課金したくても出来ねぇんだよボケェ!」
ごもっともな指摘である。
「あぁ、そこについても心配はご無用だ。それを考慮して、今回は少し特別なシステムを用意してもらった。金以外の方法で課金を出来るようにしてあげたよ」
「そ、それは!」
「金以外って、一体なんだよ!」
「さっさと言えよヒューマン!」
急かしてくるオーク達のお望み通り、結論を口にするジン。
「能力だよ。あんたらの能力」
「「「「…………は?」」」」
「あんたらの能力をリアルマネー代わりにして課金する。それでガチャを回すんだな。そのかわり課金すればするほど弱くなるけどまぁ大丈夫だろ」
「欠片も大丈夫じゃねえ本末転倒ーーーーーー!!」
「卵が先か鶏が先かの話じゃねえか!それじゃどのみちエルフに勝てなくなるだけだろうが!!」
「(オークのくせに変な喩え持ってくるな……)」
「ちくしょう課金やってられるか、破滅への道じゃねえか!やめやめ!」
課金によりガチャを回すという案は即座に却下された、オークと言えどなかなか賢い連中である。
とはいえ、ガチャを回さなければ【盾の守護者 アイギス】は絶対に手に入らない。
「けど、このままだとほとんどの連中はやっと難易度【EASY】がクリアできる程度だ。HP削りの効率が悪すぎる、イベント終了までに撃退できない。
もう少しキャラを育成すれば上の難易度も攻略できそうだが、それもそれで時間がかかる」
「やっぱり【アイギス】をどうにかして手に入れるしかねえぞ。一体全体どうすればいい……」
途方に暮れるオーク達だったが、そんな中また一人の鬼が声をあげた。
「なぁ……もういっそ最初から全部やり直しちまおうぜ、そうすりゃもう一回ガチャを回せるんじゃねえか?」
「!!!!」
「なに!!??」
「データを削除してインストールし直すんだよ。んで、チュートリアル後に手に入る虹色石でガチャを回す。【アイギス】が出てくるまでそれを繰り返す」
「そうすれば、俺達全員に『全体無敵のぶっ壊れキャラ』が手に入る……」
完璧なプランだ。
「…………うおおおおおぉぉぉぉこれだァ!!」
「どうせほんの数時間遊んだだけのデータだ今更未練なんぞねぇ!さっさと削除して再インストールだ!」
まさに天啓。
オーク達は一斉にこれまでのデータを削除する。
その様子を、ジンは哀れみの眼で眺めている。
「(ついにそこにも到達したか。
―――『リセマラ』。ソシャゲの悪しき風習の一つ。ダウンロード数を稼ぐための苦肉の策。
だが、そいつは悪手だぜオーク共、期間限定イベント中のリセマラなんて」
もう奴らにアドバイスをする必要はなさそうだ。
なんだかんだと言って自分達だけで攻略法を考えるだけの頭はあるのだろう。
ジンはこれ以上この場に留まるのはやめ、エルフの集落へと一度戻ることにした。
オーク達の総意は、強力な防御キャラである【アイギス】を手に入れるという目的に一致した。
だが、それは大きなミステイクだった。
全員が全員同じことを考えるというのは、多様な攻略法が存在するゲームの世界、ことソシャゲの世界においては致命的な過ちだった。
たった一つ編み出された攻略法を誰もが盲信して疑うこともなく使用するその危うさ。
この場で最も大事な助言だけは決して行わないまま、ジンはこの場を去った。




