4-6.ソーシャルゲーム
こうなってしまえば、事態の主導権は完全にジンの手に委ねられた。
「あんたらにはそのゲームをプレイ以下略!」
「な、なんだとぉ!」
「ふざけやがって、そんなことするわけ以下略!」
「以下略ゥ!」
「許否権はない以下略!」
ということで、今更書き記す必要もない定型文を経て、オーク達は止むを得ずジンが召喚したゲームで遊ぶこととなった。
百を超えるオークが揃いも揃って小さな端末とにらめっこしてポチポチタッチしている光景は、中々に不気味である。
ジンに同行したエルフ達が不可解の極みといった顔で聞いてくる。
「ヒュ、ヒューマン。これは一体……?」
ついでにレヴィアタンも興味津々で聞いてくる。
「今回は何のゲームだ?」
その質問への回答ついでに、ジンは自分の手元にもスマホを召喚する。
「エルフの皆さんに説明すると、これはゲームと呼ばれる遊びの一種です。
んで、次はレヴィアタン。これはあんたの大好きなRPGと似たようなものさ。
パーティを組んで敵を倒す。ただ、今度のゲームにはマップを探索してエンカウントするというプロセスは存在しない。戦闘だけをひたすら繰り返すものさ」
「えぇ~?あれこそRPGの醍醐味だろう。それじゃあゲームとしては若干ショボいわけだな」
自分自身それほど多くのRPGをプレイしたわけでもないのに、ハナから決めてかかるレヴィアタン。
「その代わり、パーティメンバーとなる仲間キャラの数は100人以上いる」
「ひゃくにんんんん!?す、すごいなぁそれは!それだとひとりひとりキャラグラフィックとステータス考えるの大変だろう!制作スタッフの苦労が計り知れんな!」
ジンの言葉に俄然大興奮するレヴィアタン。
ついこの間まで街を沈めるとかのたまっていた悪魔が、今はゲームの制作陣のことを心配している。
が、それにジンは複雑な表情だ。
「それなんだが……まぁこのゲーム画面を見てくれ」
そう言ってスマホを差し出す。
そこに映っていたのは、三等身ぐらいの小さなキャラが四人ほど並んでいる画面だった。その一方で、キャラに比べるとやたらと緻密に描かれたモンスターが対峙している。
それを眺めるレヴィアタンの眉間に、じわりと皺が寄る。
「なんか……チープ」
「そうだ。
次世代プラットフォームの作品に比べて、はっきり言ってクオリティは低い。
キャラのステータス自体も、攻撃力と体力、後は固有のスキルが三つしかない。システムそのものはRPGとしては極めて単純なんだよ」
「面白くなさそう……」
「と!一概に決めつけるのもよくない。単純な分遊びやすい。見てろ、ここにある【ATTACK!】をちょいと押すだけで―――」
【「ふん!」】ザシュ!
【「いきます!」】バァン!
【「喰らえェ!」】ドゴッ!
【「いちげきひっさつぅー☆」】きらりーん☆
バシュゥゥゥ…
【QUEST CLEAR!】
【「俺達は……負けない!」】
「と、こんな具合にキャラが一斉に攻撃してあっという間に決着が付く。指一本のお手軽操作でバトルが進むのさ」
「ほぉ~、なるほどプレイを単純化することで遊びやすさを追求したわけだな?
っていうかなんだ今の、キャラのボイスだけやったら気合入ってたな?四番目に攻撃した娘かわいいな、我の伴侶にしてもよいぞ」
「期間限定最高レアのキャラだな。こいつを出すために40万円爆死したヤツを知ってる」
「いやいまなんつった???『40万円爆死』とか聞いたことない単語が飛び出したんだが」
「忘れろ、あんたは知らなくていい……。
ち な み に 俺 は 十 連 で 出 た っ ! ! (ドヤ顔)」
「いや訳わからん発言ばっか重ねてないでさっさと続きを説明しろよ」
「はいはい。っていうことでこいつは、複雑な操作を必要とせず、快適かつ即席なプレイを提供するジャンルのゲームだ。
これを『ソーシャルゲーム』、略して『ソシャゲ』とひとまず呼称する。
今オーク達に遊ばせてるのはそれさ」
「ふむ……」
一見するとどうにも作りがチープに見えるゲームだ。
が、簡単に遊べるという点を意識してみると確かに悪くないかもしれない。とレヴィアタンは判断した。
それに、外面的なクオリティはともかくとして、キャラも個性的なものが揃ってるようだ。
それが100人以上いるとなると、キャラに触れているだけでも面白いだろう。
なるほど、同じRPGにしてもいろいろと毛色の違うものがあるのか。神ゲーからクソゲーまで。
現にオーク達もなんだかんだ言って無心にプレイしている。
が、しかし。
「どうせ汝のことだから、ドギツい罠を用意してるんだろ?」
「そういうこと。さて、これから本題に入るとするか。
さぁオークの皆さんお知らせですよー!アップデートの内容はよくご確認くださいねー!」
再びオーク達へと呼びかけるジン。
「なんだよヒューマン!今【曜日クエスト】とかいうヤツにチャレンジしてるところなのに」
「結構難しいなこれ……【初級】を選んだはずなのになぁ」
折角楽しんでいるところに水を差されて、不機嫌顔のオーク達。
「まぁまぁ。このゲーム、実は今でも(俺の元いた世界で)サービス継続中でな。ストーリーも未完結なもんだから、明確な終わりというものがないんだ。
だからどうすればゲームクリアになるのかはっきりしていない」
「んだとォ!だったら俺達はいつまで経ってもエルフに攻撃できないっていうのか!?」
「ハメやがったなヒューマンの分際で!!」
「話は最後まで聞け!……そこで、今回は俺が特別にクリア条件を設定しておいた。一度ゲームのホーム画面に戻ってみろ。
そこに横長のバナーが表示されているだろう。タップしてみるんだな」
「…………」
促された通りに、ホーム画面のバナーをタップするオーク達。
切り替わったページの先頭には、物々しい姿をした狼のグラフィックが映っていた。凍りついた湖を思わせるような青白い体毛が、見ているだけでも冷たい。
「それこそがあんたらオークにクリアしてもらうもの。
―――期間限定イベント、【襲来!魔狼フェンリル】だ!」




