4-2.戦時下の集落
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かくしてジンとレヴィアタンは魔物オークに侵略されているというエルフの集落へと訪れた。
ちなみにレヴィアタンには正体を知られないようにレヴィという偽名を使ってもらっている。【ゆうしや れう゛い】から取ってレヴィだ。
集落の長である老エルフ(今は他の集落からの生き残りも取りまとめる、エルフ族全体の責任者でもある)とも話をつけ、改めて彼らのためにオークを撃退するという意思を伝えたところだ。
話もついたところで一旦落ち着いことだし、一度集落の様子を見て回るジン。
案内役としてついてきてくれたへニュと共に、立ち並ぶ木組みの質素な家々を見渡す。
「なんだか家の数に対してエルフの数が多いな。生き残った者達が難民になってるんだ。本当に大変なんだな……」
集落の規模はそれほど大きくないようだが、そこに過剰なほどの数のエルフ達がひしめきあっている。
その多くは衰弱しているように見える。中には怪我をしているのに荷運びなどの仕事をしている者の姿まであった。
ジンの言葉に応えるへニュの面持ちは鎮痛だ。
「はい。それはもう、この森中のエルフをここに集めざるを得ませんでしたから。食料の蓄えも全然足りなくて、飢えている方も大勢います」
「……どこかに助けを呼んだりはしたのか?」
「それは勿論。すぐにヒューマンに助けを乞う使者を出しています。ですが、オーク達の襲撃はあまりに早すぎました。
救援ももう数日かすれば到着してくれるでしょう。でもこのままでは、その前に餓死する者まで出てきてしまいそうで……。
いえ、それ以前に今度オークの襲撃があればもう逃げ場はありません。きっと誰も助からない」
「なら……」
ジンは集落の一角に置いておいた馬車の荷台に眼を向ける。
レンビッツから出発する時に、牽引用の馬共々購入したものだ。
ちなみに購入のための資金は、とあるローグライクRPGをクリアした特典として召喚した素材を換金して工面した。
貴重な鉱石やら武器防具やら、馬車の一台や二台を買ってもお釣りが来るほどだった。
「あれに積んである食い物をみんなで分けてくれ。
量としてはまだまだ不足だろうが」
「えっ!?」
予想外の申し出だった。
荷台にはかなりの量の食料が積まれてあった。
穀物や青果、干した肉の類まであった。
「そ、そんな。お二人は行商人か何かではないのですか?
あれは売り物なんじゃ……」
「違うよ。
自分達で食う用の蓄えだったんだが、いや、思いの外量を多く持ってきすぎた。
どの道消費しきれずに傷ませてしまうかもしれないし、誰かに分けられればと思っていたんだ。これはいい機会だ。
あんた達の腹に収まった方があれにも意義があるよ」
「量を多くって、一体……」
戸惑うへニュに、レヴィアタンが応える。
「あれも所詮は農業シミュレーションゲームのクリア特典として、『クリア時点で倉庫に貯蓄してある収穫物』を当面の糧として召喚したものだ。
必要となればまたクリアすればいい。むしろ今度はあの倍は蓄えてやる!」
「?????????」
何を言っているのか訳が分からないへニュ。
「いやいやあれ以上持っていったらそれこそ腐らせちまうだけだって、スコアアタックは今度にしろ。
っていうかレヴィ、そんな説明したってこの子分からないだろう。ポカンとしてるぞ」
「え、えーっと、つまり?」
眼を白黒するへニュ。
「いいから、あれはみんなで貰ってやってくれ。
オークと戦う前の腹ごしらえとしよう」
ジンはへらへらと笑う。
そこには何の打算の類も見えない。(実際彼は何も考えていない)
嘘でも罠でもない。それを実感して、へニュの顔にも笑みが浮かんだ。
「……わ、分かりました!」




