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3-5.飛翔、成層圏



【わざわざこの身を呼び寄せたからにはなんぞ目的があるのだろう。貴様が選べば我は行動する。

 もっとも、出来ることなど一つしかない。敵に大ダメージを与えてさっさと消し飛ばすこと。ただそれだけだがなァ、フハハハハハハ!】


 大口を開けて笑う竜。

 再召喚されるのにプレイヤーの資金をもりもり搾取してくるあたり、こいつは成金の趣味の非常にいい性格をしたキャラなのだ。

 しかも自分を偉そうに見せるため、蓄えた黄金を身体に塗りたくり金ピカにしている始末だ。【黄金竜】の黄金はその実ただの金メッキなのである。

 というか、尊大な話し方がレヴィアタンそっくりだ。若干キャラが被っている。

 ようやく泣き止んだレヴィアタンが、改めて【ファフナー】に伝える。


「そう、我が汝に求むるはまさにそれなのだ。【黄金竜ファフナー】に、破壊してもらたいものがある」

【ほお?】

「《魔界》へと繋がる門だ。この空の上にある。そこまでひとっ飛びしてほしい」


 レヴィアタンの言葉にジンが続く。


「その門とやらがどんな外見なのか確認もしておきたい。俺とレヴィアタンも一緒に連れて行ってくれると助かる」


 それに、黄金の竜は喉を鳴らして笑った。

 ちょっとした城塞か何かと見紛うほどの巨体だ、軽く喉を鳴らすだけでも地響きめいた音響である。


【フフフ、よかろう易い願いだ。攻略者プレイヤーは言わずがな我が召喚者、その命に従う。

 そしてそこな男は実際のところこの召喚の当事者とでも言えるだろう、貴様もまたこの黄金の鱗に触れることを許そう】


 そう言いながら、【ファフナー】はその身体を地面に伏せた。

 このまま身体に乗れということだろう。

 そのお言葉に甘えて、ジン達は張り巡らされた鱗を足場代わりに竜の背中へとよじ登っていく。

 とはいえ、いくら寝そべったとはいえ一戸建ての家ぐらいの高さはある身体だ。背中まで上るのも一苦労である。


「ぅおお……っ。これはもうちょっとしたロッククライミングみたいな気分」

「つ、つらい」


 レヴィアタン共々悲鳴をあげるジン。


【軟弱な。労せずして我が背に乗りたいというのなら、その身を咥え、上に向けて放り投げてやってもよいのだぞ?】

「それはそれで怖いから却下……」


 なんとか登りきり、自分の身体ほどの大きさの鱗に背中を預けるジンとレヴィアタン。

 レンビッツの街からここまで歩いてきた次はロッククライミングとは、さすがに勘弁して欲しいといったところだ。


「なんかもうやりきった感あるけど、むしろこっからようやく始まりなんだよな」

「【ファフナー】。そ……それじゃあ……行って、くれ(衰弱)」

【うむ。せいぜい振り落とされるなよ!】


 そういって、黄金の竜はその翼を羽ばたかせる。

 山のごとき巨体がゆっくりと浮かび上がり、そのまま風のように上空へと舞い上がった。凄まじい速度だ。

 周りの鱗が風除け代わりになって吹き飛ばされるようなことはないものの、地上から一気に離れていくその迫力にジン達は絶叫した。


「うおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!?」

「ひえええええええぇぇぇぇぇっ!?」


 ジェットコースターどころではない。

 ジャンボジェット機のようなサイズの生き物がカタパルト発射されているようなものだ。

 本来なら加速による凄まじい荷重がかかり人間の身体などぺしゃんこになっているだろうが、そんなことはない。

 鱗に塗りたくられた黄金が特殊な力を帯び、肉体を守っているのだろうか。

 意識もはっきりとしている。

 遥か遠くに見えていた白い雲があっという間に間近にまで迫り、ついにはその中へと入って霧の海に包まれ、すぐにそこを突き抜ける。そんな光景が展開される。

 やがて空の青色すら曖昧になってきたところで、竜は上昇を止めその場でとどまった。


【さて、これより上はさすがの我輩も無理だな】

「いやそりゃ無理だろうよ。これってもしかして、俗にいう成層圏ってとこまで来たんじゃないのか?雲が足よりも下にある……」


 ジンとしては絶句するしかない。

 周囲を見渡してみると、地上どころか雲までも遥か下方だ。

 自分の身体は今空にあるのか、それとも空すら突き抜けて宇宙まで到達してしまったのか、それすらも曖昧な領域にいた。

 視界を上げてみれば、太陽が昇っているのにまるで夜空のようだ。直射日光が目に痛い。信じがたい、夢でも見ているかの光景だ。

 とてもじゃないが、元の世界で生きている間にはこんなものお目にかかれなかっただろう。


「いや、やってみるもんだなぁ異世界転生も」


 などと感心している場合ではない。今しがたレヴィアタンに感動して泣くなと説教したばかりではないか。


「門……《魔界》への門はどこだ?」


 まずはそれを見つけなければ。

 眼で見て見つかるような代物なのかも分からないが、とにかく周りを見渡して探してみる。

 と、レヴィアタンがある一点に向って指さした。


「あれだ。通ってきた当人われが言うんだから間違いない、あれが門だ」



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