3-3.クリア特典
まるで自分の発言を待っていたかのように上機嫌に言うジンに、むっとするレヴィアタン。そんな彼女に対し、ジンは説明を始める。
「思い返してみなよ。俺の能力は何もゲームをプレイさせるだけじゃない。あんたのその今の姿はどうやって得たものだった?」
その言葉に、ジンの持つ能力について改めて頭の中で復習するレヴィアタン。
彼女はすぐにジンの言わんとしていることを理解した。
「ゲームをクリアしたら、そのゲーム中のものが手に入る。
………… そ う か ! ! 」
「そう!遥か空の彼方にまで飛べて、異界に繋がる門だろうがぶっ壊せるものを、ゲームの中から拝借すればいいのさ!
いつぞやの台詞をもう一回言うぞ?『ゲームの中ではなんでもあり』だ!」
上空の門を破壊する。そんな目的を達成し得るゲーム内の存在。
レヴィアタンにはすぐに思い付くものが一つあった。
「……あるある、あるぞ!アレだ!ジンほら、アレだよアレ、アレをやらせろ!」
彼女は興奮した様子でジンに催促する。
それに応えて、彼はすぐさま部屋の中に再びゲーム機を召喚した。先程《悪魔教会》の連中に壊されたコントローラーもすでに治っている。
レヴィアタンはすぐにその電源をONし、ゲームを立ち上げた。
他でもない、彼女が昨日から夜通しでプレイしていた神ゲーを再開したのだ。
セーブデータをロードし、フィールドマップ上でキャラをうろちょろと歩かせる。するとしばらくして、敵とエンカウントし戦闘画面に切り替わった。
レヴィアタンは慣れた手付きでコントローラーを操作し、戦闘前の行動選択画面でとある項目を選択した。
その次の瞬間、画面の中にそれは現れた。
巨大な翼を広げる、全身が黄金に輝く巨大な竜だ。
「こいつだ!【召喚獣:黄金竜ファフナー】!!」
※※※※
それからさらに、数日が過ぎた。
悪魔の出現により起きた騒動も今となってはどこ吹く風、破壊された農耕地帯の調査も進み、街中に悪魔が潜んでいないかも調べられた。
が、結局レヴィアタンと名乗った自称悪魔の姿はどこにも見つからなかった。
最終的に田畑を切り裂いた水は地下水か何かが突発的に噴出した間欠泉のような現象であると判断された。
悪魔と名乗った何者かもいたずら目的の奇術の類として片付けられた。
《悪魔教会》なる秘密結社の構成員が街で見つかったということもあり、周辺の市街に対して念のために注意喚起は行われたが、対応らしい対応といえばその程度のものだ。
すでに街の住人達は当時のことなど忘れつつあり、レンビッツは今まで変わらない営みに戻りつつあった。
が、そんな日常の中で人知れず、彼らは行動を続けていた。
市街地からかなり離れた丘陵地帯。
そこは最早丘というよりは山と言っていいほど傾斜していた。
ここまで街から遠いとさすがに開墾の手も届いていないらしく、周囲には田畑も見えない。
遠くを見てみると、何千という人で賑わっているであろうレンビッツの市街地がまるで小指の爪ほどにまで小さくなっていた。
いやはや、ここに来るまでにすでに疲れた。ジンは膝を抱えて息を喘ぐ。
「はぁ、はあ゛~~っ。あーつかれた……ここまでくればさすがに誰かの眼に入るようなこともないか。レヴィアタン、本当にここで合ってるんだよな?」
彼が正真正銘の悪魔レヴィアタンと共にここに来たのは他でもない。
彼女がこの世界にやってくるために通ってきたという《魔界》に繋がる門を破壊するためだった。
「方角的には間違いない。後はこのまままっすぐ空の上まで飛んでいけば、門があるだろう。
ニンゲンの汝や、悪魔の力を失った我にそれが見えるかどうかは分からんがな」
「それでも、まずは探してみる価値はある。レヴィアタン、やってくれ」
ジンに促され、レヴィアタンは一度小さく頷く。
続けて彼女は声高らかに叫び、この世界にいない何かに向かって呼びかけた。
彼女の脳裏には、これまで何度となくモニター上に表示され、何度となく選択してきた戦闘コマンドの項目が想起されていた。
「【特殊】コマンド、【召喚】……。
―――来い、【黄金竜ファフナー】!」




