3-1.悪魔と神の使い
三話の始まりです。
ジンの本来の目的が本格的に動き出します。
神からの使命、すなわち世界を救うための手段とは...
それからジンは、宿屋に戻って全てを話した。
自分が元々この世界の人間ではないこと。
向こうで死んだ後、神と出会い使命を与えられたこと。
そしてその使命をこなすための力として授かったのが他でもない、例のゲームを半ば強制的にプレイさせ、クリア出来なければ罰則を与えるというあの能力だったということ。
「なんという、ことだ……!」
全てを知ったレヴィアタンが頭を抱える。
「多分あんたら悪魔達が以前この世界に来た時に戦った『神の軍勢』とやらは、俺の前任者だろう。同じように神様から力を与えられた異世界転生者か何かだ。
まさか自分の使命に先輩がいるなんて俺も驚きだが……」
レヴィアタンは深刻そうな顔で黙り込んでいる。
他でもない、自分の目の前にいるのはかつての敵そのもの。そして自分はその敵にあえなく敗れた。
これでは昔をそっくりそのまま再現しているだけではないか。と、そう思っているのだろう。
が、ジンとしてはそれに同情するわけにもいかない。
「俺はこの使命を最後までしっかり果たす。頼まれたことなんだからな。
これから、《魔界》からやってくる連中のことを残らず食い止めて向こうに追い返すつもりだ。もしあんたがそれを許さないとしても、そんなの俺は無視する。
レヴィアタンのことはこの街に放り捨てて、俺一人で勝手にやるさ。
まぁ、その時は力を失ったあんたがこの世界で一人でも生きていけるように最低限の保障はするけどな。『責任』はしっかり取るよ、それは約束する」
「………………」
レヴィアタンはやはり黙り込んでいる。
こうあまりに神妙な様子を見ていると、さすがに彼女個人に対してはなんだか申し訳ない気持ちになってくる。悪魔がどうとかは別として。
かといって、彼女が街を滅ぼすことを黙ってみているわけにもいかなかったというのも確かだ。
「だからその……今ここであんたの気持ちを聞いておきたい。俺のことを許せないっていうなら、そう言ってくれていい。
いけしゃあしゃあと敵である自分を匿っていたことが憎いっていうなら謝る。
それにどうしてもっていうなら、あんたから奪った悪魔の力だってほんの少しだけ返してやるよ。あくまでほんの少しだけ、だけど。
凶暴な怪物ぐらいなら楽に退治できるし、傭兵だか魔術師だかとして不自由なく暮らしていくことはできるだろう。
それで手打ちにして、ここでお別れってことにしようじゃないか」
あくまで、彼女達悪魔の敵であるというスタンスは崩さない。
となると、どれだけ譲歩してもこれ以上の提案はジンとしても示せない。
重苦しい沈黙が流れる。どれほどの時間が過ぎたのかも分からない。
静けさにいよいよ耐えきれなくなりそうになってきたその時、ようやくレヴィアタンは小さなため息をひとつ吐いてから小さく言った。
「敗者は勝者に従うものだ。我としては最初から、汝に協力するつもりだった。
力を失ったこの身でもなお出来ることがあるというのなら、如何なる要求にも応じるつもりだ」
「レヴィアタン……」
「っていうかそもそも我、べつに《魔界》とやらに思い入れないしなぁ。他の悪魔のことなんて知ったこっちゃないなぁ」
「あ、そういう感じ?」
話の雰囲気が一気に軽くなる。
どうやら、そもそもこの件はそれほど深刻に考える必要もないようだ。
「どのみち力も失った以上悪魔として生きることも出来んし、汝の言う通りニンゲンの世でニンゲンの真似事でもしながら生きていくさ。
というかだな。むしろ汝こそ我に対する責任を放棄しようとするな、『ここでお別れって』なんのつもりだそんなの通るか馬鹿!」
「うわぁバレた!もうそろそろあんたの面倒見るのめんどくさくなってきたってことを上手く隠そうとしてたのに」
「それも今ので完全に露呈したんだが……」
なんにせよ、これでジンは自らが戦うべき相手そのものである悪魔からの協力を得ることが出来たわけだ。
これは使命の達成において大きな足がかりになる。
「そうかい。それならさっそく悪魔であるあんたの力を借りるとしようか。
改めて質問したいことがいくつかある」




