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2-10.神の軍勢、再来



 路地裏での捕物とりもののことは放っておいて、通りに戻るジンとレヴィアタン。


「いやぁ、無意味なことはなはだしい時間を過ごした。あいつらがさっさとクソゲーを投げてくれるタイプの人間だったのは逆に助かったか。

 まぁ真っ当な人としてはあれが正しい反応だよ、うん」

「あそこまで怒りを露わにするのが正しい反応って……汝の作るゲームはつくづく呪われた代物だな。誰彼構わず遊ばせるなよあんなもの」


 悪魔の割にはなんだか良識的なことを言うレヴィアタン。

 つい昨日まで街を沈めようとしていたのが嘘のようだ。

 なんだかんだと言いながらも失われた力にすでに適応して、あまり物騒なことは考えないようにでもなってきたのだろうか。

 要するに人の節度というものに合わせてくれているのだ。

 だとしたら、その適応力こそさすがは悪魔といったところか。


「分かってるよ。クソゲーなんぞに触れる不幸な者は少ないほどいい。

 ……とはいえだな」


 いろいろ一段落ついたところで、ジンは改めてレヴィアタンに対し聞かなければならないことがあるのを思い出す。

 秘密結社なんぞに時間を取られていなければ、今頃この話も出来ているところだった。


「レヴィア―――いや、この名前もあまり出さないほうがいいか。

 いきなりですまないんだが、あんたにいくつか聞きたいことがあるんだ。

 いや、聞きたいというより、こちらから伝えたいことか」

「なんだ?」

「さっき、あのアホ共が言っていたよな。昔悪魔はこの世界を侵略しようとして、神の率いる軍勢に敗れてそれを果たせなかったって」

「そうだ。まったく忌々しいことだ。もし我に悪魔の力が……」

「あのなぁ、自分が悪魔だとか言うな」


 またしても失言するレヴィアタンに、すかさず耳打ちするジン。


「あー、えーっと。我にれいのあのちから(棒読み)さえ残ってさえいれば、奴らにも一人残らず復讐して、自らの愚かしさを思い知らせているところだ」


 憤懣遣ふんまんやる方無いといった様子のレヴィアタン。


「あー……それは悪いことをしたな。彼らの代わりに俺が謝るよ」

「ん?さっきからなんだジン。汝は何を言ってる」

「多分俺もな、その『神の軍勢』の一員なんだよ」

「………………へ?」


 呆気に取られる悪魔に対し、改めて自分の正体を明かす。


「俺な、神様からある使命を受けてこの世界にやってきたんだ。その使命っていうのが、《魔界》からやってくる魔物達を退け、世界を守ること。

 つまるところ俺はあんたの言う忌々しい敵そのものだったわけだ。

 その、いろいろとごめんね?」


「………………」


 ジンの後ろをひよこのようについてきていたレヴィアタンの足がぴたりと止まる。

 それからしばらくの間、通りを行き交う人の波の中、時間までもが止まったかのような静けさが二人の間に流れた。

 やがて固まっていた時が少しずつ動き出し、無表情だったレヴィアタンの顔にゆっくりと驚愕の色が染み渡っていく。

 大きく開かれた口から驚きの叫喚が発せられる寸前、ジンはその口を手のひらで塞いだ。


「もごぉぉ~~!!」

「あぁもう大声を出すなよこんなところで、周りに怪しまれるだろ!

 そりゃあ、びっくりしたとは思うけど」

「もごごごごご」


 ジタバタするレヴィアタンを懸命になだめるジン。


「こりゃここで切り出す話じゃなかったか?とりあえず詳しい事情はちゃんと話すから、一旦宿に戻るぞ」

「ん~」


 口を押さえられたまま頷くレヴィアタン。

 やはり、これで案外物分りのいい悪魔なのだった。



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