2-7.保護色
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しばらくして、説明書を読み終えた男がゲームの電源を入れる。
モニターにタイトル画面が表示された。
【MEBIUS】
これでもう、いよいよ後には引けない。
画面とにらみ合う男の背中を眺めながら、レヴィアタンがジンに話しかける。
「今回も我がプレイしたあれか?」
「いや、違う。シューティンゲームという違う分野のものだ。
製作は俺だけどね!」
「あ、じゃあ内容はもういいや聞かんわ察せられるわ」
タイトル画面からゲームを開始すると、一面青色一色の画面に何やら珍妙な物体が下からスライドしてきた。
この一面の青色は海を模したマップだ。そしてスライドしてきた物体はプレイヤーが操作するいわゆる『自機』である。
男がうわ言のようにゲーム内の状況を実況している。
「これを私が操作するのですねぇ……おぉ、本当に動く」
男がコントローラーのボタンを押すと、チュコ…という珍妙な効果音と共に自機から点のようなものが発射された。
ボタンを連打する度に、チュチュチュチュコと点も連射される。
「こうやって移動しながら弾を撃って……来た!」
画面上部から敵機のオブジェクトがゆらゆら揺れながら飛来してきた。
それに対し、自機は相手との軸を合わせて弾を連射する。
ボボボ…というSEと共に敵が爆発した。
「やった、倒した!?こうやって敵を次々倒しながら先へ進むのですね。
見ていてくださいねぇ、こいつらの次は貴方様が同じ目に会う番ですよぉ~」
下卑た笑みを浮かべる男に、ジンもさすがに薄気味悪さを感じる。
「うぅわ、いやなゲームの楽しみ方。レヴィアタンはこんなこと言いながらプレイしちゃダメだぞ」
「言わんよ。……汝の作ったクソゲーでなければな!」
自機は次々と現れる敵を撃破しながら、順調に進む。
しかし徐々に出現する敵の数が多くなっていき、やがて……。
「ん、さすがに敵の数が多くなってきましたね。何機かが撃ち漏らして画面の外に消えていった」
チュゴォォ…
自機が爆発した。
「………………え?」
一度画面が暗転し、再び青一色のマップに自機が飛んでくる。
どうやら先ほどの一瞬で撃破されたらしく再スタートになったようだ。少し前の進行段階に戻っている。
「………………」
男Aは今しがた何が起こったのかも理解できないまま、思考を停止してとにかく操作を続ける。
チュゴォォ……
自機が爆発した。
先ほどとほぼ同じ状況でだ。敵の数が多くなり撃ち漏らしが出てきたところで、自機が撃墜される。
そんなことを、訳も分らないまま何度か繰り返し、ついにはリスタートすらしなくなった。
物悲しい音楽の中【GAME OVER】の文字が表示され、そのままタイトル画面にまで戻ってしまった。
イチからやり直しだ。
「!!!!」
男は大慌てで手元にあった説明書を開き、狂ったように読み直した。
「おぉ、ちゃんとこっちからヒントを出さなくても説明書を読み直して見落としがないか探しているぞ。どこかの誰かさんと違って」
「んぐぅ゛ぅ゛!!」
冷やかし半分に笑うジンの背中を、涙目になりながらレヴィアタンがバンバンと叩く。
「いや、本気で怒ったならごめん。謝るよ……」
それはそれとして、男は例の意味不明な現象の原因を説明書の記載から突き止めたようだ。
「そ、そうか、それはそうか!敵だって一方的にやられっぱなしなわけがない。
こちらと同じように弾を撃ってくるのです。それに触れてしまうと、自機が撃破されて再スタートになる。
さっきは撃ち漏らした敵が画面に消える前に弾を撃ってきて、それに当たったということですか!」
そこまでは理解できたのだが、しかし。
「いや、敵の弾なんてまったく見えなかった。敵の弾に当たって撃破されるのなら、その瞬間が眼で見て分かるはずです。
しかし、やはり突然自機が撃破されたようにしか見えなかった。一体何が……」
何か、何か大きなトリックがある。
説明書に記載されている、敵の撃つ弾の画像をじっと見つめる。
そうして、あることに気づいた。
「この敵の弾……青い。背景の色も青……」
導き出された答えに男Aは愕然とし、声にならない絶叫をあげる。
「ほ………………っっっっ!!!!????」
「分かったみたいだな。敵の弾と背景の色が同じせいで、保護色になって完全に見えなくなってしまったんだわ。いやぁ製作中に気づくべきでしたっ、ごめんね!」
「アホぉ~~~~~~~~~~~~~~」
男Aは発狂した。




