2-6.挑戦開始
「あ~あ。始まってしまったか」
レヴィアタンが、男達に対する純粋な同情と憐憫をこめて呟く。
なにせついこの間自分が散々受けた苦しみだ。
今からそれが再びこの場で展開されようというのだ。気の毒にもなる。
「なっ」
「何を言って……」
男達の視線がひとりでに、路地裏のある一角へと向く。
そこには例のゲーム機とモニターが鎮座していた。
今度は本体には二台のコントローラーが繋がっている。
「あんたら二人にはこれからそのゲームで遊んでもらう」
レヴィアタンの時と同じセリフを吐くジン。
これを言った時点で彼の魔術は発動した。もはや二人組に逃れる術はない。
「……この状況で遊べなどと、何を言っている。まずはこの自称悪魔を殺す」
秘密結社《悪魔教会》などと素敵な組織を名乗る男Bは、そのまま握りしめていたナイフを勢いよくレヴィアタンの首に突刺―――さず地面に投げ捨てる。
彼女に対する拘束も解き、そそくさとゲーム機の前に座り込んだ。
「 な ん で だ ! ? 」
「何をしているのですか馬鹿めが!」
そう叫ぶ男Aもおもむろにナイフを捨て、ゲーム機の前に歩み寄っていく。
「身体が……か、勝手にっ」
二人は完全にゲームを遊ぶ態勢になっていた。
自らの意思に身体が動くことに困惑する二人組に、ジンが説明する。
「そのゲームをプレイしてクリアしない限り、俺達には手出しはできない。
プレイしたくないなら、このまま何もかも忘れて帰るんだな。あんたらに出来る選択はその二つだけだ」
「ま、まさかッ」
「こうやって海魔レヴィアタンを打倒したとでもいうのですか……!」
この辺りの察しはいいようで助かる。
「さてなぁ、そんなことあんたらに応える義理はないしな。確かなことは、あんた達は今このゲーム機の前から身動きが取れないでいるっていう事実だけだ。
まぁそこから鑑みて判断してくれ。……さて、どうする?
繰り返すが、別にこのまま帰ってもそれはそれでいいんだぞ?
その代わり、俺達は後でこの町の自警団にとぼけた名前の反社会勢力が潜んでいると伝えるだけだがな。
果たしてあんたらは彼らの眼をかいくぐって活動を続けられるかな?」
レンビッツの自警団は、呑気ではあるが実力は確かだ。
そんな連中に本気で追われることになるのはまずい。
「くそ!」
「遊ぶしかないっていうのですか……」
「そうそう、今回はちゃんと事前説明はしておくか。もしあんたらがこのゲームをクリアできず途中で諦めた場合だ。
その瞬間ここの自警団に、あんたらの存在と現在位置がつぶさに伝えられる。
きっとすぐにでも捕まえにくるぞ」
「なんですと!?」
「それじゃあ遊ぼうが遊ぶまいがどの道同じじゃないか!」
「いやいや同じじゃない、要は最後まで遊びつくせばそれでいいんだ。そうしたら俺達は無抵抗であんた達に殺されると約束しよう。
レヴィアタンもそれでいいよな?」
「え?まぁ、そういう取り決めにするっていうなら我は従うが」
ジンの提案に、レヴィアタンも特に何を考えるまでもなく賛同する。
勝負の賭けに自分達の生命を担保しようと言うのだ。
「めちゃくちゃだ……」
「一体何なのですかこの男は!」
《悪魔教会》は思案する。
やはりこのまま一度この場は離れるか?
たとえこのレンビッツの街で活動できなくとも、別の街に移動してそこに潜めばいい。
だが、この街の自警団は周辺の街とも連携を密にしている。
通報を受ければ他の街に対しても警備を要請するだろう。
隠れられる場所などなくなるかもしれない。
長い思案の末、男Aが意思を固めた。
「私は可能性のある方を選ぶ。このゲームとやらを遊んで、こいつらを始末しようではないですか!」
「(……やってしまったなぁ)」
レヴィアタンが再び頭の中で憐みの声をあげる。
男の応えに、ジンは笑みを浮かべて頷いた。
「よし、それでは挑戦開始だ!ゲームの遊び方は、そこの説明書に書いてあるから安心してくれ」




