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第二話『草むしりとおばあさん』

 カーテンの隙間から入ってくる日の光で俺は目覚めた。視界には見知らぬ天井が広がっている。あぁ、そう言えば昨日、死んだんだ……。

 地球での命日がこの世界での誕生日か。まぁ、肉体がそのままだから、死んだ実感もなければ、生まれ変わった実感もない。


 こんな異常な状況にも関わらず、案外冷静な自分がいることに驚く。まぁ、今やるべき事ははっきりしている。そう、草むしりだ。この世界を生き抜く為、俺に与えられた唯一の手段、それが草むしりだ。


 俺はベッドから飛び降り、その勢いのまま、宿屋の部屋を飛び出し、昨日の草原へと向かった。


 * * *


「さて、やりますか」


 俺は静かに一人つぶやき、腰を屈める。


 大地にしっかりと根付いた雑草達を端から几帳面に抜いていく。抜くたびに聞こえる『スポッ』っという音が地味に癖になる。どうやらこれは、俺の草むしりスキルの発動音らしい。


 スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ


 そうして、黙々と一人でスポッていると、いつの間にか、女神様から貰った麻袋がパンパンになってしまった。そうだな、町に戻って大きな袋でも買ってくるか? でもまだ、三時間しかスポッてないしな〜。


「う〜ん」


 俺が一人で唸っていると、不意に後ろから声をかけられた。


「若いのに草むしりとは感心だね〜」


 その声に振り返るとそこには、腰の曲がった笑顔のおばあさんがいた。


「ありがとうございます。おばあさんは、どうしてここに?」


「あたしゃ、薬草を探しにきたんだよ。娘が風邪をひいてね。雑草の中には体力を回復させるものが混じっているからね」


 おばあさんが優しい笑顔で言った。


「なら、これどうぞ!」


 ひたすらに草むしりを続けた俺のレベルは8になっていたし、スキルレベルは5まで上がっていた。その甲斐あってか、採取した雑草のほとんどに、体力を小回復する効果が付与されていた。中には体力を中回復するものや状態異常に効くものもあるようだ。

 今さらだが、このスキルは採取した植物の効果などもわかるようだ。


「いいのかい?」


 おばあさんが申し訳なさそうに聞いてくる。


「はい、大丈夫です。はやく、娘さんに届けてあげて下さい」


 俺は効果のある草だけを選び、おばあさんに手渡す。


「ありがとうね、何か困ったらここにおいで」


 そう言っておばあさんは、どこかの住所の書いてある小さなメモを手渡してくれた。


 その後、おばあさんの背中が町の方へと消えていくのを見守り、草むしりの作業へと戻る俺。


 スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ、スポッ


 あれ、異世界きてから草むしりしかしてねーな? 


 まぁ、いいや、これはこれで楽しいからね!


 Let's草むしり!!


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