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空も海原も、真っ紅に染めて、全てを焦がし尽くすかのように燃える太陽。そして、まるで疲れたかの如く水平線に沈みゆく。明朝までの暫しの別れだと言って。
俺は今、またあの海に立っている。海も太陽も、あの時と何も変わっていなかった。俺と貴女との上に突然降りかかった別離とはまるで無関係に。それはあまりに無情で、残酷だった。
貴女の指から外された指輪に刻まれた俺の想い。
ーーーUntil I'm becoming for you (貴方に相応しくなるまで)
結局俺は貴女に相応しい男にはなれなかった。
こんな俺と出逢って、貴女は本当に幸せだったと思ってくれるのだろうか。ずっと孤独の中にいた貴女を、俺は少しでも救ってやれただろうか。これが二人に課せられた運命であるというならば、俺が今ここに立つことも或はその課せられた運命の一部なのだろう。
ならば、俺はそれを受け入れよう。
出逢わなければこんな思いをすることはなかっただろう。しかし、出逢わなければ、それはもっと悲しいことだったにちがいない。
すっかり軽くなってしまった貴女を抱きしめ、囁いた。
「もう二度と独りにはしないから」
「知ってるよ」
―――その声をもう聞くことはない。