漫才脚本「迷子のお知らせ」
A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。
コンビ名は考えていないので☓☓としました。
A・B、ステージに上がる。
A「どうも~☓☓です!」
B「よろしくお願いしま~す!」
A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。
A「B君。実は僕、憧れてる仕事というのがありまして」
B「はいはい」
A「デパートとかで、迷子のお知らせをするアナウンスの係の人って、かっこいいと思いません?」
B「(困惑しながら)……思いませんけど?」
A「ええっ。あの、だだっぴろいデパートの中に、迷子のお知らせと言いながら自分の声を隅々まで響き渡らせる権限を持つ、絶対的な力を持った方々ですよ? それをあなたという人は!」
B「どんだけアナウンス係を崇拝してるんだよ。大体、迷子の係の人以外にもアナウンス出来る人はいるんだけど……。まあ、憧れの対象は人それぞれなんで否定はしませんけどね」
A「でさあ、B君を付き合わせるのもちょいとばかし申し訳ないと思うんだけど、迷子のお知らせってのをやってみたいんだよね」
B「ははあ、そういうことですか。A君の頼みをそう易々と断るほど、僕は鬼じゃありませんよ」
A「本当⁉ じゃあ俺に、新車買ってくれない?」
B「それは流石に断るわ! 何だ、人がちょいとばかし寛大な受け答えをするなりつけ上がりやがって」
A「できれば、こじゃれた外車でお願いします」
B「だから、断るって言ってんだろうが。で、これからどうすればいいんだよ。迷子のお知らせ、やってみたいんだろ?」
A「あ、そうそう。そうだった。じゃ、僕が今から迷子センターの人をやるので、B君は迷子を演じて下さい」
B「新車に比べりゃ安いもんだ。やってやるよ」
A・B、それぞれの立ち位置につく。
B「えーんえーん!」
A「お名前は?」
B「ぐすん……B……」
A「よしよし、B君。今からママを呼ぶからね。おとなしく待ってるんだよ。ピンポンパンポーン。迷子のお知らせです。現在迷子センターに、野太い声ですすり泣く成人男性が一名……」
B「待て待て待てっ! 何で俺、大人として扱われてるわけ? 迷子って普通、子供だろうがよ!」
A「きっと世知辛い世の中にもまれ続け、人生の迷子になってしまわれたのでしょう」
B「人の話を聞け! いいか? 俺としては今、子供を演じたつもりなの。付き合って欲しかったら、お前もその体で話を進めろ。わかったな?」
A「はいはい、わかりました」
B「えーんえーん!」
A「よしよし、今からママを呼ぶからおとなしく待ってるんだよ。ピンポンパンポーン。迷子……うーんんっんっ! 何か声の調子が……んーっ! よし、まずは発声練習から。いや、その前にのど飴を……あ、先輩お疲れ様です! この間の合コンはすごく盛り上がりましたね。特に、王様ゲームで僕と可愛い子が……むふふ」
B「アナウンスかけっぱなしで何やってんだよ! 今のくだり、全部デパート内に垂れ流しになっておりますが!」
A「え、マジで? ……何てこった。俺の個人情報が、常日頃から機械を通して筒抜けになっていたというのか」
B「お前、普段からそんなことやらかしてたらクビになるぞ! そろそろちゃんとアナウンスしやがれ!」
A「はい、努力します」
B「えーんえーん!」
A「よしよし、今からママを呼ぶからね。ピンポンパンポーン。迷子のお知らせです。現在迷子センターで、お子さんをお預かりしています。服装は、頭に白い三角の奴に白い着物姿。えーんえーんと、夜な夜なすすり泣いております」
B「それ、幽霊じゃねえか! 何で迷子センターに幽霊迷い混んじゃってんだよ」
A「多分、成仏できずにさまよっちゃったんじゃないんですか? 広い意味では迷子ですね」
B「だからって、迷子センターには来ないだろうがよ。次こそは、次こそはきちっと決めようよ」
A「よし。俺、頑張る!」
B「えーんえーん!」
A「よしよし、今からママを呼ぶからね。ピンポンパンポーン。現在迷子センターで、B君を預かっております。返してほしければ、逃走用の車と、身代金一千万円を用意するように」
B「てめえ、それ誘拐じゃねえか! てかさ、デパート内に誘拐したこと知らせてどうすんだよ。馬鹿じゃねえの?」
A「警察に通報した場合、お子さんの命はないと思って下さい」
B「いや、絶対バレバレだから。てか、下手したら非番のお巡りさんとかデパートにいるんじゃないですか?」
A「なお、B君はAに対し、ピカピカの高級外車を購入してあげるように。以上」
B「どさくさに紛れて変なこと要求してんじゃねえよ! もういいよ」
A・B「どうも、ありがとうございました~!」