大地からのプレゼント
手の中のペットボトルが弾かれ、勢い良くぶっ飛んだ。
キャッ!
驚いたアコエルの声が、ポン太の耳元に届く。
首を反らし、ポン太は見失ったペットボトルを眼で追った。
自分の後ろ、遊歩道を挟んだ向こうにそれは飛ばされていた。
見ると、植え込みの樹の根元に不時着している。
『バッカ野郎!』
ポン太は、あわてて駆け出そうとした。
こんな場合、のんきに笑ってる奴はいない。急いだ方がいいに決まっている。
しかし、あわて過ぎるのはいけない。きっと、よけいなオマケが付くからだ。
ポン太はいきなり立ち上がって、脚がもつれた。そして思いっ切り転んだ。
転んで額を地面に強打した。
その額の下に、たまたま犬のフンがあった。
プレミア級の、よけいなオマケである。
言い切ってしまえば、犬の散歩は排便タイムである。出しちゃったら、後は知らない。
後ろ脚で砂を巻き散らしてさようならだ。
公園の片隅で誰がヘッドバッドしても関係がない。
「クソーッ!」
その怒り方は非常にリアルで正しい。そして、少しばかり虚しく聞こえる。
ゆっくりと倒れたポン太が首をもたげた。
その額に……、
プツッ…
……只今、画像が乱れております。しばらくお待ち下さい……
さて、その眼に映し出された光景は、眼を疑う状況だった。
ペットボトルが樹の根元にある。
なぜだかボールが仲良く寄り添っている。
そこまでは、偶然にあり得る話だ。
しかし、余計なお客様もそこにいる。
犬である。一匹の犬がペットボトルの水をペチャクチャなめている。
季節は初夏。犬だって喉ぐらい乾く。だからペチャクチャする。
その行為が他人の寿命を左右しても、知ったことではない。
『アイツだなぁ〜っ』
額の犯人のことである。
なぜ、ポン太がその犬に容疑を掛けたのか?
ポン太は自分にしか解らない重要な証拠を握っていた。
なぜなら、額がホカホカと生温か……、
…プツッ
………只今、音声が乱れております。しばらくお待ち下さい……
しかも強烈な悪臭が、…
…プツッ
…只今、音声が乱れておりますが、聞き流してください。
さらに、もうしばらくお待ち下さい……
排便したてに間違いな……
…プツッ
……只今、…ちょっとお待ち下さい…
コラッ! イイカゲンニシロ。 ウンコバッカリチュウモクスルナ!
……大変に失礼いたしました。正常に再開させていただきます……
ペットボトルに駆け寄って拾い上げた。
犬はポン太の形相に眼をむき出し、哭きながら逃げ出して行った。
ゲッ!
ほとんど空になったペットボトルを手に途方にくれるしかなかった。
「ウワァ!」
すぐ側で子供の叫び声が上がった。
ボールを握った少年が泣きながら遠ざかって消えて行った。