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ちょっと死神  作者: 青尾ウニ
3/16

死神の願いって、変だろ

 

ギェーッ!


ポン太が悲鳴を上げていた。


「な、な、何で?」


「今ごろ驚かないでくれる。さっきから何度も言ってるじゃない、私は死神だって」


「影が無い!影が!」


「そんなこと知ってるわよ。影なんか無くったって、何にも困んないから、気にしないで」


そんな風に言われて、ハイそうですかとはならない。


絶対に気になる。


ポン太は影があって得したことは過去に一度もない。


実際、何かの役にたった記憶もなければ、影を褒められたこともない。


はっきり言って、いらない。


しかし、いくらいらない代物でも、捨てるのに困る。


ひょっとしたら隅っこぐらい燃えるかもしれないが、燃えないかもしれない。


そうなりゃ[燃えるかもしれないゴミ]である。


残念なことに、そんなゴミ袋は今のところ無い。


そんな訳で、影の無い奴は絶対に記憶どころか、地上にはいない。


「死神が何の用だ?」


世の中には知らない方が幸せなことだってある。しかし、ビビったポン太はうっかり聴いてしまった。



「あなた、死神が道をたずねたり、回覧板持って来たりする?」


「ひょっとしたらあるかも…いや、たまにはあるだろ」


「あなた22になったんだよね」


「いや、それは表向きの年で、ホントはきっと違う気がする」


 

誰が見ても完全に泳いでいる眼というのは珍しい。


「毎日が暇で、うんざりしてるでしょ」


「あの、そう見えるかもしれないけど、実は忙しい」


「たとえば?」


「え〜っと、毎日、世界の平和を祈っている。そうだ、世界平和を祈っちゃう」


言い切った後、ポン太は死神の顔を覗き込んだ。


「……。あなた、恥ずかしくない?」


「……だって…」


ポン太は、仔犬のようにしょんぼりとうなだれた。


「じゃあ、覚悟を決めてくれる?」


「嫌だ!」


「あなた、生きてても何んにもいいことないよ」


「絶対に嫌だ!」


「彼女だっていないし、お金だって無いし、きっと未来は真っ暗よ」


「大きなお世話だ」

 

「ワガママな人ね。だからモテないのよ」


「関係ないだろ、そんなこと!」


「なによ、私がこんなに頼んでるのに」


「…頼む!?」


その瞬間、死神が手のひらで口をふさいだ。


「今、頼むって言ったよな」


死神は肩をすくめ、ポン太の腕の辺りをたたいた。


「ハハハッ」


そして、屈託のない笑い声を上げていた。


「笑ってごまかすな。どう言う意味だ」


「バレちゃったなぁ、あなたが22で終わりって言うのは冗談だよ」


「冗談!」


「そ、冗談冗談、ほっといたら、いつまで生きるか解んないわ」


「じゃあ、ほっといてくれ。けど、何で現れたんだよ?」


「だから、頼んでるじゃない」

 

「俺に死んじゃえってこと?」


「そっ」



「……。バカ野郎! 他人に頼まれて死ねるか!」


「そこをなんとか、お願いっ!」


死神がポン太に両手を合わせていた。


「なんで俺なんだよ?」


「すごく暇そうだったから…」


手を合わせたまま、死神は固く眼を閉じている。

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