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喜劇前線地帯  作者: 遊楽
8/8

第八話


ここは少年のクラス。今は、四時間目が終わったところ、昼休みになる。生徒達は、授業から解放され思い思いに昼食をとっていた。そして、少年は少年の親友である男の子と一緒にいる。


 僕は自分が着ている学生服のポケットをあさっていた。


少年

『…財布がない?』


 いくらさがしてもないので、仕方ないと思い、友に助けを求めてみる。


少年

「ごめん、お金忘れたんだ。今度かえすから、…貸して?」


男の子

「…今日も忘れたのかい?」


 男の子はあきれ顔で言う。少年は当たり前みたいに返事した。


少年

「うん」


男の子

「そんなに当たり前みたいに返事しないでくれよ…。だいたい、前の分をまだ、返してもらってないよ。」


そう僕は親友に前の分をまだ返していない。


少年

『このままだと貸してもらえないな。

こっちは腹をすかしているのに…』


少年

「僕達の友情はそんなものかい?」


男の子

「友達なら、お金返してくれ」


 親友はいじわるだった。…いや、貸してくれそうにないのはあたりまえかもしれない。…仕方ないと思う。


少年

「‥‥‥沙夜ちゃんにおまえのエロ本の隠し場所を言うぞ」


男の子

「‥‥なっ‥」


少年

「…言うぞ」


男の子

「‥‥大和。‥‥それは反則だよ‥‥」


 彼はぶつぶつ言いながらも、僕に貸してくれた。


少年

『ありがとう、和磨。もつべきは友達だよ』


男の子

「しかし、また弁当を作ってもらわなかったの?大変だね…」


少年

『そんなことないさ、和磨が貸してくれるから』


 そう心の中で言う。

 中学に入学して、もう一ヵ月になる。これまで、朝、一度たりとも母さんにお弁当を作ってもらったことがなかった。


少年

「…まあね。だけど、もう慣れてるよ」


少年

『…そう、僕は慣れている』






 昼飯を食べおわり、教室で僕は彼とのんびりしていた。


男の子

「そういえば、今日はまだ大宅さん来てないね」


少年

「どうせ、また遅刻だよ。もうそろそろ来るんじゃないか」


 案の定、廊下を一人の女の子がかけてくる。あいつだろうわかった。


ドタドタッ!!

 ガラッ!!


女の子

「おっはよ〜!!ヤマトくん!!!カズマくん!!!」


 …テンション高めの元気すぎる声が僕の耳に入ってきた。


少年

「おはよう、ひよ」


男の子

「もう、こんにちはだよ…大宅さん」


女の子

「あはははははは!!そうだよ、ヤマトくん!!もう、こんにちはの時間だよ!!」


少年

「いや、おまえだろ!!」


 なんか僕が遅刻したいに言われた。まあ、こういうやりとりは毎度のことだがムカツク。あと、笑い声も勘にさわる。


男の子

「こないだと同じで、寝坊なの?」


女の子

「寝坊じゃないよ〜!!今日はちゃんと起きてたも〜ん!!」


少年

「じゃあ、ちゃんと時間どおりに来いよ!!」


 彼女はよく遅刻するし、理由が嘘や、でたらめばかりだ。 

たしかこないだは…

『目が覚めると、全然知らないところいて、まわりには背が小さい銀色の人達いたの!!

いわゆる宇宙人って人かな!?あはははは!!

それでまた眠くなって、起きたら、家のベットにいたんだよ!!不思議だよね!!?だよね!!!?』だ。

でも、僕に言わせれば、彼女の頭のなかのほうが不思議だった。

そして今回は…


女の子

「だって〜!!ママが、『一人じゃ、淋しい』って言うんだもん!!」


少年

「どういう母親だよ」


女の子

「どういう母親だろね〜!!あははははは!!」


少年

『‥‥‥でも、叔母さんならありえるな』


今回は嘘でもなさそうに思える。彼女の家族は彼女がこれだから、家族も変わっている。もちろん、一番変わってるのは彼女だ。


女の子

「ママといえば、今日は伯母さんの誕生日だね!!お祝いしにいくね!!!」


男の子

「へぇ〜、そうなんだ」


大和

「おまえ、よく覚えてたな」


 うちはごく普通の一般家庭なのだ。しかし、母さんは知り合いが多く、誕生日はその人達がお祝いをしにきたり、お祝いの品を送ってきたりしてくれる。一様、用意はするのだが、何も言わなくてもご馳走なども持ってきてくれる。だから、毎年、父さんはケーキを僕はプレゼントを買う。


女の子

「だって〜!!ママが『今度の姉さんの誕生祭、貢ぎ物は何にしようかしら』って悩んでたも〜ん!!!

…あっ!!わたしもちゃんと貢ぎ物を用意したから安心してね!!!」


大和

「たっ、誕生祭!?貢ぎ物!!?!…てか、何を安心するの!!!?」


彼女はまた意味のわからないことを言う。しかし、叔母さんが僕の母さんをすごい敬ってたのは知っていた。けど、そこまで神聖視してたなんて知らなかった。


少年

『貢ぎ物って、これじゃ母さんまるで…女王さま…いや、神様だ。』


男の子

「やっ、大和のお母さんって教祖様だったのか!?じゃあ、大和は…神の子!!!?」


こいつはこいつで何か勘違いをおこしている。普通はあのバカが言ったことなど、信じてはいけないのをわかってない。ただの誕生日だというのに…。


少年

『何が神の子なんだ』


僕は軽くため息をつく。


大和

「僕は人間の子だ」


女の子

「えぇーーー!!?嘘だ!!!!」

大和

「テメェが嘘だ!!!」


僕は彼女を強く睨んで黙らせると、彼にとてもわかりやすく説明してあげた。ただの人の誕生日だと、僕の母さんは人だと。数分間の説明と僕の努力で、彼は理解してくれた。


男の子

「…よかった。じゃあ、大和は『人』だから、お金はちゃんと返してくれるんだね」


大和

『…言わなければよかった』


そう思い、僕は後悔した。横で彼女がうれしそうに笑っている。…ムッ、ムカツク。ちょうど、その時チャイムがなる。


女の子

「じゃあねぇ〜!!またねぇ〜!!ヤマトくん!!!カズマくん!!あはははははは!!」


彼女はムカツク笑いを残し去っていった。『また』などごめんだ。


男の子

「誕生日楽しみだな」


彼はうれしそうに言う。いつのまにか、なぜか彼も来ることになっているみたいだ。まあ、なんにせよ祝ってくれるならありがたいかな。しかし、本当に楽しみだ。母さんは喜ぶ顔をしてくれるかな…。僕はそれから授業中、今日の母さんの誕生日を思い一人にやけていた。

もちろん、まわりの生徒が、僕を白い目で見ていたことも知らないで…。







…今日もいつもと変わらない学校の一日のはずだった



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