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喜劇前線地帯  作者: 遊楽
5/8

Vol.5 =new morning=

…出会いとは不思議なもの。意図的にせよ、偶然にせよ、お互いに何らかの感情を生み、つなげる。 …あの方はあの少年に出会い、どんな感情をもたれたのだろう‥‥?







…雀が鳴いている。大和の部屋にはカーテンの隙間から、日差しが差し込んでくる。そして、扉が静かに開く。


大和

『‥‥うっ‥うぅ‥‥す‥‥せん‥…。

 ‥‥なんで‥僕‥‥おどされ‥‥‥』


夢をみていた。うれしそうな笑みの少女が、僕を精神的に陥れる夢だ。


「大和君…、おきてください…」


大和

「‥‥うっ!!‥‥ん‥‥」


 薄い光が入ってくる。僕は静かに薄く目を開いた。目の前には、さわやか顔の男が、僕を起こすために僕の体を揺らしていた。


大和

『‥‥‥。

 …誰だ?…この男は?』


 そう思いながら、いつも起こしてくれる父さんに言っている暴言を吐く。


大和

「…うるさい、…死ね」


「うわっ……事前にわかっていたとはいえ、かなり傷つくな…」


男は少し傷ついような顔をする。だが、僕は無視して、再び目をつむる。まだ、目覚ましはなっていないはずだ。

男はため息をつき、懐に手をいれた。


ゴリッ


「あと三秒数え終わるまでに、起きてくださいよ」


3‥‥、2‥‥、1‥‥‥


大和

「…って!!?うぎゃぁーーー!!!」


ガタタッ!!


僕はベットから、緊急回避。床に転げ落ちた。金髪の男が拳銃を懐になおしている。


「まったく、お寝坊さんですね」


 男の顔はさわやかでうれしそうな『笑顔』だった。


大和

「殺す気かぁーーー!!!?」


「ん〜、場合によってはそうなりますね」


 僕の心臓は破裂しそうなほど、驚いていた。だか、男は何も悪気がない顔をする。


大和

「てか、おまえ誰なんだ!!?どうして、なぜ僕の名を知っている!!?」


目の前の男など知らない。僕の友人にも、知人にも、親戚にだって、こんなやつを見かけたことなど…


「俺ですか?俺はお嬢様専属のボディーガードの中村 レイですよ。覚えてないんですか?ほら、昨日の夜から、一緒に同居をはじめたじゃないですか。大和君の名前を知っているのは、お嬢様があなたのプロフィールを見せてくれたからですよ」


瞬間、さっきまで見ていた悪夢が、現実の話だったことを思い出し…、


大和

「そっ‥‥そうだった‥‥たしか、一緒に」


 僕の顔が暗くなり、僕の気持ちが、絶望という名の沼に沈んでゆく。


レイ

「あぁ、落ち込まないでくださいよ」


大和

『‥‥こいつは人の気も知らないで‥‥』


レイ

「ちゃんと生活費は払いますから」


大和

『‥‥‥そこを落ち込んでるんじゃないだろ(怒)』


 眠気がすっかり覚めた頭を動かし、時計をみる。…五時四十八分。…はっ、早すぎる。


大和

「まっ、まだ一時間は寝れるじゃないか…!!?僕の至福の睡眠時間を返せぇ!!!」


レイ

「いや〜、お嬢様の命令ですから」


大和

『やつの差し金か!!?』


 そう…、やつとは、昨日突然、家にやってきた危険ガールのことだ。きっとこの命令も、うれしそうな笑みをして、だしたんだろう。


レイ

「『どんな手を使っても確実に起こせ』『二度寝するなら永眠させてやれ』と言われていますんで、起きてください」


僕は主人に忠実で、一般市民を朝から襲ってきたクソ野郎を強く睨めつける。…が、それ以上はもちろん恐いので、素直に言うことを聞き、リビングへ朝食を作りにおりていく。気分は最悪だ。一階の洗面所で顔を洗う。鏡に映る僕の顔は疲れているようだ。リビングに行くと、リビングはもとどおりだった。ガラスはちゃんとはめられており、壁に銃であけられた二つの穴さえない。


大和

『…いつのまに』


 実は、大和が寝ているとき、幸の手配でガラスも、壁の壁紙も、きれいに補修されたのだった。ガラスはすべて防弾ガラスに変えられたのだが…。



 僕は朝食をつくろうかと思い、キッチンをみるとセミロングの女の人がいた。たしか、春菜という名前の人だ。


春菜

「…おはようございます、大和さん…。…朝食は作らせていただきましたが、めしあがられますか…?」


大和

「えっ?あっ、はい…」


…正直驚いた。まさか、朝食をつくってくれているとは思ってもいなかった。しかし、全身黒スーツにふりふりエプロンはどうかと思うが…。


春菜

「…とりあえず、テーブルに座ってお待ちください…」


大和

「あ…はい…」


女の人の手料理食べるの久しぶりだ。いつも、父さんのしょっぱい料理か、コンビニで買ったものだったから、少しうれしく思った。

だが、ここでふっと気付く…


大和

『‥‥‥そういえば、やつの姿が見えない。どこにいったんだ?』


 辺りを見わたしても、やつの姿がなかった。僕は気になり、春菜さんに聞いた。


大和

「あの、‥‥やつ‥‥じゃなくて、‥‥‥さち‥‥はどこに行ったんですか?」


春菜

「…呼び捨てで、名前を言われるなんて、そんなにも仲がよろしんですね…」


大和

『…この人は、昨日のどこをみたらこんなことを言えるんだろう』


春菜

「…用事があると言われ、早朝にお出かけになりましたよ…」


大和

「そうですか」


 僕は内心、安堵の気持ちでいっぱいだった。以外と平穏な日々が過ごせそうだと。


しばらくすると、僕の前には純和風の朝食が用意されていた。


大和

「…おいしそう」


レイ

「春菜さんの作る料理に、まずいものなんてないですよ」


いつのまにか、レイが隣で朝食を食べていた。


大和

「おまえいつから…!?」


レイ

「さっきからいましたよ」


大和

「いや、いなかっただろ!?てか、さちのボディーガードしなくていいのかよ!?」


レイ

「いや、お嬢様強いですしね。今日はめんどくさいし、ゆっくりしたいからいいかな〜っと思って…」


大和

『こいつ、ボディーガード失格だよ…』


 レイは『何も心配いらない』という顔をして、朝食を食べている。


レイ

「食べないんですか?」


大和

「…あぁ、食べるよ。いただきまーす」


メニューはご飯に味噌汁、鮭に、漬物だった。まずは、味噌汁からだ。


大和

「…うまい」


完璧を思わせた。旨味、具の火通し加減。なにより、父さんの作る味噌汁よりしょっぱくない。鮭も、うまかった。焼き加減は申し分なしだ。漬物は………市販だった。


大和

「うまい、うまい♪」


箸が快調なペースで進む。そんな様子をじっと見る人がいた。視線がすごく気になる。


大和

「‥‥‥あの‥‥、おいしいですよ…」


春菜

「…そうですか…」


なおも、こちらに視線が伝わり続ける。僕の箸は、だんだんと動きが遅くなる。


大和

『‥‥食べづらい』


そしてついに、箸が止まる。すると、レイが驚いたように小声をかけてきた。


レイ

「…大和君、死ぬ気ですか!?…春菜さんは食べ物に対して、とてつもなく厳しい人なんですよ。‥‥‥残したりしたら、殺されちゃいますよ‥‥!!」


自分の耳を、今の言葉を疑った。


大和

『…殺されるって、どういうことですか!!?』


ふっと春菜さんのほうを見る。こちらを睨め付けて、右手に包丁をしっかりと握っていらっしゃる。それを見た僕は急いで、残りの朝食を口にかけこむ。


大和

「‥‥ごっ!!‥‥‥ごちそうさまでした‥‥」


春菜さんの殺気らしいもの徐々になくなった。


大和

『寝起きも…、食事も…、命懸けでしないといけないなんて、やっぱり、今の僕に平穏な日々なんてあるわけないよな‥‥』


僕は深いため息をつき、皿を春菜さんに渡し、出掛ける準備をしはじめた。


レイ

「どこにいくんですか、大和くん?」


大和

「バイト。…昼飯はあるもの使っていいから、適当に食べといてよ。」


春菜

「…何にもないのにですか…?」


大和

『…やばい、また春菜さんの機嫌が悪くなってる』


 春菜はどこからだしたか、ナイフらしきものを持っている。


レイ

「春菜さん、買いに行けばいいじゃないですか」


大和

『レイ、ナイスフォロー♪』


しかし、レイが大和にフォローなど考えるはずがなかった。レイは冷たいオーラがでている春菜に、ポケットから何かを取り出し渡した。


レイ

「ほら、一万円札ですよ。さっき、机の引き出しの中で見つけたんですよ」


大和

「…って!!?それ俺のへそくりぃぃぃーーー!!!?」


 しかし、もう大和には手出しできなかった。一万円札は、春菜にわたってしまったからだ。


春菜

「…じゃあ、つかわさせてもらいます…」


大和

「…いや…、‥‥あっ、あぁ‥‥うぅ‥‥」


何も言い返せるはずがなかった。レイは生活費は自分達で払うと言っていたのに、たぶん、忘れているようだ。


大和

「‥‥‥(涙)。‥‥バイトに行ってきます‥‥」


 大和は、自分の一万円札に別れを告げ、家をでた。







 …その後、この一万円はおつりさえも大和には戻ってこなかったらしい




to be continued

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