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喜劇前線地帯  作者: 遊楽
4/8

Vol.4 少年の過去 (あの日の始まり)


…あなたは今でも僕を見てくれているでしょうか?


…あなたが言っていた強さを僕は手に入れたのでしょうか?


…あげたかったよ、あなたが好きだったマスコットのキーホルダーを‥‥‥。


‥‥‥母さん。






少年

『‥‥‥。

…ゆれている

…まだ、そっちに行きたくない‥‥』


「…起き‥‥だ。‥‥校‥‥遅刻す…ぞ‥‥」


少年

『‥‥‥うるさい。

…なんだこいつは。

…ムカツク』


そして、僕はまだ重い体をゆっくり起こし、鋭い眼光で自分の父親である男を睨めつけ、口を開いた。


少年

「…うるさい、バカ」



まあ、いつもの朝だ。こうやっていつも、父さんが起こしてくれる。


父さん

「と…、父さんにむかってバカとはなっ…なんだ!!」


感謝はしている。父さんが起こしてくれなきゃ、いつも遅刻だ。たが、やっぱり朝起きるのがとてもつらい僕には、僕を起こすやつがむかついてたまらない。僕はすごい目つきをしながら、ベットからおりる。


父さん

「…母さんを起こしてくれ」


父さんは少し引きつった顔をしながら言った。一緒の部屋で寝ている父さんが起こせばいいとも思えるのだが‥‥‥。これは、父さんには無理な話だ。僕の低血圧は母さんからの遺伝。母さんの低血圧は僕と比べても次元が違う。言うなら、超低血圧…。そして、母さんをおとなしく目覚めさせることができるのは、今のところ僕だけだ。


少年

「‥‥‥わかったから、むこう行ってくれる。いつまでもいられるとうざいよ。」


父親

「‥‥‥。」


ごめんとは後で思うのだが、これは遺伝なので仕方ない。

そして、僕は制服に着替えはじめた。制服は少し大きい。母さんが大きくなるといって、少し大きめの制服を選んだのだ。着替え終わり、上着をもつと目覚めの悪いメスライオン(母さん)を起こしに行った。


母さんは幸せそうな寝顔をしている。


少年

「はぁ‥‥」


ため息をつくと、僕は母さんの肩を揺り動かした。


母さん

「…ん‥‥」


少年

「母さん朝だよ…。起きて…」


ビュッ!!

ピタッ!!


母さんの鉄拳が僕の顔面スレスレで止まる。これが父さんなら、顔面に受けとめて鉄拳が止まる。そしてさらに、『死ね』や『クズ』など、とうてい一児の母とは思えぬ言動と、暴行を加えて部屋から追い出すだろう。その時には、心も体もボコボコだ。

鉄拳には慣れたとはいえ、驚くものは驚く。まあ、それで毎朝、僕の頭が完全に目覚めるが…。


母さん

「‥‥大和。…もう朝…?」


少年

「…そっ…そうだよ」


母さん言わく、僕に起こされるのはとてもさわやかに目が覚めるらしいが、どう見てもとても機嫌が悪そうにしか見えない。


少年

「…早くおりてきてよ。朝飯食べよう」


母さん

「はぁ〜いぃ‥‥」


僕は母さんを置いて、リビングにおりていった。キッチンでは父さんが朝食をつくっている。母さんが料理が下手というわけではない。父さんが、ある日の朝、機嫌が悪かった超低血圧の母さんに、包丁で殺されかけたからだ。それ以来、父さんは、朝、母さんに凶器を握らせないようしている。


父さん

「…母さん起きた?」


少年

「…起きたよ」


しばらくして、母さんがリビングにおりてきた。そのときには、テーブルにはトーストにエッグ、ソーセージ、サラダ。そしてコーヒー(僕は牛乳)の朝食セットができていた。


父さん

「…ゆっ、由美。‥‥‥おはよう」


母さん

「…あなたの声、頭に響くからやめて」


父さん

「…すまん」


父さんの精一杯の朝のあいさつを、母さんはひどい一言で返した。


少年

『…父さんは何で結婚したのかな?

母さんにたぶん間違いで何度も殺されかけているのに…。』


僕はいつもそう思っていた。

朝食を食べおわり、歯を磨いて、髪をとかし、八時。ちょうどいい時間だ。この頃になると、母さんの機嫌も少しよくなる。


父さん

「行ってくるよ」


父さんが玄関で靴を履きながら、母さんに言った。


少年

「待って、僕も行くよ」


僕は父さんのあとを追うように靴を履いた。


母さん

「あなた待って」


父さん

「…なっ、…なんだい?」


父さんは少し戸惑っている。僕もドキッとした。


母さん

「今日は給料日でしょ。ちゃんと、見せてくださいね」


さすが、母さんだ。父さんをしっかり管理している。父さんは戸惑いはなくなったみたいだが、まとうオーラが気のせいか、少し重くなった気がする。


父さん

「‥‥‥わかった」


少年

『…父さん…』


母さん

「いってらっしゃい♪」


僕と少しテンションが低い父さんは家を出た。


少年

「…ばれたと思ったよ」


父さん

「…あぁ…」


父さんの声は小さい。


少年

「父さん、ちゃんとケーキ買ってきてね」


父さん

「…わかってるよ」


そういうと父さんはニコリと笑った。






…それはいつもの朝だった



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