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第17話 言えない
「アンナ、帰ってきたの?」
お城へ戻ると、明るいリリア様の声が響いた。
「ちょうど今から、アルベール様のお見舞いに行こうと思っていたところなの。」
リリア様は、嬉しそうに小さな籠を見せる。
「マドレーヌを焼いたのよ。」
「あと、百合の育て方も詳しく教えていただきたくて……。」
そこまで言って、リリア様は不思議そうに首を傾げた。
「アンナ……どうしたの?」
私は、すぐに言葉を返すことができなかった。
「……アルベール様、まだお加減が良くないのね。」
「今日はやめて、また日を改めて伺いましょう。」
その優しい言葉が、余計に胸へ刺さる。
ーー違うのです、リリア様。
「アンナも疲れたでしょう?」
リリア様は、そっと私の顔を覗き込む。
「顔色があまり良くないわ。少し休んだ方がーー」
「違うのです。」
気づけば、私は言葉を遮っていた。
「え……?」
リリア様が目を丸くする。
私は、震える声で続けた。
「違うのです、リリア様。」
「……アルベール様には……もう、お会いできないかもしれません。」
「……そんな」
リリア様の表情が、少しずつ曇っていく。
「どうして?」
「理由を知りたいわ、アンナ。」
王妃様との約束が、頭をよぎった。
言えない。
けれど、黙っていることも苦しかった。
私はただ、何も答えられずに俯くことしかできなかった。




